前回の記事「ヴァイオレットの最初の手紙の最後の一行」には、間違いや考察の浅さがあったので、自己フォローも兼ねて、新たに考察記事を書こうと思う。
まずあの一行のテルシス文字(テルシス大陸全土で使用されてる気がするので、こう呼称する)の置き換えが間違っていた。rをpにしてしまっていた。大変失礼しました。
で、改めてあの一文を考察してみる。
億劫だと思っていたのに、考察する気になったのは、7月4日に発売されるブルーレイ第4巻に収録されるエクストラエピソードの予告に、これを発見したからだ。ちょっと暗いが「Nun annui」が大きく映っている。
エキストラエピソードは、舞台女優が戦争で未帰還になっている恋人に手紙を書く話だと思われる。この絵の瞬間、ヴァイオレットが「愛してる…」と呟くことから考えても、Nunは英語の「I」に相当する代名詞であり、annuiはloveにあたる動詞の可能性が高い。
なんか面白くなってきたぞ。この調子で調べていけば、後半の単語の意味も特定できるかもしれない。
だがその前に、念のため、既に解読した人がいるかもしれないのでググって見ると、
こんなのがあった。
ローマ字に直すと、Nun annui ruhuqirrikon。
これを意味の分かる単語になるように、文字配列を元に戻すと、Nan Unnai Katalikkiren となります。
これはタミル語のローマ字表記と重なり、日本語での意味は「私はあなたを愛している」です。
話の内容からも納得できます。
NunをNanに、annuiをunnaiにするのはいいとしても、後半のruhuqi rrik onは都合よく弄りすぎだし、「あなた」にしては長くて綴りも複雑だと思う。どれかはYou的な代名詞だとしても、annuiを修飾する副詞とか、Youを修飾する形容詞も含まれているのではないかと。
というわけで、さらなるヒントを求めて、ruhuqi rrik onが他の手紙などに出て来ないか調べた。
これは第9話でエリカとアイリスが連名でヴァイオレットに送った手紙のエリカ部分。「rrik on」が出てくる。手紙の内容に、最後の一文にはまりそうな要素がないだろうか?
このカットで読んでいる文でそれっぽいのは「伝えたかったの」「心配してるって」である。それプラス、内包されているwant的なニュアンスとcare的なニュアンスか。
しかし、次に挙げる手紙で困ってしまった。第3話でヴァイオレットが超訳したルクリアから兄宛の手紙だ。
この手紙の文面は簡潔だ。「生きていてくれて嬉しいの。ありがとう」
うーむ。wantでもcareでもないように思える。rrikの後がonではなくucなので意味が変わるとか?
これは文意がはっきり分かっているので、色々判明しそうなもんだが、まずNunで始まってなくて困る。英語的文法でいくなら、「私は・嬉しい・(関係代名詞など)・あなたが・生きていて」だと思うのだか。
ただ、文末のonはyouかも、と思った。文末のonは他の手紙でも頻繁に出て来るのだ。相手を意味する代名詞が文末って変だけど。
OPの映像の手紙にはrrik onとrrik ucが同時に出てくるのだが、そちらは文意が不明なので、特定には至らず。
「rrik on」についてはこれ以上の手がかりはなかった。しかし、「ruhuqi」はもっとなかった。僕がチェックした手紙や文章のどれにも登場しない。
そこで、今度は違う方向から推理することにした。
この一文には文末にピリオドがない。さらに、ページに一行しかない。便箋の最後の一枚に一行っておかしくないか? これは手紙ではないのでは?
ヴァイオレットは、航空祭で出す少佐宛の手紙を書けずにいた。社長に「締め切りは夕方だけど、明日の朝までに書けば俺が事務局に持っていってあげる。一行でもいいから書くんだ」と言われる。ラストの時空を超えた抽象的な表現などのせいで、僕はその少佐宛の手紙の最後の一行がこれなのだと思い込んでいた。
しかし、冷静に見返すと、航空祭のは雪の夜に書き上げて封筒に入れて封蝋をしている。文面はヴァイオレットのモノローグの通りで、最後は「少しは分かるのです」だろう。
では、この一文はなんだ?
想像するしかないが、愛するということを少しは分かったヴァイオレットが、自分の気持ちをタイプライターで「アイ・ラブ・ほにゃらら」と打ってみた、ってところではないだろうか。乙女ちっくな行為で、そういうのあるじゃないですか。「●●●くん、大好き(はあと)」とか紙に書いて、慌てて消す、みたいな。それなら一行しかないことも、ピリオドがないことも説明がつく。書いた文にそっと指を触れることから考えても、これは自分の気持ちを確認するために書いてみた的なやつだろう。
で、改めてこの一文の意味だが。
女子が自分の気持ちをこっそり書いてみるとき、アイラブユーはないのではないか。具体的に「●●●くん」を入れるのではないか?
つまり、全く手がかりがない「ruhuqi」は「少佐」では? ギルベルトだとテルシス語でもGilbertという綴りになるわけで、それ以外で彼を表す言葉としては少佐しかない。スクショ撮ってチェックした手紙には出てこなかったが、ヴァイオレットがその一文の中に入れそうな言葉、という観点から考えても「少佐」がしっくりくるのだ。
長々ととりとめなく推理してきたが、これと断定できる解釈はない。僕の曖昧な推理から、各自で「まあこんな感じだろ」という解釈をしてもらいたい。僕個人としては
私は少佐に「愛しています」と伝えたい
あたりかな、と思っている。
・・・・・
手紙の文字をチェックする際、スクショでチェックする前に、普通に何度も再生して前後の状況を確認したのだが、その度に鼻の奥がツンとして、作業は遅々として進まなかった。
前回の記事ではホームズの「踊る人形」メソッドで、などと書いたが、やってみたら「9マイルは遠すぎる」のような思考実験だった。京アニが手紙の内容すべてをきちんと文字にしているかどうか確証がない中、きちんとしている前提で推論を導くのは、まさに9マイルだった。