plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

友達のオフブロードウェイ

2005年08月30日 | 音楽
先日のブログ記事に書いた"Once around the sun"というミュージカルを観に行った。ソングライター3人のうち二人が元バンド仲間であるこのショー、プレビュー開始からほぼ一ヶ月かかってやっとチケットが手に入った。そのくらい繁盛しているらしく、公演期間が延長されたそうだ。いい具合だ。

ショーの内容は売れないロックバンドにまつわるもので、ソングライター達の実経験が色濃く反映されている。会場はマンハッタンのHell's Kitchenエリア。Zipper Theaterという劇場なのだが、実際にファスナー工場だった所を改築したらしい。確かにそのブロック自体は今でも現役の繊維業を主とした倉庫やら小工場で成り立っている。劇場の目の前に行くまで、住所を間違えたか?と思ったほど。

キチキチに詰めれば200人入るかなという広さだから、皆が静かにしていればアコースティックギターの生音が聴こえる。大きな音を出すと収拾がつかなくなる。しかしロックバンドについてのショーだからステージ上でキャストが演奏するシーンが多い。ステージ右裾には姿は見えないバンドがピットに入っていて95%の音楽を演奏する。普通は100%なのだが、キャストの中には簡単なギターなら弾き語りできる人がいるので、彼らが弾き始める歌もある。また劇中のバンドのドラマーはステージ上とピットと両方の場所を移動して一人で叩いていた。役者とピットバンドを兼任していたのだ。元々役者ではない彼に台詞は無かったが、笑ったり頷いたりなどの演技はあった。とにかくピットの音とステージ上の音をブレンドさせるのには相当苦労した、と友人のピットギタリストが教えてくれた。劇場内の幾つもあるスピーカーの配置、音量配分は勿論、デジタルディレイを使って音のでるタイミングを調節したりしたそうだ。

実際どこにでもいそうなロックバンドの葛藤。現実にそれを夢見てやってきた人たちが歌を作り、本物のミュージシャンやブロードウェイの役者、スタッフのプロが賛同してできたこのショーの数々のシーンには、ミュージシャンとして頷けたり内輪受けとした笑えたりする箇所が多かった。音楽業界を知らない人はどう思うのだろう?テレビのリアリティーショーが全盛の今日この頃だから皆の興味をそそるだろうか?

売れないロッカーの自虐ギャグほんの少々、素晴らしい歌声をしたキャストが歌う盛りだくさんの上質の歌、そして有名になることと自分のやるべきことについてのいろいろな考え方を示した脚本でできたこの"Once around the sun". 是非一度ご覧下さい。

Once Around The Sun - a musical about music