「失敗、失敗…発音の違いにご用心」(Part 1 of 2)![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_6.gif)
僕がオハイオ大学(Athens, Ohio)にいた頃のお話。アメリカの大学で勉強するのは今回が始めてだったので、最初の頃は、そりゃあ気を遣いました。果たしてアメリカの大学で教授が言う言葉を理解できるのか、果たしてノートをちゃんと取ることが出来て、レポート(term paper)が書けて、リサーチが出来るのか?そんな不安を抱えながらのアメリカ留学がスタートして数ヶ月。なんとか1学期目が終わり、それなりの成績を残すことが出来てほっとしていた2学期目。僕は音韻論(Phonology)のクラスを取る事になりました。その授業では、理論の勉強ばかりでなく、実際にアメリカに来て英語を勉強している生徒(international student)を対象に、長期にわたる研究(longitudinal study)が課されました。さてさて、一体誰を被験者とするか?
僕が研究対象としたのは、アフリカのナイジェリアから来たばかりの小学校3年生の女の子。僕はその当時、オハイオ大学言語学部と提携関係にある小学校(East Elementary School)のリーディングラボ(Reading Lab/外国から来たばかりで英語の読み(理解)が出来ない、あるいは、まだ弱い生徒に英語の読解力をつけさせるための教室)で、ティーチング•アシスタント(TA/教授助手)としてその子供達にリーディングを教えていました。そこに来たのがRam(仮名)でした。お父さんがオハイオ大学の大学院に行くことになり、一緒に来たのです。母国語はYoruba(ヨルバ/西アフリカの言語)。もちろん、僕はその言葉は全く知りませんでした。
Ramと始めて会った時、彼女は名前以外はほとんど英語で言えませんでした。でも、それからほぼ毎日リーディングラボに来て、50分の英語の勉強。その内の20分を僕と一緒に本を読むなか、彼女の英語力は、日々驚くべきスピードで伸びていきました。僕の言うことも、質問もよくわかるようになりましたし、なによりも、自分からよく話すようになりました。ということは、僕の仕事は大変うまくいったということで喜ばしいわけですが、実はここで問題発生。それは、僕が彼女の英語を理解できなくなってきたことです(え、何で?)。
最初のうちは単語レベルで、しかもその単語は本の中にあったので問題なかったのですが、そのうち、自分からいろいろ話すようになると、一体何の話なのかは彼女の言うことをよく聞かないとわからない。ですよね、当然。ところが、彼女の英語は母国語のYorubaの影響を強く受けているため、発音が僕にはきわめてわかりにくい。もちろん、その英語がどうネィティブの英語と違うのか、彼女の英語の音の特徴は何なのかを調べるのが僕の研究テーマですから、それはそれでいいんですけどね、論文書けるし。あ、ちなみに、僕たち二人の会話はテープレコーダーに録音し、後で文字におこし、音を分析•研究しました。
しかし、研究は後でのこと。まずは彼女とのコミュニケーションをとらないと授業にならない。僕は日々集中して彼女の言う事を理解しつつ、一緒に本を読んでいました。彼女と会って早一ヶ月が経とうとしていたある日のこと。いつも通り本を一緒に読み、その章の質問部分にきた時の話です。僕はいつものようにその質問に答えてもらおうと、彼女に話かけました。
Nao: Okay, Ram. Take a look at the problems there. All right? Number 1. Do you understand the question?
Ram: Yah.
Nao: Okay. Then, give me the answer, please.
Ram: I don na f ta do da.
Nao: What did you say?
Ram: I don na f ta do da.
Nao: Ahh, (ん、何と言ってるんだ。I はいいよな。don はdon't とね。で、do daはdo thatで間違いない。という事は、do daの前にあるta はto。ここまではいいよな。でも、na f は何?)
ここで、僕は[na f ta] を何度か声を出さないように口の中で繰り返しながら、その分析をしました。don't の後には動詞が来る。そして~to do thatとなる。つまり、I don't ([na f] ) to do thatとなる。では、その動詞が入る部分の( )に何が入るのか?彼女が果たして何と言ったのか、音をヒントに皆さんも考えてみてください。そして、その時の僕の苦悩を体験してみてくださいね。少し長くなるので、今日はこれまで。Ram は、実際は何と言ったのか?明日までに皆さんなりの答えを考えておいてくださいね(^^)。では!
