番組からのお知らせ。
再来週、12月19日からの1週間の Cozyは特別企画
「ニュースの侍 いざ有楽町!
Cozyダブルコメンテーターウイーク“Cozy殿の13人”」
ご好評にお答えして、今回も毎日コメンテーターがお二人=ダブルで
いざ!有楽町へ生登場。2022年のニュースをこの1週間で全て語りつくします!
19日月曜日:ジャーナリスト 須田慎一郎
評論家 宮崎哲弥
20日火曜日:青山学院大学客員教授 ジャーナリスト 峯村健司
元環境大臣 衆議院議員 小泉進次郎
21日水曜日:ジャーナリスト 佐々木俊尚
筑波大学教授 東野篤子
22日木曜日:明治大学教授 経済学者 飯田泰之
東京大学先端科学技術研究センター専任講師 小泉悠
23日金曜日:作家 自由民主党参議院議員 青山繁晴
数量政策学者 高橋洋一
中国指導部が大幅交代へ ~習近平氏の側近起用の動き
中国共産党の習近平総書記(国家主席)が10月23日に発足させる次期最高指導部について、従来の想定よりも大幅にメンバーを入れ替える見通しであると、複数の消息筋が明らかにした。最高指導部のメンバー7人のうち、3~4人程度入れ替わり、続投が確実な習近平総書記の側近が多数起用される見通し。
飯田)ただ、具体的な名前はなかなか出てきません。
人事の焦点は李克強氏が政治局に留まるか、李強氏が常務委員に上がるか
青山)今回、人事の焦点は2つだけです。首相を務めてきた李克強さんが首相を辞めたあと、党の中枢、政治局に留まるのかどうかということ。もう1つは、上海でゼロコロナ政策のために大失敗した、上海トップであり習近平さんの側近中の側近の李強さんです。この人が政治局常務委員に上がってくるかどうかということです。この人が上がってきたら最悪ですよね。
飯田)大失敗したわけですよね。
青山)大失敗したのに、側近だから上げてしまうのです。中国共産党なりに、何とか自己改革をしたのが国家主席1期5年、2期10年までとした任期制でした。
飯田)これまでは。
青山)当時の胡錦濤国家主席と温家宝首相のコンビは、経済で成功して日本を抜きました。それでも、任期制があるから10年で2人ともお辞めになりました。温家宝首相は最後の演説で、前半はただの自慢でしたが、後半で「中国経済には未来がない」という趣旨のことを言ったのです。私は感心しました。
中国共産党の未来は暗い ~トカゲの尻尾切りすらしない習近平氏
青山)それをすべて、習近平さんが1人で覆しつつあります。その意味では、中国共産党、あるいは中華人民共和国の未来は暗い。既に大失敗ですよね。
飯田)既に大失敗。
青山)胡春華さんという、世襲ではないために距離がある、共産主義青年団出身の人を抜擢すればまだ少し格好はつきますが、焦点は李克強さんよりも李強さんで、この方を上げてしまったらおしまいです。
飯田)側近だということで。
青山)まだはっきりしていませんが、少なくとも上海の責任を取らせることはしない。トカゲの尻尾切りすらしない。自分が言ったことはすべて正しい。ゼロコロナも何もかも正しいのだと。「これをやったらおしまいだ」という共産党大会だと思います。
GDPの発表も延期した中国
飯田)いろいろ異例なことが起きていて、GDPの発表すら延期してしまいました。
高橋)もともと捏造された数字なのに、どうして延期するのかなと私は思っていました。大体、GDPの数字が2週間で出るわけがありません。前からインチキなのだけれど、「インチキな数字を後ろへずらすことにどんな意味があるのか」と、正直私はわからなくなってしまいました。
青山)前からそうですよね。
飯田)7月~9月の数字というと、まさに上海がロックダウンされていて、経済がガタガタのときです。李強さんを上げるというタイミングで、その数字を出さないということは、やはりまずい数字なのでしょうか?
