
予告通り、アニメ「覆面系ノイズ」に登場するバンド「in NO hurry to shout;(イノハリ)」と、ライバルの「SILENT BLACK KITTY(黒猫)」の曲集をご紹介。最初はこれのレビューだけ書くつもりだったんだけど、本編も紹介しないと分かりにくいかなと思って、先日アップした。
本作は「覆面系ノイズ」の劇中歌集としては唯一のものだが、先行シングルや原作コミックの付録CDの曲で、これに入ってないのもいくつかある。
ほとんどCDを買わなくなった僕がこのCDを買ったのは、初回限定版に付くライブCDが欲しかったからだ。シングルはツタヤで借りたのだが、これの初回限定版はレンタルに並ばないんじゃないかと。
曲名がカタカナのはユズが作ったイノハリの曲(つまりNARASAKI作曲)で、英語のはモモが作った黒猫の曲(作曲はBilly)、という設定。
が、ストーリーの関係で、イノハリの曲には初代ボーカル深桜(cv.高垣彩陽)が歌っているのもあって複雑(という設定)。
1.ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg-
OP曲にしてイノハリの代表曲。だからか、原作者が自ら作詞している。まだニノ加入前の曲なので、これは深桜がボーカルのバージョン。刻むギターがなんとなくブリティッシュ。1番のAメロはクールなのに、2番のAメロは楽しげ。という不思議な構成。2番はテレビで流れないのに。見えないところも手を抜いてない。
2.カナリヤ [ANIME SIDE]
ニノ(cv.早見沙織)加入後最初のシングル。作中で流れる回数が多分一番多い。放送では暴走してるver.、おとなしいver.など、それぞれ録り直してるらしい。実写版のカナリヤと比較して、やや飽きやすい曲調かも。聴かされる回数が多いし、詞の内容も辛い。
3.パラレルライン
本CDのみの曲。ニノの態度にイラついてるユズが疾走している様をニノが歌う構図か。「なんてね!」が特に印象的。この曲の声は、ニノよりも早見沙織本人の成分が多め。
4.FALLING SILENT
作中で流れる唯一の黒猫の曲。深桜のボーカルに一部演出的にエフェクトがかかっている。覆面系ノイズには、ニノと深桜のボーカル対決の側面もあるので、あんまりエフェクトかかってないのだが。早見沙織がラジオでこの曲をカッコイイと言って興奮していた。イントロの後のドラム連打は確かにかっこいい。
5.LAST NIGHT PRISONER
黒猫もオルタナということになっているが、僕はスタイリッシュな都会的ロックという気がする。この曲も大人っぽいというか、艶っぽい。小悪魔的な高垣彩陽の声質とマッチしている。
6.スパイラル
第一話で早見沙織を知る視聴者全員の度肝を抜いた激しいシャウト。僕も「天から授かったエンジェルボイスを潰す気か!?」と心配になった。吼えるだけでなく唸ってもいて、「螺旋」の「ん」に濁点が付いてる。ほんとに喉を壊しそうなので聴いてて辛いのだが、その後のラジオなどを聴く限り平気そう。
7.ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative-
ニノバージョン。ニノのイノハリ加入後からこれがOP曲になった。この曲のレコーディングが一番最初で、原作者と相談しながらニノの歌声を作ったらしい。オケは基本的に深桜バージョンと同じだが、Aメロに打ち込みのパーカッションが追加されている(シャカシャカ言ってるやつ)。2番の最後「波に飲まれる音と僕と」が「波に飲まれる男の人」に聞こえて、由比ヶ浜で溺れるユズの姿が脳裏に浮かんでしまう(そんなシーンはない)。
8.ウェンズデイビューティー -Bootleg-
イノハリの古い曲という設定で、深桜が歌っている。深桜の黒猫加入・進化の前なので、大人っぽくない歌い方になってる。エフェクトも最少限。シングルのほうにはニノバージョンもある。
9.ユースフルデイズ
このCDのみの曲。ニノというよりジュディマリのYUKIに似てるような気がする。無数のキャラソンをキャラの声で歌ってきた早見沙織は、色んな歌い方ができるのだ。朝、会社に向かって歩いてるときによく聴く。嗚呼、平凡だけど輝かしい日々。
10.アレグロ
ED曲。第1話でこの曲を聴いて僕はこのアニメにハマることを決めた。早見沙織曰く「これ泣くやつ!」 Aメロのギターがレゲエ風で、ライドとリムショット連打のポリス風。サビの最初で音程を上げないのが上手い。二度め三度めで上げて切なさMAX。最後はサビではなくイントロのギターの旋律を歌でなぞるという凝った展開。本作中イチオシの名曲。
11.ノイズ
