先日、ホンダカーズ某店で新型ヴェゼルを試乗した。グレードはe:HEV Zだ。3つあるハイブリッドの真ん中。豪華すぎず、簡素過ぎないちょうどいい装備で、一番売れるグレードになると思われる。
まず、実物は写真より背が低くてコンパクトだった。最低地上高が上がってるのに全高がわずかに下がっている。ということは、車体が上下に薄いわけで、写真とかと違って実物を横から見ると、車体が幅広くて細長い印象を受ける。実際の車長、車幅は前モデルとほぼ同じなのだが。
発表当時、顔がマツダCX系、お尻がトヨタ・ハリアーと酷評されたが、実物を見ると、その評はちょっと違うように思う。細長くて薄いプロポーションは、他にない個性的なスタイリングかもしれない。いいスタイリングかどうかはまた別だが。
ルックスで気になるのはホイールハウスの隙間が大きいこと。Zは18インチのでかいホイールと扁平タイヤを履かせているせいで、隙間がちょっとみっともないくらい大きく見える。地上高を稼ぐために隙間を広げている=車軸を下げているのかも。
装着タイヤはミシュランのPRIMACY 4だった。
内装の高級感が増している。特にシートが分厚い。ダッシュボード周りの質感が高い。メーターの中が精緻に作られている。右のスピードメーターなんかは、文字盤がきっちりしすぎてて、最初はCGかと思った。各スイッチの操作感がしっとりしてて、特に左右端のエアコンのダイヤルが、まるでアナログシンセのツマミみたいな回し心地だった。あれを上にすると、吹き出し口外側の隙間から風が出てくるようになって、顔に直接当たらなくなるらしい。
メーターの真ん中が液晶で、速度がデジタル表示になるのだが、4代目フィットと同じ優しいフォントで視認性が今一つ。かつ、右のアナログ速度計と両方同時に目に入るので、情報過多というか、どっちを見ていいのかわからない。中央の表示は違うのに切り換えられそうだけど。
後席が広い。N系とか、すでに社長を座らせても大丈夫なくらい広いが、旧ヴェゼルはそんなに広くなかったので、旧と比べると広い。あと座り心地がいい。あんこが固めで分厚い。後席は完全フルフラットになって段差もないので、車中泊できそう。いや、できる。畳んだ状態で強く押してみて強度を確認した。
後席頭上の小さな丸ランプがおもしろい。スイッチ類がなく、ランプの表面が静電容量式のスイッチになってて、触ると点灯する。後席の人が好きな時に手元を照らせて、これは便利だと思った。
では発進。
2モーターのハイブリッドで、加速が滑らかといえば滑らか。電化した最初のアコードに試乗した時ほどの「魔法の絨毯」感はない。良くも悪くも普通というか、アクセル開度とリニアに加速することはなく、踏んでも反応は普通で、踏み込めば普通にエンジンがうなる。唸りが途中で消える(充電の必要がなくなる)のがハイブリッドなんだと思うけど、アクセル操作と音の違和感はあまりない。エンジン停止走行時に外部に流す人工音は、車内では聞こえない。
シフトレバー手前のスイッチで、エコ・ノーマル・スポーツのモードを選べる。視線を下げて見ないと操作できない。慣れればできるかもだが。エコは試さなかったが、スポーツは試した。ガツンと踏むと、それなりにビュンと加速する。でもエンジン音もうなるし、前述のとおり電気自動車特有のゲームみたいなデジタルな加速感ではない。
パドルシフトで、アクセルを離した時の減速度を4段階で調整できる。ガソリン車で言えば、エンジンブレーキをかけているときに、もっと減速したいからギアを下げる、という操作になる。だが、4にしてもガソリン車の2速相当のエンブレみたいにビビるほど効くわけではなく、まあ穏やかだった。エンジン車のエンブレと違って唸るわけでもないし。
僕が今まで乗り継いできたクルマ、4台のうち3台にパドルシフトが付いていた。ついてるのを選んで買ってきた。上り坂で加速したいときにシフトダウンすることもあったが、大半はブレーキを踏みたくない(ブレーキランプを点灯したくない)けど減速したいときに、シフトダウンしていた。そう考えると、この新型ヴェゼルのパドルシフトの役目も、本質を付いているというか、合理的というか、なるほどねとは思う。が、Mモードにしてセミオートマ風にして峠を下ったりできないのは、めったにやらないことだったけど寂しい。
