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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
「こんにちわ、おカネさんや、身体の調子はいかがかい?」
「これは、これは、ご住職さん、お迎えに来てくれましたんで」
「また、そんな憎まれ口をたたきおって。年寄は、せめて口だけでも
可愛らしくするもんじゃ」
「そう言われましてもな。身体は動かん、ナニ食べても
おいしくねえ、ナーンもおもしろいことはねえ。
これ以上の地獄はないぞな」
「そんな気持でいるから、治るもんも治らないんじゃ。
おカネはん、どうだ一つ観音様のご浄土に行ってみる気は
ないかい?」
「ナニーッ! クソ坊主! やっぱり殺しに来たのじゃな。
帰れ、帰れっ!」
突然、怒り始めました。死にたいというのは、単なる口癖に
すぎなかったのでしょう。
ぽたらの話は、秘密ごとなので、公には広まっていない
はずなのですが、それとなく伝わっているのでございましょう。
死にたいと、己は口にするものの、人から勧められるのは、
誰しも嫌なことなのでございましょう。
「後一月後に、舟は出るでよ。よく考えておくんじゃな。
ぽたら浄土に着くと、いっぺんで病気など治るし、
二十歳ぐらいの身体になって、観音さまにお仕えすれば、
死ぬこともないんじゃよ。死んだ亭主も呼び寄せることは
出来るし、身体はぴんぴんになるし・・・
いいことずくめなんじゃけどな。ただし、無事に着ければの
話なんだが・・・」
「二十歳! 死んだ亭主も呼べるって!」
死んだ、ヨロリという魚のような目をしていたおカネ婆さんの
眼にわずかな光が宿ってまいりました。
70数才から20才に戻れると聞いて心動かされない人は
いないでしょうね。
和尚も、人の泣きどころをよく調べているものでございます。
これで、おカネさんも、おそらくぽたら参りの一員に
加わることでありましょう。
最後は、お美代さんの番であります。彼女は生まれた時から
目が見えませんでした。
色というものが、まったく想像つかないのです。
つづく
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
「こんにちわ、おカネさんや、身体の調子はいかがかい?」
「これは、これは、ご住職さん、お迎えに来てくれましたんで」
「また、そんな憎まれ口をたたきおって。年寄は、せめて口だけでも
可愛らしくするもんじゃ」
「そう言われましてもな。身体は動かん、ナニ食べても
おいしくねえ、ナーンもおもしろいことはねえ。
これ以上の地獄はないぞな」
「そんな気持でいるから、治るもんも治らないんじゃ。
おカネはん、どうだ一つ観音様のご浄土に行ってみる気は
ないかい?」
「ナニーッ! クソ坊主! やっぱり殺しに来たのじゃな。
帰れ、帰れっ!」
突然、怒り始めました。死にたいというのは、単なる口癖に
すぎなかったのでしょう。
ぽたらの話は、秘密ごとなので、公には広まっていない
はずなのですが、それとなく伝わっているのでございましょう。
死にたいと、己は口にするものの、人から勧められるのは、
誰しも嫌なことなのでございましょう。
「後一月後に、舟は出るでよ。よく考えておくんじゃな。
ぽたら浄土に着くと、いっぺんで病気など治るし、
二十歳ぐらいの身体になって、観音さまにお仕えすれば、
死ぬこともないんじゃよ。死んだ亭主も呼び寄せることは
出来るし、身体はぴんぴんになるし・・・
いいことずくめなんじゃけどな。ただし、無事に着ければの
話なんだが・・・」
「二十歳! 死んだ亭主も呼べるって!」
死んだ、ヨロリという魚のような目をしていたおカネ婆さんの
眼にわずかな光が宿ってまいりました。
70数才から20才に戻れると聞いて心動かされない人は
いないでしょうね。
和尚も、人の泣きどころをよく調べているものでございます。
これで、おカネさんも、おそらくぽたら参りの一員に
加わることでありましょう。
最後は、お美代さんの番であります。彼女は生まれた時から
目が見えませんでした。
色というものが、まったく想像つかないのです。
つづく