422ページある小説ですが、一気に読み終えた。
久しぶりに読んだけど、桐野夏生さんの小説はやはり面白い。
海外で生まれ、整形を繰り返す母親の本当の顔も名前も、父親がだれなのかも知らず、
自分は日本人なのか?ということすらはっきりせず、
母と各地を転々とするマイコが、難民キャンプ育ちの七海に手紙を書く、
という形で、マイコのこれまでの人生、転機などが語られていく。
戸籍もIDもパスポートもなく、外国でよくここまで生きてこれたなあと思うが
それは日本育ちのド日本人である私がとらわれてるだけなのか・・・。
七海がもっと大きな役割を果たすのだろうと最初思ったが、
さほど意味のある存在ではなかった。
ラストはありふれた和解系のオチで終わらずよかった。
ところどころ印象的なセリフがあった。
マイコが母に「日本に行って日本で暮らす」と反発して言うと、母はこう言う。
「何を甘いことを言ってるの。日本なんてね、ちっともいい国じゃないんだよ。みんな何も知らずに家畜になって生きているだけなんだから」
七海は手紙でマイコにこう伝える。
「マイコ、これだけは言っておきます。日本は、私たちのようなファジーな人間には、とても辛いところです。覚えておいてね」
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ちなみに、この小説を電車で読んでいるときにちょうど電車の掲示板ニュースで
「桐野夏生さんが日本ペンクラブの第18代会長に選出され、女性初の会長となった」
と流れました。
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