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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
その時でした。
白太ちゃんが、
「忘れものした。おしょさんに、頼まれてたんだ。
ぽたらの国に置いて来てくれって」
この私のことであります。
悪和尚といえども、燃やしたり川に捨てたりすることは
出来なかったのでしょう。
これで、私もみんなと行動を共にすることが
出来るようになりました。
白太ちゃん、あなたは何と素直なんでしょう。
言われたことは、忘れないのね。
「これから、どうしょう?」
「私、秀作さんと一緒にいられるなら、どんなところでもいいわ。
でも、こんな船では遠くまでは無理ね。叔父さんも言っていたわ」
「叔父さんって?」
「この船用意してくれたの。父の弟なの。養子に行っているの
だけれど、大学も出てるのよ。ぽたら送りなど反対してるわ。
だけど、こんなことわかると、お父さんたち死刑になるかも
しれないでしょ。だから、黙ってるの。何とか止めさせたいとも
言ってたわ」
「あの人たち、どうする」
「村に連れて帰るわけにもゆかないわね」
「俺、母さんたちに会いたいんだけれど、すぐには帰れないね」
「私、秀作さんの子供たくさん産むわ。そして、
お母さんたちに見せてあげるの。私、幸せよって」
「あ き の」
船の舵を取りながら、二人は・・・
野暮ですね。そっとしておいて、あげましょう。
それより、
この場を離れて船倉の中を、見てみることにいたしましょう。
秋乃さんさんが持ってきた船酔いどめの丸薬・清心丹が、
二人の子供たちに効いてきたようです。
男は男同士、女は二人がいつのまにか、
うちとけて親しくしております。
それぞれが、お互いの中に自分の姿を見いだしたのでしょうか。
喜助ジィさんは、身体は70歳を越しているとはいえ、
頭の中は、5~6才のようであります。
お話だけ聞いておりますと、白太ちゃんが兄貴分のような
感じがします。
「キーやんと呼んでね」
「いいよ、キーやん。オイラは、白坊でいいよ」
喜助ジィさんも、久しぶりに話の通じる相手が出来たようで
大喜びのようです。白太ちゃんにしても、自分を兄のように
扱ってくれ、一目置いてくれるキーやんが、
すっかり気にいっております。
おカネ婆さんは、可愛くて優しい盲目の少女にすっかり同情して
心を開いております。美代さんも、寝たきりでも経験の
豊かなおカネ婆さんの話に聞き入っております。
他人とそんなに長く話などしたことなかったものですから、
面白くて仕方ないようです。
「こらーっ。お前ら、どこにションベンしとるんじゃ!」
男二人が、船倉の隅に小便をし始めたのです。
喜助ジィさんが、その声に面白がって、おカネ婆さんたちの方に
向かっておシッコをしながら歩いてきました。
ちょろちょろと年寄の小便は長いものですから、
かけられる方はたまったものではありません。
「そんな粗末なものを出しおって、こらクソ、モーロク!」
つづく