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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
海のむこうが、白み始めて、
だんだんとうす赤、橙、赤、真っ赤に変わってくるのです。
今にも、手でつかめそうな陽が顔をのぞかせます。
今日も太陽は無くなってはいなかったと一安心出来る瞬間です。
欠けたり四角になったりもしていません。
赤い長い影が波の上をかけ回っておりました。
海は、穏やかな小波を浮かべておりました。
「バァちゃん、腹減ったー」
「くそジジィ、お前の方が年上というではないか。
ワシはお前のバァ ちゃんではない。
ジジィに婆呼ばわりされてたまるか。
生米でも齧っとれ」
「腹減った」
二人のやりとりに、美代さんも、白坊も起こされたようであります。
「このくそジジィ、見ろ、二人が起きたではないか。
この役立たずが」
役に立たないのは、お互いさま。そう怒らなくともよいでは
ありませんか。
おカネ婆さんも、自分以下の喜助ジィさんの言動を見て、
人間としての自覚を取り戻しつつあるようであります。
家の中で、外界と遮蔽された生活をしておりますと、
心がどうしても内に篭もってしまうのでしょう。
己だけを責めるようになるようです。
そして、自分は最低の人間だと思い込んでしまうのでしょう。
実際、家の中では、自分以下の者が目に入らないのですから、
仕方ありません。
つづく