大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

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大阪市鶴見区今津北にあります。

葛藤を受け止める

2009年01月16日 | 児童デイサービス
 発達とは矛盾をのりこえること」>(白石正久氏)
 
 「やりたいなぁ」「できるようになりたいなぁ」でもでも「できるだろうか、自信ないなぁ」「苦手!できなーい!」。心の中の葛藤が見えてきます。
 言うまでもなく「みてみて!」「できたぁー!」と気持ちを共感し合い、意欲や自信につなげていくことはとっても大切なことです。
 表れ方は子どもによって様々です。皆がやっていることを、見向きもしないけど、背中や後頭部の辺りで感じ取っている子。ほんの一瞬、チラッと見ている子。近寄ってきてはすぐに離れていく子。やろうとする動作に入るがためらって退いていく子。やりたいなぁという視線を送る子。
 しかし、焦りすぎても、期待をかけすぎてもプレッシャーになり、よけいに退くだけです。意欲と不安が入り乱れて、葛藤が高まったギリギリのところではたらきかける、そのタイミングが大切。もちろん、やりたくなるような遊びや道具、安心があり楽しいという雰囲気づくりはその前提です。

 Tくんのことです。Tくんは保育園からぽぽろの親子療育教室にやってきます。Tくんは「ドレミファ ドレミファ」と療育教室を楽しみにやってきます。この日はお休みもあり、たまたま彼一人の参加になりました。
 最近、彼はなにかの遊びや遊具などに挑戦させようとすると「むりむり!」と言うことが多くなってきました。その背景に色んなことが考えられます。保育所で年長ともなると周りの子たちとの間に差が出てきたのかもしれない。入学に向けて赤いランドセルが目当てでダイヤモンドシティのお店に必ずのぞきに寄るほどだから、小学校生活への期待が高まる一方で保育園でも家庭でも「もうスグ小学生だよ」などという期待とプレッシャーがかかっているのかも知れない。もう一つ、いつも兄弟でやってくるが、弟くんがずいぶんと力をつけてきて、兄より先に臆せずに課題に挑戦するようになったことも大きいのかもしれない。

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 今日の自由遊びのときにボーリング遊びに誘ってみました。簡単なペットボトルを使ったボーリングです。ところが、ブロックでロボットを組み立て、滑り台の上にロボットを乗せロボットの上から転がしてやろうとするのです。
 ボーリング遊びで唐オた後のお手伝いでは、ピンを床の黄色テープの上に置くことは積極的でした。弟が置き方が分からないのを見て、お兄ちゃんとしてこれは頑張ったのではないのでしょうか。

 やっと「遊園地とネズミばあさんとどっちをやる?」と聞くと「ネズミばあさん」と答えてくれました。
 設定遊びをしようとしても、なかなか自分の世界に入って気持ちも行動も切り替えようとはしないのです。 しかも、はじめようとするとこの通りブランコにロボットを乗せて遊びだしました。誘いかけてもなかなか来ません。
 

 Tくんがようやく自分の世界から抜け出して、「参加」してきたのは時間が半分以上過ぎた頃でした。大好きだった「ネズミばあさん」も台車にロボットを乗せてロボットが追いかけられるようにしたのです。次は本人に「ネズミばあさん」役をさせようとすると自分は外にいて、ロボットにやらせる(布の中に隠す)のです。ネズミばあさんのセリフはさすがにロボットには無理なので、自分の口で言いました。


 さぁ次は!と…♪「ゆうえんちにつれてって」をしようと誘っても、別のことをやり始めるのです。
 それがこれです。箱椅子とすべり台の板と本箱とフラフープを組み合わせて、「スタート」「ゴール」などとやり始めました。私はてっきり遊園地の遊び場を作っているものと思い込んでいました。私がブルーシートを敷いて「これは海だよ。落ちないようにね。」と盛り上げようとしても無視します。実はこの遊びのなぞが今日ようやっと理解できました。聞いてずっこけ、そして少し落ち込みました。これについては明日、同僚のKが面白おかしく書くといっています。乞うご期待!

 この訳の分からない?遊びを半ばあきらめさせて、遊園地ごっこが始まりました。時間がなかったのでやったのは「コーヒーカップ」だけです。
 ぐるぐる回しはさすがにプレッシャーはかかりません。何度も要求しました。弟も入れて「合体」もしました。
 次にビリボー(コーヒーカップに見立ててビリボーに乗って回転する)を持ち出すとまたまたロボットの登場です。自信がないのでしょう。横で弟は下手なりにやろうとしています。結局片付けようとするとホラ慌ててやりだしました。


 この上手に乗って回っているビリボーは♪「終わりの歌」が終わったとたんにやりだしました。このいきいきとした表情、のびのびとした動きを見てください!
 私は見ていませんでしたが、この後で自分でペットボトルを全部立ててボールを転がしてボーリングもやったそうです。
 
 おやつの様子です。ビスケットが入った袋を差し出すので、「開けてねって言おうね!」などとは決して言わないで、「自分でやってごらん」と誘うと彼の口から出ました「むりむり」が。「大丈夫、出来るよ」と言うと少し安心するのか、やろうとしますがスグに「むりむり」。一緒にしようかと少しだけ切れ目を入れると出来ました。

 結局この自信のなさ、不安と彼はたたかっているのです。葛藤が痛いほど理解できる。その話をしているとKが言いました。「自信がないのでロボットにさせようとしたのですね」と。ウーンさすがや!なるほど!彼は今すごい過敏なほどのプレッシャーを受けているのだなぁ、自信を回復するようにゆっくり代理ロボットであろうと受け入れながら励ますことが必要なんだなぁと思ったわけです。

 私も最初に書いた「訳のわからないあそび」(遊園地ごっこと思い込んでいた)に、楽しそうに付き合うKのノー天気な姿を見ながら、少しイラつきながら一生懸命に彼の気持ちを切り替えようとさせていた自分が本当にバカに思えたものです。
 明日のKの投稿をお楽しみに!