高橋)しかし、もともとデタラメな数字ですから、なぜ変えないのでしょうか? 「忖度するなら変えて出せばいい」と私は思いました。
青山)中国がいい加減な数字を出しても、まるで本当のことのように西側メディアが報道する癖がついているので、「あまりバレバレすぎる嘘はつきたくない」というだけなのです。
高橋)そうなのだとは思いますが、GDP統計は過去統計なので、すべての基礎統計があって、そこから計算します。どうして早く出るのかがよくわかりません。いろいろなものが出たあとなので、最短でも1ヵ月~1ヵ月半ほど必要なのです。それがどうして2週間で出たのかわかりません。
飯田)そうは言っても誤魔化しが効かないのは、相手のある統計データですよね。
高橋)輸入統計は私もチェックしていますが、中国の輸入と輸出は、その他の国のものに足し算すると大体わかるのです。そこはあまり間違っていません。ただ、輸入統計が下がっているので、GDPはとても低くなっているはずです。
飯田)中国税関総署は、貿易統計の発表すら延期しましたね。
高橋)面白いですよね。
毛沢東氏の犯した罪に戻りつつある中国は世界の不安要素に
青山)中国の統計は当てにならないと、初めて言った人が李克強さんでした。
飯田)そうでしたね。首相就任の前からですか。
青山)前からですね。「自分は鉄道輸送量と電力消費量しか信用しない。中国の統計は当てにならない」と、西側の取材のときに思わず言ってしまった。
飯田)当時は「李克強指数」とも言われていました。
青山)その李克強さんを首相にしたということで、中国共産党は毛沢東時代の反省に立っていたのですが、李克強さんだけが任期を守って国家主席は守らないというのはメチャクチャですよね。
飯田)習近平氏は3期目に入る見通しです。
青山)モラル崩壊も甚だしいです。イギリスは世界とヨーロッパの大きな不安要因ですが、中国の逆コースというのも、毛沢東さんの犯した罪に戻りつつあるという状況は、大きな不安要因です。日本はしっかりしないといけません。
大統領選への意欲を初めて示したブリンケン国務長官の発言
飯田)ブリンケン国務長官が習近平氏の演説を受け、スタンフォード大学で講演したときに、「現状維持を破ったのではないか。そこをもう気にしなくなったのではないか」という指摘までしていました。アメリカ側の批判は強いのでしょうか?
青山)ブリンケンさんの発言は、私の勝手な推測ですが、大統領選への意欲を初めて示したのだと思います。そちらの意味もあるのではないかと思うのです。
飯田)そちらの方ですか。
青山)単なる国務長官としての発言を踏み越えていますよね。バイデンさん本人は出たいのだけれど、2期目に出られないことがはっきりしてきています。「副大統領もどうやらダメなので」ということもあるのではないでしょうか。
飯田)ハリスさんも。
青山)ホワイトハウスが新しいNSS(国家安全保障戦略)を発表したばかりですが、あの原文を見ても、中国とは相容れないということをはっきりさせています。中国10億人のなかで、まだものが欲しい人がいても、アメリカ車を買ってくれるとしても、ともに天を戴かずという方向性がはっきりしてきています。だからブリンケンさんも安心して発言したところもあると思います。
飯田)なるほど。
青山)そのようなアメリカに対して、どう向き合うのかということが、今回の中国共産党大会では全然、解がない。独裁を強めるばかりで、経済だけは資本主義でうまくいくようにという。鄧小平さんはいろいろな評価がありますが、「天安門広場の大弾圧があったから独裁を強化する」ということだけではありませんでした。
飯田)そのあと改革開放、南巡講話があった。
格差が広がるばかりで問題解決が何もなかった共産党大会
青山)しかも鄧小平主義とは言わずに、「鄧小平理論」と呼んだ。しかし、習近平さんは思想がないのに「習近平思想」と言っています。毛沢東さんは一応、「矛盾論」という哲学書まで書いていますが、習近平さんは何もありません。
飯田)習近平氏には。
青山)何もないところに習近平思想と言われても、格差が広がるばかりで、問題解決の糸口が何もなかった共産党大会です。5年に1回なので、5年間待った意味がないですよね。これは暗澹たることです。中国は決めてしまった以上は議論の場がないので、少なくとも次の党大会までこのままです。
飯田)また5年間も。
青山)重い5年間です。
飯田)その不安定さのまま、5年間。
青山)中小企業の社長さんの集まりで長年講演してきましたが、「中国には進出しないでください」と言い続けてきました。進出してしまったら、引き上げることもできない。「泥沼にハマってしまう」と言ってきましたが、それを実証する共産党大会になってしまいました。
トラス包囲網
経済失策をめぐり批判の集中砲火を浴びるイギリスのトラス首相は10月17日夜、政策上の「過ち」を認めて謝罪する一方、首相として引き続き職務を果たすと宣言した。市場の混乱を招いた政府の大型減税案は、首相が責任を取らせ更迭したクワーテング前財務大臣の後任であるハント財務大臣によって、ほぼすべて撤回された。
飯田)政権発足から約1ヵ月ですが、もう窮地に陥っているということでしょうか?