イノハリは、ユズがニノを思って作詞作曲した曲を演奏するバンドだが、この曲はニノがユズを思って作詞している。実際に作詞したのは原作者だが。タイトルとシンクロしているし、ストーリー的にも作品を総括した曲。ワンコードで颯爽と突っ走るAパートから「くるくる踊る」Bパート、こともあろうに早見沙織の声をビット落としエフェクトで汚すアグレッシブなCパート、「ずっと君に会いたかった/会えてよかった君に」の優しさに泣けるDパートと、次々に違うパートを展開。そういうのをやるとコード進行の繋ぎがどうしても強引になってしまうのだが(少なくとも僕は)流石だ。
12.ドリーマー
本CDのみ曲。全力疾走の「ノイズ」から、いい感じに減速するゆったりしたリズム。これもジュディマリ風の歌い方だが、「いいよ/いいよ/許してあげる」で全てを許された気になれる。仕事がうまく行かなかった日とかによく聴く。
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次に、渋谷WWWXで行なわれた一夜限りのスペシャルライブのCDの感想。
1.ハイスクール [ANIME SIDE] -Bootleg-
深桜バージョンからスタート。高垣彩陽の歌は、舌足らずに聴こえるのが魅力なんだとこの曲で気付いた。
2.スパイラル
CDやアニメでは、吼えて唸っていた早見沙織だが、ライブでは悲鳴っぽい。余裕がない感じ。粗めのオーバードライブがかかったギターの金属的な響きがいい。
3.カナリヤ [ANIME SIDE]
出だしのギターが「スパイラル」に似てて混同する。劇中の台詞「飛ばすわよ」からの長い「羽ばたけえええーーーッ!」 早見沙織の暴走。悪く言えばヒステリック。よく言えば鬼気迫る。どんなステージだったのか見てみたい。このライブ、ビジュアル的な情報が一切ないんだよね。ネットに。
4.FALLING SILENT
モモのつもりなのかベースの音が太くてゴリゴリ来る。オリジナルもそうだが、ギター二人いるよね。高垣彩陽のほうがこういう激しい曲をライブで歌い慣れている感じ。
5.ボーダーライン
シングルのカップリング曲。ツインドラムかと思わせるほどバスドラが厚い。CDでは、裏声で高音に飛ぶところが耳に心地よいのだが、力一杯声を張りながらそこだけ裏返すのは、ライブでは難しかったのかも。サビの後半は電池切れて声が弱っている。
6.ウェンズデイビューティー
ニノ版。息が続かなさそうな速い曲だが、比較的声が伸びてる。元々深桜が歌っていた曲だからか、高垣彩陽の歌いかたを真似てるような気がする。ややぶりっ子(死語)気味っていうか。
7.ノイズ
本編最後の曲だったらしい。バンドが張り切っていて、特にベースの音がでかい。ギターもまさに濁流のようで、音が飽和してる。出だしの「僕たちは」がいきなり上ずってしまうが、勢いで乗り切る。とにかくこの曲は勢いがすごくて、わっしょいわっしょい突っ走る。終わった後に客から「アリスー」の声が飛ぶ。
8.ハイスクール [ANIME SIDE] -Alternative-
一応ニノ版。アンコールのラストだと思われる。見せつけるようなギターのソロから始まり、早見沙織が息を切らしながら「今日は本当にありがとう!次は最後の曲!ハイスクール!」と叫ぶ。歓声に煽られつつ、サビでは高垣彩陽も参加。最後は二人仲良くコーラスしながら大団円。
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スピーカーだとそうでもないのだが、ヘッドフォンだと音の分離が良くなくて、早見沙織のボーカルがきちんと聞き取れない。良くも悪くもオルタナティブでシューゲイザーな音作りだと感じる。バンドのサウンドに早見沙織の声が埋もれかけている。声もバンドのパーツの一つに過ぎないっていうか。
そんな中でも、彼女特有の微かにビブラートがかかった部分に萌えることはできる。「アレグロ」最後の「てーをー」とか。そういう箇所に萌えつつ、キレのいい演奏を楽しむ。というのが、本作の鑑賞スタイルだろう。
早見沙織のソロアーチスト名義のアルバムを聴くと、ボーカル最優先、彼女の声に最適化されてるんだなあと思う。すげー聴きやすい。
まあ、早見沙織がハードなロックでシャウトするなんて、しかも後ろで弾いてるのがNARASAKIだなんて、贅沢でレアな話なんで、買って正解だとは思っている。
ライブの方はちょっとだけもの足りないかな。なんと言っても「アレグロ」が入っていない。何かミスでもあったのだろうか。僕は以前、平沢某のライブビデオになると予告されているライブに行き、代表曲なのに歌詞が飛んでビデオに入らなかったというのを経験している。
音の分離が本編CD以上に悪い。特に左右の定位がはっきりしない。もしかして生録音ではないかと疑っている。各楽器、マイクをラインで録音したものも混ぜてうまく調整する、というのをしてないのではないか。それはそれで臨場感があって良いのだが、もう少し解像感が欲しかった。
とはいえ、本編CDと同じ結論になるが、こんなに激しい楽曲を歌うライブ盤なんて、今後まず出なさそうなので、全く後悔はない。
一夜限りとは言わず、またこのバンドでライブをやってほしい。普通のチケット販売で。ライブというもの全般に興味津々な長女を連れて行くんで。