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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
白太ちゃんは、その声を聞きつけて、大声を張り上げましたが、
エンジンの音は遠ざかって行くばかりです。
小舟は潮の流れに乗ったのでしょうか。
揺れも少なくなってまいりました。
上下左右には揺れているのですが、
そう苦になるというほどでもありません。
波がポチャン、ポチャンと小舟に当たっています。
おカネ婆さんは、寝たきりでも頭はしっかりとしています。
同乗者の様子を見ておりますと、自分が一番、
その中ではましだと思ったのでありましょう。
必死でみんなに話しかけて慰めておりますが、
返事は返ってまいりません。
しかし、船酔いも吐くものを吐いてしまいますと、
少しは落ち着いてくるのてせしょう。
ぼつぼつと、美代さんが話に応じるようになって
まいりました。
「何日ぐらいで着くんだろうかねえ。無事行けるかねえ」
「観音様がついていて下さるから、きっと大丈夫よ」
「そうだよね。なも、カンボー、なも、カンボー」
おカネ婆さんが祈っております。
そんな話を耳にしますと、私としましても、
この人たちを何とかしてあげたいと思うのでございますが、
一体この先どうすればいいというのでしょう。
私自身も、「なもだ、なもだ」という心境なのでございます。
ああ、阿弥陀様、この私に、何が出来るというのでしょう。
どうか、教えて下さいませ。
つづく