しずくな日記

書きたいなあと思ったときにぽつぽつと、しずくのように書いてます。

灰色の地面に足をつけて

2013-05-11 00:46:16 | 日記
母に電話した。
日曜日は母の日。どんなプレゼントがいいかなあと思ったため。

今日、故郷は雨模様、寒かったらしい。
母も妹も風邪気味で体調がとても悪い様子だったので、
早々と電話を切った。


いつもの金曜日より気持ち早めに家に帰ることができたので、
またまた「相棒」(今日はseason7のを)を見ていたら、
母の方から電話がかかってきた。
調子悪いんじゃないのかな、どうしたんだろう?と思ったら、
「欲しいもの思いついたから。」とのこと。

聞いてみたら「旅行」だった。
母が、「北海道に会いに行きたい人がいる!」と言っていたので、
もともと北海道旅行に行くつもりだったのだけど、
「長崎!」と言ってきた。

要するに私が行きたいところに、母も一緒に行きたいそうだ。

というわけで、母の日のプレゼントは「長崎旅行」に決定した。
今すぐには無理だけど。


そんなこんなで母は体調が悪いにも関わらず、電話で長々と話す体勢に。


「もしあなたが学校の先生になっていなかったら、何になっていたと思いますか?」

母は今、この質問の答えにとても困っているという。
母が非常勤講師をやっている学校の学校通信に載せる記事でのことらしい。

聞けば、母は小学生の頃から「中学校の先生になりたい。」と一心に思って来たとのこと。
知らなかった。
他の職業なんて、一度も考えたことなかったから、そんな質問されても困る、らしい。
なら、本当のところを書けばいいんじゃないの、先生以外は考えたことなかったって、
それもカッコいいと思うけど、と私なりの意見を言っておいた。
何で母が、そんなに小さな頃から学校の先生になりたいと思ってたかと聞けば、
中学の先生にとても大好きな国語の先生がいて、
結構厳しい先生だったらしいのだけど、母のことをとても褒めてくれたから、だという。
なんだか理由になってないような気も私はしたけど、
母は何の迷いもなく中学の国語の教師になったのだった。


母の迷いのない人生が羨ましい、というか、母らしい。
まっすぐな人だから、まっすぐに歩んで来たのだ。
けれどもそういう人生ってとても希有なのではないか。



ちょうど観てた「相棒」のseason7の第一話と第二話、
「還流」(第一話は「密室の昏迷」、第二話は「悪意の不在」という副題)は、
弱い者を佑け、命を大切にする姿勢でまっすぐに人生を歩んで来たつもりが、
計らずも罪を犯すことになってしまったという悲劇の物語だった。

「相棒」の中でも、私がとても心打たれた回だ。
津川雅彦が演じる元法務大臣で政治家(実家がお寺で死刑制度に反対という立場)の役どころがとても好きだったけど、
まさかこんなことになるなんて・・・だった。
正義って何なんだ、法律って、と考えてしまう話だ。
最後のシーンの津川さんの表情が、観ていてものすごくやりきれない気持ちになる。

でも、この話に描かれている世界観の方が、
母のまっすぐな人生より現実味があるのは不思議だ。
だから、60年ちょっとの間、まっすぐに生きて来た母には、
なんだか危ういものを感じてしまう。
ずっとそのままでいて欲しい。



白と黒が分け難い、灰色の世界。
自分が足を置いている世界は、地は「灰色」だと感じる。

仕事をしていて、そういうのを感じる瞬間がある。
職場的には、そういうことを感じる瞬間は少ない方の場所にいるとは思う。
私たちの職場は、「正義」を語るべき職場だから。

会社勤めの人はもっともっとそれを感じる機会が多いのだろう。
「相棒」がものすごく人気のある理由は、
そういう灰色の世界観を上手く表現しているからだろうか。


何故か、そういうことをつらつらと考えてしまった。
理想に生きることが、とても危ういことだと何となく感じる今日この頃、
でもたとえ足元が灰色に染まっても、
白を目指して理想に生きたいと、母と話していて思った。