plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

a master of avant garde jazz and beyond

2005年08月16日 | 音楽
題名はピアニスト/作曲家Cecil Taylor氏のことである。大多数のジャズとはかなり感じが違う音楽を創り続ける巨匠である。そしてジャズの歴史には誰よりも精通している。自分が5歳の時、お母さんに連れられて聴いたChick Webb(1930年代に活躍したジャズドラマー)のコンサートを今でも鮮烈に憶えているような人である。

そのような巨匠がどうした訳か、僕が毎週演奏しているクラブに頻繁に遊びに来る。そこはミュージックチャージなど無く、こじんまりとして飾り気といえば年中そのままになっているクリスマスや大晦日、はたまたハロウィーンの飾り付けだけだ。多分単にこの雰囲気が気に入っているのだろう。

この巨匠がお見えになるのは大抵ブルースやファンク、R&Bのバンドが演奏している時だ。そんな時に彼と話していると、R&Bやブルースとジャズとが如何に密接かということを実感する。実際に演奏するコードだとかフレーズなどの音使いは違うが、音楽を通じて訴えたいことが根本で一致するからだと思う。

Taylor氏は生まれも育ちもNYだ。そして幼少の頃からここで生まれたジャズを逐一体験してきた。ただ聴いていたのとは訳がちがう。何十年もの間のNYそのものを肌で感じてきたのだ。サッチモやビリーホリデイ、バドパウエル、セロニアスモンク、マイルスデイビスなどの大物との体験談は彼にしかできないものばかりだ。

その半世紀以上に渡る体験のほんの片鱗を、僕は自分のブルースライブの15分の休憩時間に何度聞いてきたことか。全く勿体無いというか、落ち着かないというか、頭がグシャグシャになるというか、いつもそんな感じになる。その直後にこの巨匠を前にしてコードは3つのみ、のブルースを演奏するのである。おもしろすぎる。

まだまだ作曲、演奏活動をバリバリやっているこの巨匠はすごい。その合間を縫って遊びにきて頂いているわけだからありがたいことだ。こちらとしても体力の続く限り呑むのにお付き合いしたい。