特定の相続人が、全てまたは大部分の財産を現物で取得する代わりに
他の相続人に、相続割合に見合う分を金銭などで支払う方法です。
代償(だいしょう)… 本人に代わってつぐなうこと。
住居・農地・その他事業用地などの不動産や自社株など
分割してしまうと後々の不都合が生じるような遺産が主な場合に有効です。
例えば磯野家では、住居は波平亡きあと、サザエ、カツオ、ワカメがそれぞれ独立して
家から出て行っている場合など、この家にはフネが住み続ける必要性が高いこと
また、“共有”にすると後々、トラブルの元になるなどの理由から
フネが住居+土地をそのまま相続して、サザエ、カツオ、ワカメには
それぞれ相続分に相当する現金または物を支払うということです。
他方、もし波平が会社を営んでいて
遺産が事業用不動産の土地 ・建物及び自社株で
これを特定の相続人、例えばカツオに継がせたい場合など
フネ、サザエ、ワカメの権利を侵害しないよう現金または物を支払い
遺産を分割しないでそれらを取得することができます。
代償分割
そのまま現物で相続
↓
代償金を支払う
↓ ↓ ↓
● 代償を払う側(フネ)からすれば相続税だけでなく
さらに代償として3人の子供に支払うお金が必要となるわけで
経済的に大きな負担となります。
フネが大金を持っていれば問題ありませんが
遺産のほとんどが不動産の場合はこの「代償」は難しく
「換価」の方法を取らざるを得ません。
また、受け取る側の3人にも注意が必要で、もし金銭でなく
もともと所有している不動産で代償を受け取った場合には
譲渡所得税(所得税+住民税)の対象となります。
● 一旦「代償」による遺産分割が決定すると
フネから資金不足などで代償金が支払われない場合でも
それを理由として遺産分割をやり直すことはできないとされていますので
家庭裁判所に調停、訴訟を申し立てることになり、人間関係に亀裂を生じさせます。
● 代償分割の場合は代償金額と支払期限を明確にしておきます。
(磯野家の遺産分割協議書の作成例)
・相続人フネは、被相続人の遺産をすべて相続する。
・相続人フネは、その取得した相続財産の代償として
相続人サザエに対して現金6000万円、相続人カツオに対して現金6000万円
相続人ワカメに対して現金6000万円を本協議書の調印と同時に支払うものとする。