減速時、特に停車直前に、メカが作動している音と振動がごくわずかにある。足裏にも感じる。ので、回生ブレーキで何かやってると思う。その辺の制御もパドルシフトでコントロールできるのなら(回生充電量をどうこうするとか)、今までにない運転の楽しみ方があるのかもしれん。
ハンドリングは、旧ヴェゼルと似たような感触かな。やや車体の重さを感じる。アンダーステア気味で、クイック感とかシャープさはない。よく言えば穏やかな操縦感。扁平タイヤの割には乗り心地もよくて、路面の凹凸はあまり伝えてこない。まあSUVだし。あと視点がちょっと旧型より高い。2センチくらい。
まとめ。高級車になった。フィットの兄弟とは思えない。値段も高級で、旧型より0.5ランク車格が上がっている印象。いわれてるほど他の同クラスSUVに似てるということはなく、威圧感まではないけど高級感は外見からも感じられるので、欲しい人は買っていいと思う。でも僕は「これじゃないとだめだ」という点を見つけられなかった。
2月18日、ホンダの2代目ヴェゼルが発表された。
具体的なサイズや価格などがまだ出てないので、ちゃんとした感想にはならないと思うのだが、とりあえ初代オーナーとして現時点の印象みたいなものを書く。
まずデザイン。4代目フィットがクリーンで線の少ないデザインになったので、ヴェゼルもそうなると思っていたら、やっぱりそうなった。だが、ここまで個性がないとは思わなかった。巷で叩かれているように、顔はマツダCX-5で、お尻がハリアー。ボディからつながってるような枠なしのグリルがオリジナルといいたいのかもしれないが、まあ苦しいですな。
こういう言い方をすると語弊があるが、僕は今乗っているヴェゼルを好きで買ったわけではない。フィット3 RSを乗り続けるつもりでいたのに奥さんがぶつけて、修理代とか保険をいろいろ考えて乗り換えたほうが経済的にいいということになって、急遽買った感じだった。なのに、僕は結構自分のヴェゼルが気に入っている。理由はデザイン。前も後ろも緩やかなカーブで構成されていて、ちょっと古風なスポーツクーペみたいな雰囲気がいいよなあと思っている。世間もそこが良くて大ヒットしたんだと思う。打倒ヴェゼルで出てきたのに、モデル末期のヴェゼルを倒せなかったトヨタCH-Rとは、デザインの普遍性に明らかな差があった。
その飽きの来ないデザインを捨てた2代目ヴェゼルは、初代ほどヒットしないと思う。
次サイズ。具体的な数値はまだだが、現行オーナーの目で見てリアのドアが長くなってるので、全長が伸びてる可能性が高い。下手すると4400mm超えて4500mm近いと思う。全幅は1800mm前後だろうから、もうコンパクトSUVとは言えない。
初代ヴェゼルの最大の欠点は、左サイドミラーの下部が左前方を見るためのプリズムアンダーミラーになっていることだ。走行中に左のタイヤが今どこを踏んでいるかを確認したいのに下部の視界が欠けている。かといって、プリズムアンダーミラー部分も超絶見にくい。2代目は左サイドミラーの下に出っ張りがついてる。電子的なモニターなのか、小型化したプリズムミラーなのかはわからないが、そもそもサイドミラーの縦が短くなってるので、やっぱり左タイヤの位置はわかりにくいんじゃないかと予想する。
もう一つのヴェゼルの欠点は、フィット3から流用されているエアコンのタッチパネルだ。2代目ヴェゼルでは、これはなくなった。アウディみたいな物理ダイヤルとデジタル表示のハイブリッドみたいなのになった。これはいいと思うけど、当たり前の変更だとも思う。明らかに前のは使いにくかったから。前方を見ながら手探りで操作できないし、タッチ自体にコツが必要だった。
2モーターの新しいパワートレインはいいと思う。初代ヴェゼルはトヨタの特許に触らないように開発した結果、なんちゃってDCT&無駄に複雑なハイブリッドになってたので、まったく食指が動かなかったが(僕のヴェゼルはガソリンのX)、新しいのならいい。
だが、前述したように、僕はそもそもヴェゼルを買う気はなかったので、次もヴェゼルとはならないだろう。ディーラーは薦めてくるはずなので、そこに乗っかって試乗はすると思うけど。