その裏で再登板を狙うジョンソン前首相が動いているか
青山)窮地に陥っていることは間違いありません。私は前首相が再登板を狙って動いていると理解しています。
飯田)ジョンソンさんがですか?
青山)ジョンソンさんご自身は、辞めるつもりはないのに辞めました。そのときから、次の首相が「仮の首相」になるように動いていた形跡もあります。それに嵌められて、急に富裕層優遇の税制をやったというような陰謀論までは言いませんが、「あり得るな」という感じはします。トラス首相は経済通というわけではないので。
飯田)なるほど。
青山)ジョンソン前首相は、少なくとも経済の話は嫌いではありません。人脈も非常に広いので、「こうしたらこのようなことになる」と読んでいた節もなくはない。保守党のなかでも首相擁護論はほとんど出ていません。
飯田)首相擁護論は。
青山)「トラスさんに人望がないからだ」と言われたら、その通りかも知れませんが、保守党内の底を流れるものとして、ジョンソン議論があるからです。その根回しは間違いなくやっています。
それがアングロサクソン流のやり方
飯田)トラスさんは、もともとジョンソン政権を最後まで支えた人という、その忠臣ぶりがありました。
青山)そんなことは全然気にしていないと思います。
飯田)やはりそれがアングロサクソン流ですか。
青山)そのようなことを言っていたら、チャーチルのような人物は出てきません。あれだけ嫌われていて、危機になれば急に出てくるのですから。そして用済みになったら落選という。
飯田)戦争終結直前に、ですね。
青山)それが英国なのです。だから生き延びてきたのです。
飯田)浪花節の目線で見てはいけない世界なのですね。
イギリスの現状をみて「日本も減税などしたらインフレになってしまうのだ」という意見も出そうだが
飯田)トラスさんの政策の部分についてもそうですが、今回の事例を引きながら、「日本でも減税などしたらインフレになってしまうのだ」などと言う人はたくさんいますよね。
高橋)財務省は言いたいでしょうね。おそらく、財政制度等審議会でそのことについてやりますよ。イギリス経済で言うと、EUから離脱してしまったあとに、多少、供給力が不利になってしまったことも事実です。そこに今回のようなことがあったので、インフレになってしまったことは間違いありません。
飯田)EU離脱で供給力不足になって。
高橋)インフレになってしまったら、金利高、債券安、株安になるのは普通なのです。
飯田)インフレになったら。
高橋)「通貨安」という話もありますが、これはアメリカとの関係があります。アメリカが強烈に引き締めをしているので、通貨安にはなりがちです。そのときにいろいろ仕掛けられたという感じが私はしました。ポリティカルな要素が大きいのです。
イギリスの破綻確率は変わっていない ~政治的な要素が大きい
高橋)だからといって、イギリスの破綻確率がどうかというと、ほとんど変わっていません。そういう意味では、マーケットもこのような売り仕掛けが政治的であることはわかっているので、提灯がたくさんくっついて、そこでやられたのかなと思います。「財政懸念がどうの」というほど、実はデータ的にはそうなっていません。
飯田)破綻確率を示すクレジット・デフォルト・スワップはどうでしょうか?
高橋)少し高くなりましたが、あれぐらいだと、何か動きがあれば変化する程度です。20ベースぐらいが40ベースぐらいになったのは間違いないのですが、すぐ戻りました。破綻するという話がまことしやかに出ているわけではないのですが、マーケットの噂などでやられたのではないでしょうか。
青山)中長期的には、エリザベス女王2世という社会の重石を失って、かつてスキャンダルがあった国王になり、政治にも変な動きがありました。
飯田)イギリスでは。
青山)スコットランドはEUに戻りたいので、分離論がまた出てきます。もしイギリスが分裂したら、世界の破綻要因ですね。
「核論議のタブー」を乗り越えて議論するべき
飯田)中国がどれだけのもので日本を狙っているのか、ある意味での脅威認定をした上で、日本がどのように備えるのか。本当はその部分を議論するべきだと思うのですが、財源の話や個別に何を装備するのかという、細かな話にいきがちな報道が続いている気がします。中身の議論はどうなっているのでしょうか?
