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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
おカネ婆さんも真っ青です。
見ますと、キーやんが、先程の手桶の中身を、
ごくごくと飲んでいるのであります。
白坊が、取り上げ、上に上がって捨てにゆきました。
キーやんは何とも言えぬような顔つきをしています。
そう旨いものではないのでしょう。
口の縁には黄色い雫が残っております。
「何ということを、このジジィめ。アホたれがっ。
口拭いてやるから、こっち来」
キーやんは、しずしずと寄っていって、おカネ婆さんに口を
ぬぐってもらいました。
ここは、このぐらいにしておいて、また、
船の上に上がってみましょうか。
「これから、どうしょう」
「まともに働けるの、私たちだけね」
「そう、みんなを食わせることだって難しい。
俺たち二人でさえ、どうなることやら」
「でも、見捨てるわけにはゆかないでしょ」
「そうだよ。これも何かの縁だと思う。思うけど、
どうしたらいいのか」
「このまま、ぽたらに行きましょうか?」
「君は、そんなもの信じているのかい?」
「前の和尚さんから、小さい頃よく聞かされたわ。
きっとあると思う。
不幸な人は、みんな救って下さるのよ。
そして幸せになるの。私は、今、最高に幸せよ。
この幸せみんなにも分けてあげたい。
きっと観音様は、いつもこういう気持でいらっしゃると
思うわ」
「君がそう言うのなら、反対はしない。
どこと言ってあてもないし、学校にも満足に行ってないから
働き口もないしなあ。このまま風や潮にまかせてみようか」
「そうしましょ」
一夜が明けました。
みんなは夜更かしがたたったのでしょう。
水平線を真っ赤に染めながら、
それはそれは、大きな太陽が昇ってくる、
雄大な景色にも、気がつきませんでした。
つづく