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ニ十三日(土) 2
10:00
ヘルムスを交代してデッキで寝ていた。
「白煙が出ている」とKが伝えて来た。
スターンを覗き込む。確かに排気管から白煙が噴出していた。
エンジン停止。
原因を話し合う。
『燃料にオイルが混入した』と云う説が有力だが『では、何処から』と云う問いには誰も答えられない。
暫くして再びエンジン始動。白煙。
入港時にエンジンが使用できないと非常に困るのでエンジン停止。
本日は帆走のみで房総半島を目指すこととした。
それにしても風が弱い。
風が後ろに廻って来た。スピンを用意する。セットしてハリヤードを引かせる。
スピンソックスがうまく上がって行かない。半分ほど開いて取りやめた。
11:00
風が追手になって来た。再度スピンを上げる。今度は問題なく展開。
久しぶりにブルー・レッド・ホワイトの三色の花弁が開いた。
艇速が伸びた。推定8ノット。
私以外は初めての体験だった。それなりに感激していたように思える。
スピントリムは私がせざるをえない。
ヘルムスはKがそのまま続けた。
風が弱い所為もあるがどうにかこなしていた。
暫くしてKとT海がヘルムスを交代。
T海はスピンランがよくわかっていない。裏風を入れてスピンネーカーが度々踊った。
T海の風下側のシートに座した。ティラーに手を添えた。
12:00
風が回り込んでアビームラン。スピンダウン。艇速もダウン。
房総半島は一向に姿を現さない。
「視えた」Sが指さした。確かに陽炎の中に白い建物らしき物が。
『だが怪しい。その後ろにある筈の稜線が視えない』
約十分後。コンテナ船であることが判明した。
13:00
今度は本物の房総半島であった。歓声が上がった。ビデオ撮影。
大島の島影はいまだに見えていた。
艇の位置を確認したかったがGPSは使用不可であった。
物標から判断するしかない。
海図を広げた。目を凝らして物標を捜す。
紅白の鉄塔。艇は想ったよりも西寄りを北上していた。
正面左は洲崎だった。右端が布良。その陰に野島崎が。
海岸線を視ながら東寄りに南下。だいぶ廻り道をしてしまった。
しかしそれでも有視界航行になると気が楽であった。
前方にサンフラワー号が視えた。Sが近寄ることを提案した。
余裕の出て来た証拠だ。
船腹のヒマワリマークがはっきり見えるところまで接近した。
ビデオ撮影。サンフラワーのデッキに人影。手を振っていた。
それにしても腹が減って来た。
14:00
海象が激変した。絶え間なく白波が襲ってきた。風圧はその威力を増し艇を大きくヒールさせた。
ブロー。メインシートを緩めて風を逃がす。T海がよく頑張ってティラーを握っていた。
「リーフする。S!。ヘルムスをT海と代われ」
そう叫んでコクピットを抜け出した。デッキを波が洗う。スタンディングリギンに掴まりながらマストに辿り着いた。
「S!。風に立てろ!」艇が風上を向いた。
「メイン降ろせ」メインハリヤードが緩められた。セールを1/3ほど引き下ろした。
※受風面積を小さくするために、帆を一部縮めることをリーフ・縮帆と言います。
グースネックのフックにリーフクルリングルを掛けた。
「メイン上げろ」怒鳴りっぱなしだ。
しかし、メインセールが揚がって行かない。
T海が必死になってウィンチを廻していた。
「莫迦!それはリーフロープだ。ハリヤードは隣の太い方だ!」
コクピットに戻りジェノアをファーリングした。ヒールの度合いが多少減った。操船が僅かながら楽になった。
14:30
風は追手だった。艇は疾走していた。大波がスターンから襲ってて来た。サーフィングの連続だ。
Sが懸命にティラーを操作している。私はトリマーに徹していた。
後の二人は戦力外だった。
風速がまた一段と増した。
波高もすでに三メートルほどに達していた。
ヒールが更にきつくなった。
再度リーフをすることにした。再びコクピットを抜け出してマストに向かう。艇の揺れは先ほど以上に激しい。
デッキの上の作業はまるでサーカスのようだった。
ツーポイントリーフを完了した。
※ツーポイントリーフ ジェノアを巻き込んでいる。 撮影は以前御宿沖で練習した画。
コクピットに戻ろうとしたときT海が風下側のウィンチで格闘していた。
視るとジブシートが二本絡み合っている。
「どうした!?」
「ジブをファーリングしようとして緩めた時に抜けちゃって・・・」とK。
ロープエンドは確実にエイトノットをしてあった。それにも関わらずリーダーから抜けてしまったのだ。
ブローにより瞬間的に想像を絶する力がジブシートに加わったに違いない。
二本のシートは互いに絡み合ってどちらも譲ろうとはしなかった。
「どちらでもいい!ウィンチで引け」T海が一本をウィンチに捲きつけクランキング。
ジェノアが風を孕んだ。
「もう一本の方、放してもいいですか?」
「駄目だ。暴れると危険だ!」
T海が絡んでいる一方を張っているシートを軸にして周回させた。もつれが取れて来た。
私はバウでそのシートのクリューアウトホール側を掴み引いた。
完全に解けた。デッキを移動。末端のエイトノットを解きリーダーに通した。再びエイトノット。念のためダブルにした。
セルフティーリングウィンチへリード。コクピットに戻った。
短いシートを三本持ち再びデッキへ。ツーポイントの場合はリーフしたセールが垂れさがり視界が非常に悪くなるのだ。
ドグハウスに腰を降ろしてブームに締結。
つ づ く
後のために ダイビング編目次 へLINKを貼ることにいたします。