曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の感想(ネタバレありver.)

2020-10-01 17:01:46 | テレビ・映画

京都アニメーション自身がYouTubeでネタバレありの大ヒット御礼動画を公開したりして、そろそろ全部書いてもいい感じになってきた。そもそも劇場版のポスターに少佐出てるし。

そうです。ギルベルト少佐は生存していて、ヴァイオレットと再会します。




泣いたという評も多い今作だが、僕は泣かなかった。泣きそうにはなったが、なんとか耐えた。その泣きそうになったのは、皆が泣いたであろう少佐との再会シーンではない。

僕はテレビシリーズの第10話でまず泣いた。最初はだいたい皆あれで泣く。視聴が2周め、3周めの上級者になると、第9話で泣く。自分が大量殺人者だったことに気づいたヴァイオレットは自死まで考えるが、仲間の励ましもあって苦悩を乗り越え、再生の一歩を踏み出す話だ。

あの第9話で成長物語としては区切りがついている。素晴らしい結末がついている。僕は何度見てもあの第9話で涙を流せる。

で、その後に残された物語のテーマはというと、ヴァイオレットにも少しはわかってきた「愛してる」の行方だろう。テレビアニメでは、ヴァイオレットの愛は行き場のないまま、とりあえず生きる目標みたいなものに昇華して終わる。

しかし、原作では少佐は生きており、下巻の最後、大陸横断鉄道の事件で再会する。その後は互いに忙しくて二人で登場する回は意外に少ないのだが、二人揃えば控えめにいちゃついている。

というような状況だったので、劇場版は、ヴァイオレットと少佐がどうやってくっつくのか、という視点で見ることになった。くっつくことはわかっているが、少佐がどんな風に生存しているのかについて、アニメは原作のとおりではなさそう(原作の少佐はこっそり陸軍にいる)ので、どんな立場でどんな風に会うのかなと。

劇場版の少佐はブドウ栽培が盛んな孤島で、学校の先生?やブドウ栽培の手伝いをして暮らしていた。社長とヴァイオレットが会いに行くと、ヴァイオレットの人生をめちゃくちゃにしたのは自分なので、今更会えないという。面倒くさい男である。

おじさんとしては、メロドラマ展開とか愛の行方についてはそんなに共感できない。だが、ヴァイオレットが幸せになるところは見たいと思う。ホッジンズ社長の目線である。なので、面倒くさいことを言って出てこないギルベルトに放った社長渾身の「大馬鹿野郎!!」には大いに共感できた。

社長目線なので、ギルベルトとくっついたラストシーンは、よかったね、とは思うが涙はそれほど出ない。ついにすべてが解決した、完了したという安堵感である。

でもヴァイオレットはドールをやめたらしい(劇中ではっきり描写されない)。そしてギルベルトが潜んでいた島の灯台の簡易郵便局?を守る仕事に就いて一生を終えたらしい。その辺は、もうちょっと平凡に、かつ原作準拠で、CH郵便社のエースとして活躍しつつ少佐と仲良く暮らしました、で良かった気がする。せっかく好きな男のところに嫁に出したのに、なんでそんな僻地に、と社長も思ったことだろう。

僕が今作で一番泣きそうになったのは、物語の横軸にあたる代筆仕事のほうだ。ヴァイオレットは、余命半年くらい?のユリス少年から、死後家族に渡してほしい手紙の代筆を頼まれる。このシリーズは容赦も遠慮もしないので、ユリス少年が死ぬまで克明に描写し続ける。息を引き取る間際に、連絡が取れなかった親友と電話がつながり、ご臨終後に約束通り家族へ感謝の手紙が渡される。まあ、第10話に似た話ではあるのだが、ユリス少年が生前家族に対しては苛立った態度ばかり見せていたので、手紙の内容とのコントラストで泣けた。

そのユリス少年の最期の瞬間、ヴァイオレットは例の灯台にいて、リモートでアイリスらに指示を飛ばして任務を完遂する。

この劇場版、実は全編がある人物の回想という体になっている。その人物は、第10話で母親と死に別れたアンの孫娘、デイジーである。またずいぶん時間がたってからの回想だと思う。アンの娘くらいにしておいてもいいのに。

話の構成上の現代、デイジーの時代には電話が通信手段として普及していて、自動手記人形は遥か昔に廃れているらしい。ヴァイオレットがアイリスに指示を送ったのは、登場間もなかったらしい電話(と無線)でである。最後の仕事?が電話で成功し、電話で自分たちの仕事がなくなるという皮肉。テクノロジーの変遷をきちんと描いているとも評されているが、そこまでこの映画に盛り込まなくてもよかった気もする。ヴァイオレットがドールをやめるらしいという雰囲気と相まって、せっかくの大団円なのに、若干寂しい気分になった。

というわけでこの劇場版、100点満点の完成度ではないが、ヴァイオレット自身は幸福な結末を迎えることができたようなので僕は満足である。ホッジンズ社長の目線としては、そうまとめるしかない。






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする