大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

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お迎えの儀式と「合体!」

2009年01月03日 | 児童デイサービス
 お盆休みが無かった分、お正月休みは本当に貴重な休息期間です。それもあと1日で終わりです。

 「合体!」の後遺症がまだ続いているようで、右肩を回そうとすると痛みが走る。「合体」とはA君が名づけた遊び?だ。「合体!」と聞いたときは知る人ぞ知る、迷わず『釣りバカ日誌』の「合体」を思い出してしまったが、彼が要求したものはもっと過酷な合体であった。つまり、右手と左手に2人の子どもを抱えてグルグル回す遊びのことだったのだ!冗談でたった一回やったことが災いした。
 しかも、必ず彼らはお迎えに来られた母たちの前でその日のハイライトを演じないと、その日が終わらないのだ。最近ではこれは一日の仕事を終えた子どもたちの大切な儀式だと思うようになった。
 特に小学1年のA君は「お母さん!見てみて!」が尋常ではない。最近でこそ落ち着いてきたが、当初はぽぽろに来るなりそこらのものをひっくり返したり、スタッフのお尻をバチンと叩いたり、抱きついたり、つばを飛ばしたり、噛みついたりして気をひこうとしていたものだ。そして、お迎えの時にもまたひと暴れしてなかなか帰ろうとしなかった。お母さんにはお迎えの時は「見てみて!」のAくんに真っ正面から向き合って受け止め、頑張ったねと抱きしめてあげてくださいねとお願いしている。老体にむち打って「合体」に挑戦!A君とB君を両脇に抱えて「見てみて!」と一緒に叫んだもんだ。お母さんもしっかり見てくれて、「すごーい」と激励してくれた。A君はその日はとても穏やかに気持ちを切り替えて満足そうな様子で帰っていった。いわば、そういう儀式なのだ。

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 「自己肯定感」の大切さはいくら強調してもしすぎることはない。帰りの儀式で「楽しかった!」「ボク頑張ったよ」「友だちと喧嘩して悔しくて泣いたよ」「早く帰りたかったけど我慢したよ」とお迎えのお母さんに飛びつく子どもたちの様子と愛情いっぱいに抱きしめるお母さんの姿を見ていると嬉しくなってくる。帰りの儀式を大切にしたいものです。

 AくんはAD/HDという診断もついているようだが、おそらく「ダメよ!」「アカン!」と叱られる連続だったと思う。A君に限らず、彼らはぽぽろで色んな技や遊びに何度でも挑戦する姿を見せてくれる。棚の上などの高い場所に登ったり、板を使って坂をつないで長く高くしたすべり台からすべったり、バットで投げたボールを打ったり…。何度でも失敗OKだし、強制もしないし、ハラハラドキドキでも大声で禁止もしない…ように努力している(勿論、安全には気をつけて)。
 そんな彼が通う支援学校の生活を少し見学させていただいた。とても落ち着いていた。特にぽぽろではお弁当の時間が集中できなくて大変でしたので、給食をしっかり食べている様子にビックリ。「学校ではとても落ち着いていますよ」と「何を言っているのですか?」という感じで言われてしまった。(もっとも入学当初は大変だったようで、一人別な場所で四方を机でガードして食べさせていたそうだが…。)
 私が教師の時には「さすが学校だ!」「さすが専門家だ」と思ってもらうことに快感を感じていたように思う。でも、今はこちらは「困っている」のだ。そして、一番「困っている」のは目の前の子ども本人と子育てに悩む家族なのだ。なぜ学校では「落ち着いて」いて、家庭やぽぽろでは「大暴れ」するのか?それは「学校のように(厳しく?)しないから」「甘やかしているから」ということになるのか?こうなると返す言葉もなく、チャンチャンで終わってしまう。
 学校では子どもたちはとても頑張っていると思う。緊張もしている。学習には「ねらい」があり、子どもたちには「落ち着いて給食を食べる」などの課題があり、教師は評価をしなければならない。教師対子どもの人数比も充実している。緊張するのはある意味当然かもしれない。白石正久先生(龍谷大)が学校では教師は「評価の目」で子どもを見なければならないし、それを全面に出して子どもに迫る教師もあるという趣獅フことを言われたときに、元教師としてホントにそうだと共感したことがある。

 だからこそ、放課後の学童保育は緊張から開放された子どもたちが、思い切り自分を出せる、安心して遊べる場にしたいものだと思っている。学校で緊張し、ぽぽろに来てまで緊張していたら、家庭に帰って「大暴れ」し激しくぶつかり合うのは目に見えている。子どもも親もヘトヘトである。大人でも教師でも「アフターファイブ」は自分や家族の時間、仕事を離れてくつろぐからこそ明日がある。
 学童保育も子どもたちが緊張から開放されて明日へのエネルギーを再生産する場かもしれない。そんな中で、遊びを通して学校で十分できなかったことをや尻込みしたことに挑戦したり、ほめられたり、達成感を感じたりして成長していく子どもたちの様子を見るのはとても嬉しい。「第三の世界」「第三の発達の場」の意義を語ったつもりである。始めて1年にも満たない新米がこの大きなテーマについて語ることをお許しください。

 さて、ぽぽろの学童保育は6日からスタートする。例の年末に買った新しいバットに子どもたちはどんな反応をするか今から楽しみである。学童保育の中で言われている「子どもたちは夕方に発達する」という意味が少し分かってきた。さよならの儀式の時に我も我もと見せるバットを持ってスックと構える子どもたちのことについて次回は書いてみたい。その姿はまさにヒーローだ。
 と言っても、ダラダラとこんなに書けるのは今だからこそです。ダラダラにつき合って最後まで読んでいただいた方には感謝申し上げます。ハイ。