遠く遠く

19歳のある日　お茶の稽古を終えたその足でデパートのネクタイ売り場へ向かった
初めてのお茶会にどんな服を着て　どんなネクタイを締めてゆけばいいのか
何もかも手探りで・・
そういうことに関してあんまり母親の手を煩わせたくもなかった
当時は割合襟も広めでタイも太めのが流行ってたのかなぁ
あまり流行に乗るのが好きじゃなかったし乗る勇気もなかったということもできる
緑色が主流のちょっと渋めのが気に入った
でも本当のこと言うと　僕はまだネクタイを締めたことがなかったし
その締め方も全然知らなかった

「これ、ください」　と言った後
「すみませんけど、ネクタイの締め方教えてもらえませんか？」
ウィークデーのやや閑散とした店内にはほかにお客さんらしい姿もなく
若いお姉さん（例外もあったかも）が・・レジの脇で3人くらい寄ってたかって教えてくれた
一番簡単な方法　これは玉が小さくて解け易い　形がちょっと整え難いかな？　とか
これはなんていうんだ？　　プレーンノットだ
あんまりしたことがない
一番複雑なのがウィンザーノットってこの呼び方は忘れたことがないが実際にはやったことがない
玉がでかくなりすぎてどうも僕には似合わない
で、
いつもやってるのはハーフウィンザーノットっていうのか
この結び方、一回だけくるりと巻くやり方
この3種類を丁寧にお姉さん方が教えてくれた
僕も緊張してたし　忘れたことはない　　当たり前か（笑）

そうやって一つのことをマスターしてまた僕は一つだけ大人になった（笑）
毎年この時期にたくさんの若者が大人になってゆく

娘のように生まれた土地を離れて遠くへ旅立つ子たちもたくさんいるんだろう
みんな元気で頑張ってくれ
時々は泣いてもいいんだぞ



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