青山)本質論に踏み込めないことで言うならば、本当の原因は核論議にあります。中国は昔から核兵器で日本を脅しています。中距離核ミサイルで、30万人以上の人口がある日本の都市は、すべて射程範囲内にあります。「照準を合わせている」ということは大昔からあるのです。
飯田)日本の大都市すべてが射程範囲内にある。
青山)それに対抗する抑止力を持つためには、日本で核論議を進めなければなりません。それが完全にタブーになったままなので、「本質論に踏み込むと危ない」という意識が公明党はもちろん、自由民主党のなかにもあるのです。
飯田)核論議をすることがタブーになったままなので。
青山)私が議員になってから党内で言っているのは、内閣を持たせるとか、1つの内閣を続けることを目的にするのは本末転倒であり、短くても長くても関係なく、「本質的なことができるかどうか」が大事だということです。
飯田)本質的なことができるかどうか。
青山)なぜ中国と向かい合うのかという理由は、自国の利益だけではありません。アジア諸国のカンボジアやラオスなど、親中と呼ばれる国々でも、実際に行ってみると中国が好きな人はいません。メコン川に巨大なダムをつくられて川の流れが変わってしまい、利益がすべて中国側に行ってしまっているのです。最も苦しんでいるのはラオスやカンボジアの方々だということを、実際に歩いて感じています。
飯田)親中と言われるカンボジアやラオスで。
青山)日本の責任は、中国の独裁主義からアジア全体を守ることです。中東が発火点だったのは過去の話で、アメリカはシェールガスやシェールオイルを実用化し、日本でも細々ながら自前資源の話が始まっています。中東だけがエネルギーの宝庫ではないので、アジアの独裁主義であるロシアと中国と北朝鮮が、明らかに社会の悩みの原因なのです。それに対して、古代から民主主義国家の日本がどう対峙するかということなのです。
飯田)日本の責任は。
青山)核の問題も含めて、広島や長崎の方々ともよく話し合いながら、いままでのタブーを乗り越え、少なくとも議論はしなくてはなりません。私はいま77人の議員集団の代表でもありますが、そこで核論議や勉強会もこれからしようと思っています。
「核共有」だけでは解決しない ~核共有が抑止力になっていないヨーロッパの現状
飯田)安倍さんは、「核共有を議論しよう」という話をされていました。
高橋)あの議論が「自民党のなかでどうなってしまったのか」ということが心配です。とりあえず核共有の議論をしようという話がありましたが、引っ込んでしまいました。
青山)私が代表している議員集団「日本の尊厳と国益を護る会」は、77人が所属する大きな組織なので、そこで始めていきます。ただ、私は安倍さんの言っていた核共有だけで解決するとはとても思えません。ヨーロッパで実際に核共有の国々を回ってみると、抑止力にはあまりなっていないのです。
飯田)そうなのですか。
青山)そもそも核共有と言っても、核兵器を入れている兵器庫の鍵は、アメリカ軍が持っているのですから。
飯田)アメリカの許可なしには撃てない。
青山)そして、核兵器は実は劣化しやすいので、本当にいま使えるものなのかどうかも疑問です。安倍さんとしては、問題を初めて提起するという意味ではよくおっしゃったと思いますが、それがゴールだとは思っていません。
「核を持たない」という議論だけでは日本を守ることはできない ~一方では「核をなくす」ということも正しい
青山)岸田総理がおっしゃるような「核を減らしていくべきだ」という考え方も、もちろん正しいので、それと矛盾するということも考えなければなりません。ただし、「核をなくしましょう」と言うだけではテロリストやテロ国家が喜ぶだけです。
飯田)核の話と弾道ミサイルについての話で、ここを組み合わせて、どこがどのように持つのか。潜水艦から対応するのかなど、いろいろと選択肢は広がっていきます。
青山)潜水艦のことも大きいですよね。イギリスには地上発射核はなく、原子力潜水艦の海のなかの核だけで抑止力を持っています。
飯田)イギリスはそこで抑止力を持っている。
青山)そのようなことも日本は考えなければいけません。かつて日本は「むつ」という原子力船があっただけで大騒ぎになりましたが、もうそのような未成熟な世論ではなくなっています。激しい言い合いや議論は必ず必要です。高橋さんや私のように考え方が近い人と話すだけではなく、考え方がまったく異なる人とも議論しなければいけません。自公の協議にしても、「公明党のおっしゃることをお聞きしましょう」という雰囲気だけではなく、前よりは「まともに議論したい」という空気になっているのではないでしょうか。