(End of Part 1 of the Story)
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僕がオハイオ大学(Athens, Ohio)にいた頃のお話。アメリカの大学で勉強するのは今回が始めてだったので、最初の頃は、そりゃあ気を遣いました。果たしてアメリカの大学で教授が言う言葉を理解できるのか、果たしてノートをちゃんと取ることが出来て、レポート(term paper)が書けて、リサーチが出来るのか?そんな不安を抱えながらのアメリカ留学がスタートして数ヶ月。なんとか1学期目が終わり、それなりの成績を残すことが出来てほっとしていた2学期目。僕は音韻論(Phonology)のクラスを取る事になりました。その授業では、理論の勉強ばかりでなく、実際にアメリカに来て英語を勉強している生徒(international student)を対象に、長期にわたる研究(longitudinal study)が課されました。さてさて、一体誰を被験者とするか?
僕が研究対象としたのは、アフリカのナイジェリアから来たばかりの小学校3年生の女の子。僕はその当時、オハイオ大学言語学部と提携関係にある小学校(East Elementary School)のリーディングラボ(Reading Lab/外国から来たばかりで英語の読み(理解)が出来ない、あるいは、まだ弱い生徒に英語の読解力をつけさせるための教室)で、ティーチング•アシスタント(TA/教授助手)としてその子供達にリーディングを教えていました。そこに来たのがRam(仮名)でした。お父さんがオハイオ大学の大学院に行くことになり、一緒に来たのです。母国語はYoruba(ヨルバ/西アフリカの言語)。もちろん、僕はその言葉は全く知りませんでした。
Ramと始めて会った時、彼女は名前以外はほとんど英語で言えませんでした。でも、それからほぼ毎日リーディングラボに来て、50分の英語の勉強。その内の20分を僕と一緒に本を読むなか、彼女の英語力は、日々驚くべきスピードで伸びていきました。僕の言うことも、質問もよくわかるようになりましたし、なによりも、自分からよく話すようになりました。ということは、僕の仕事は大変うまくいったということで喜ばしいわけですが、実はここで問題発生。それは、僕が彼女の英語を理解できなくなってきたことです(え、何で?)。
最初のうちは単語レベルで、しかもその単語は本の中にあったので問題なかったのですが、そのうち、自分からいろいろ話すようになると、一体何の話なのかは彼女の言うことをよく聞かないとわからない。ですよね、当然。ところが、彼女の英語は母国語のYorubaの影響を強く受けているため、発音が僕にはきわめてわかりにくい。もちろん、その英語がどうネィティブの英語と違うのか、彼女の英語の音の特徴は何なのかを調べるのが僕の研究テーマですから、それはそれでいいんですけどね、論文書けるし。あ、ちなみに、僕たち二人の会話はテープレコーダーに録音し、後で文字におこし、音を分析•研究しました。
しかし、研究は後でのこと。まずは彼女とのコミュニケーションをとらないと授業にならない。僕は日々集中して彼女の言う事を理解しつつ、一緒に本を読んでいました。彼女と会って早一ヶ月が経とうとしていたある日のこと。いつも通り本を一緒に読み、その章の質問部分にきた時の話です。僕はいつものようにその質問に答えてもらおうと、彼女に話かけました。
Nao: Okay, Ram. Take a look at the problems there. All right? Number 1. Do you understand the question?
Ram: Yah.
Nao: Okay. Then, give me the answer, please.
Ram: I don na f ta do da.
Nao: What did you say?
Ram: I don na f ta do da.
Nao: Ahh, (ん、何と言ってるんだ。I はいいよな。don はdon't とね。で、do daはdo thatで間違いない。という事は、do daの前にあるta はto。ここまではいいよな。でも、na f は何?)
ここで、僕は[na f ta] を何度か声を出さないように口の中で繰り返しながら、その分析をしました。don't の後には動詞が来る。そして~to do thatとなる。つまり、I don't ([na f] ) to do thatとなる。では、その動詞が入る部分の( )に何が入るのか?彼女が果たして何と言ったのか、音をヒントに皆さんも考えてみてください。そして、その時の僕の苦悩を体験してみてくださいね。少し長くなるので、今日はこれまで。Ram は、実際は何と言ったのか?明日までに皆さんなりの答えを考えておいてくださいね(^^)。では!
(End of Part 1 of the Story)
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