有効な遺言は法律上の効果を生じさせます。
『○○銀行○○支店・口座番号○○○○の預金はサザエに相続する』と記載のある遺言があれば
波平が死亡すると同時にこの預金口座はサザエのものになります。
サザエ以外の相続人が難色を示しても
遺言があればサザエが相続することになります。
つまり、個々の相続人の考えより遺言が優先します。
このように遺言には、遺言者である波平の思いをそのまま実現する効力がありますが
どんな内容にも、相続人が拘束されるとなると大変ですので
法律は、「遺言で決める事ができるもの」を、大別すると次の3つに限定しています。
● 財産に関すること
ほとんどの遺言は財産に関するものと言って過言ではなく
「誰に・何を・どれだけ」がポイントです。
それ以外には、寄付行為の財団設立
5年以内の遺産分割の禁止などがあります。
● 身分に関すること
身分に関する事柄は厳格に決まっています。
遺言による認知 、未成年後見人の指定 、後見監督人の指定
遺言による相続人の廃除および廃除の取り消し 、遺言執行者の指定
● 祭祀の承継のこと
お墓、お仏壇など先祖を祭るために用いられる財産などです。
通常これらの物は分割にそぐいませんので、一人だけが受け継ぐ事になります。
誰が受け継ぐのかを遺言で指定する事ができます。
この3つ以外のもの、例えば
「カツオとワカメは仲良く、フネの面倒を見てくれ」
「先祖代々の土地を人手に渡してはならぬ」 などに法的な効力はなく
故人である波平の遺志を尊重するかどうかは相続人の自由です。
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また、民法では「遺言できる人」を次のように定めています。
● 満15歳以上であれば、未成年者でも遺言できます。
もちろん、必ず本人の意思に基づいたものであって
強制的に書かされた場合は無効です。
つまり、カツオ(11歳)やワカメ(9歳)は遺言できません。
● 意思能力、すなわち物事を理解する能力がなければなりません。
フネが認知症ですと、その程度によって対応が分かれます。
成年被保佐人(著しく不充分)、成年被補助人(不充分)は
能力が無いわけではありませんので同意を要することなく遺言は可能です。
成年被後見人(能力が無い)は原則として遺言をすることができません。
ただし、一時的に能力が回復している時は、厳しい要件の下で可能です(*)
● 2人で一通の遺言書は無効です。
夫婦が同時に遺言書を作成する場合には、必ず各自1通ずつ書いてください。
(*)…医師2人以上の立会いの下で、法律で定められた形式に従い文書を作成し
その医師が「遺言書作成時には能力が回復していた」ことを書き加え
署名・押印する必要があります。
◎遺言書は書面にすることを求められます。
テープでの録音やDVDなどの映像は
編集による偽造・変更の可能性があるため
法律上、有効とはみなされません。