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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
ぽたら送り。
住職が還暦を迎える年の8月18日の深夜、
小舟を仕立てて、住職をその中に閉じこめ、
太平洋に送り出すのでございます。
名目は、住職様を観音様のお浄土へ、
お送り申しあげるというものであります。
紀伊の沖の黒潮の流れは、インドへの方向とは
逆に流れておりますから、外国の商船や漁船にでも
拾いあげられない限り、
海の藻屑と消えてしまうのでございます。
そのお寺の例では、十名ほどのぽたら送りがございましたが、
中には運のいい人もあったようで、インド見物をして帰ってきた
人もあるようです。
そのお坊さまは、外国人のお陰でぽたら参りが出来たなどとは、
口には出さなかったのでしょう。
そんなことをすれば、観音様のみ名を傷つけるとでも
思っていたのでしょうね。
観音様の奇跡に出会ったのなら、いざ知らず、
人に頼ったのでは、どこのどなたにでも出来ます。
ましてや、一世一代の大勝負なのです。
その人の信仰生活の総括とも言えるものなのです。
それが、異教のバテレンの国の人に助けて貰って、
ぽたら浄土を垣間見てきたなどとは、口が裂けても
言えるものではなかったのでしょう。
あくまでも、観音様のご加護のもとに自力で往復したと
言い張ったのでしょう。
それが、己の信仰の証でもあるからです。
つづく
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
ぽたら送り。
住職が還暦を迎える年の8月18日の深夜、
小舟を仕立てて、住職をその中に閉じこめ、
太平洋に送り出すのでございます。
名目は、住職様を観音様のお浄土へ、
お送り申しあげるというものであります。
紀伊の沖の黒潮の流れは、インドへの方向とは
逆に流れておりますから、外国の商船や漁船にでも
拾いあげられない限り、
海の藻屑と消えてしまうのでございます。
そのお寺の例では、十名ほどのぽたら送りがございましたが、
中には運のいい人もあったようで、インド見物をして帰ってきた
人もあるようです。
そのお坊さまは、外国人のお陰でぽたら参りが出来たなどとは、
口には出さなかったのでしょう。
そんなことをすれば、観音様のみ名を傷つけるとでも
思っていたのでしょうね。
観音様の奇跡に出会ったのなら、いざ知らず、
人に頼ったのでは、どこのどなたにでも出来ます。
ましてや、一世一代の大勝負なのです。
その人の信仰生活の総括とも言えるものなのです。
それが、異教のバテレンの国の人に助けて貰って、
ぽたら浄土を垣間見てきたなどとは、口が裂けても
言えるものではなかったのでしょう。
あくまでも、観音様のご加護のもとに自力で往復したと
言い張ったのでしょう。
それが、己の信仰の証でもあるからです。
つづく