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伊豆大島渡航記 セーリング 平成三年十一月(1991)その7

2022-02-02 12:06:52 | Weblog

                 ニ十三日(土) 2

 10:00
 ヘルムスを交代してデッキで寝ていた。
 「白煙が出ている」とKが伝えて来た。
 スターンを覗き込む。確かに排気管から白煙が噴出していた。
 エンジン停止。
 原因を話し合う。
 『燃料にオイルが混入した』と云う説が有力だが『では、何処から』と云う問いには誰も答えられない。
 暫くして再びエンジン始動。白煙。
 入港時にエンジンが使用できないと非常に困るのでエンジン停止。
 本日は帆走のみで房総半島を目指すこととした。
 それにしても風が弱い。

 風が後ろに廻って来た。スピンを用意する。セットしてハリヤードを引かせる。
 スピンソックスがうまく上がって行かない。半分ほど開いて取りやめた。
 
 11:00

 風が追手になって来た。再度スピンを上げる。今度は問題なく展開。



 久しぶりにブルー・レッド・ホワイトの三色の花弁が開いた。
 艇速が伸びた。推定8ノット。
 私以外は初めての体験だった。それなりに感激していたように思える。
 スピントリムは私がせざるをえない。
 ヘルムスはKがそのまま続けた。
 風が弱い所為もあるがどうにかこなしていた。
 暫くしてKとT海がヘルムスを交代。


 T海はスピンランがよくわかっていない。裏風を入れてスピンネーカーが度々踊った。
 T海の風下側のシートに座した。ティラーに手を添えた。

 12:00
 風が回り込んでアビームラン。スピンダウン。艇速もダウン。
 房総半島は一向に姿を現さない。
 「視えた」Sが指さした。確かに陽炎の中に白い建物らしき物が。
 『だが怪しい。その後ろにある筈の稜線が視えない』
 約十分後。コンテナ船であることが判明した。

 13:00
 今度は本物の房総半島であった。歓声が上がった。ビデオ撮影。
 大島の島影はいまだに見えていた。
 艇の位置を確認したかったがGPSは使用不可であった。
 物標から判断するしかない。
 海図を広げた。目を凝らして物標を捜す。

 紅白の鉄塔。艇は想ったよりも西寄りを北上していた。
 正面左は洲崎だった。右端が布良。その陰に野島崎が。
 海岸線を視ながら東寄りに南下。だいぶ廻り道をしてしまった。
 しかしそれでも有視界航行になると気が楽であった。

 前方にサンフラワー号が視えた。Sが近寄ることを提案した。


 余裕の出て来た証拠だ。
 船腹のヒマワリマークがはっきり見えるところまで接近した。
 ビデオ撮影。サンフラワーのデッキに人影。手を振っていた。

 それにしても腹が減って来た。

 14:00
 海象が激変した。絶え間なく白波が襲ってきた。風圧はその威力を増し艇を大きくヒールさせた。
 ブロー。メインシートを緩めて風を逃がす。T海がよく頑張ってティラーを握っていた。
 「リーフする。S!。ヘルムスをT海と代われ」
 そう叫んでコクピットを抜け出した。デッキを波が洗う。スタンディングリギンに掴まりながらマストに辿り着いた。
 「S!。風に立てろ!」艇が風上を向いた。
 「メイン降ろせ」メインハリヤードが緩められた。セールを1/3ほど引き下ろした。

 ※受風面積を小さくするために、帆を一部縮めることをリーフ・縮帆と言います。

 グースネックのフックにリーフクルリングルを掛けた。
 「メイン上げろ」怒鳴りっぱなしだ。
 しかし、メインセールが揚がって行かない。
 T海が必死になってウィンチを廻していた。
 「莫迦!それはリーフロープだ。ハリヤードは隣の太い方だ!」
 コクピットに戻りジェノアをファーリングした。ヒールの度合いが多少減った。操船が僅かながら楽になった。

 14:30
 風は追手だった。艇は疾走していた。大波がスターンから襲ってて来た。サーフィングの連続だ。
 Sが懸命にティラーを操作している。私はトリマーに徹していた。
 後の二人は戦力外だった。
 風速がまた一段と増した。

 波高もすでに三メートルほどに達していた。
 ヒールが更にきつくなった。

 再度リーフをすることにした。再びコクピットを抜け出してマストに向かう。艇の揺れは先ほど以上に激しい。
 デッキの上の作業はまるでサーカスのようだった。
 ツーポイントリーフを完了した。

 ※ツーポイントリーフ ジェノアを巻き込んでいる。 撮影は以前御宿沖で練習した画。


 コクピットに戻ろうとしたときT海が風下側のウィンチで格闘していた。
 視るとジブシートが二本絡み合っている。
 「どうした!?」
 「ジブをファーリングしようとして緩めた時に抜けちゃって・・・」とK。
 ロープエンドは確実にエイトノットをしてあった。それにも関わらずリーダーから抜けてしまったのだ。
 ブローにより瞬間的に想像を絶する力がジブシートに加わったに違いない。
 二本のシートは互いに絡み合ってどちらも譲ろうとはしなかった。

 「どちらでもいい!ウィンチで引け」T海が一本をウィンチに捲きつけクランキング。
 ジェノアが風を孕んだ。
 「もう一本の方、放してもいいですか?」
 「駄目だ。暴れると危険だ!」
 T海が絡んでいる一方を張っているシートを軸にして周回させた。もつれが取れて来た。
 私はバウでそのシートのクリューアウトホール側を掴み引いた。
 完全に解けた。デッキを移動。末端のエイトノットを解きリーダーに通した。再びエイトノット。念のためダブルにした。
 セルフティーリングウィンチへリード。コクピットに戻った。
 短いシートを三本持ち再びデッキへ。ツーポイントの場合はリーフしたセールが垂れさがり視界が非常に悪くなるのだ。
 ドグハウスに腰を降ろしてブームに締結。


 

 

   つ づ く

   後のために  ダイビング編目次 へLINKを貼ることにいたします。

 

 

 


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