先日、12月間近な小春日和の午後、
一台の軽トラックが工房前に止まった。
釉薬掛けしながら、窓越しに目をやると、
随分と歳の行ったご老人2人が陽だまりに居た。
こんな、爺さん達が1番厄介な客だ。
長年やってるとわかる。
完全な冷やかし客、陶芸体験など100%しない。
きっと天気が良くても行く所もないんだろう。
すると2人は、陶芸体験道場を繁々と覗き込んでいたが、引き戸を開け始めたではないか!
「何だべっし〜?」
(訳 どうかしましたか?)
「天気良いもんだがら、もったいなぐってよー」
やっぱり。
聞くと、90歳を過ぎたマブダチのようで、うちの親父の事も知ってるようなので、あまり無碍には出来ない。
これは、登り窯でもご覧頂いて、次の見学地へと向かって頂こう。
登り窯への2段の階段をも、おぼつかない足取りの2人に、
登り窯の構造、使う薪など説明する。
自分達が若い頃、
切った木は冬にソリに載せて山から下ろしたものだ。
なんて話しに耳を傾けていると
気づいた。
2人は、
てんでバラバラに話をしていて、
人の話なんか聞いて無いにも関わらず、会話は成立するのだ。
同じ話を繰り返し、独り言。
とても不思議なマブダチ。
一通り、見終えて、
「仕事の邪魔して悪りがったなー」
「いえいえ」
と挨拶をして仕事に戻る。
しばらくして、
外に目をやると、まだ軽トラックがいる。
アレ?
外に出てみると、
1人は、軽トラックの運転席に
もう1人は、俺の愛車の助手席に座っている!
「それ、俺のクルマ〜」 汗。
♬こんな小春日和の穏やかな日は〜 貴方の優しさが滲みてくる〜♬
山口百恵 秋桜