猫の甘えと暴力の境界線〜寿司屋の猫とプーちゃんの教え〜
寿司屋の猫:甘え上手なストリートファイター
また出会ってしまった。
あの猫に。
寿司屋の軒先で、
今日もヤツは甘い声で鳴く。
「るにゃん」
喉を鳴らしながら喋るから、
そういう声が出る。
うん、かわいい。
だが、知っている。
こいつが、
人の心を弄ぶ達人であることを。
こちらが無視すると、
今度は「あれ? なんで?」
みたいな顔でついてきた。
え、もしかして寂しいの?
反省した? かわいいな?
そう思って手を差し出すと——
— バシッ!!
カウンターパンチが炸裂。
やっぱり裏切られた。
いや、学べよ、私。
何故、同じミスを繰り返す?
しかしな。
なんなんだおまえ。
バイオレンスが目的なのか?
それとも愛を求めているのか?
「わからない。
おまえの気持ちがまるでわからない」
猫は涼しい顔でこっちを見ていた。
「なんで俺に触ったの?」
とでも云いたげだ。
こういう猫は、
チュールを見せれば
即座に態度を変えるに違いない。
しかし、寿司屋の猫だ。
きっと、
刺身の端っこでも食べて生きている。
チュールごときで買収されるわけがない。
と思いながらも、
私はチュールを差し出していた。
猫は鼻をひくひくさせ、
ふっ…と横を向いた。
「ホタテ味は、違う」
なんでだよ!!
その冷めた眼が全てを物語っていた。
「俺、まぐろ派だから」
好意で出されたものは、黙って食え!!!
プーちゃん:伝説のDV猫
ふと思い出した。
我が家の伝説の猫、
プーちゃんのことを。
ちなみに、
プーちゃんの名前の由来は
「プーチン」ではなく
「プータロー」である。
まあ、そこはどうでもいい。
プーちゃんは、
いつも桜の木に登っていた。
ベランダから名前を呼ぶと、
「にぁああああ!」と叫びながら猛ダッシュで帰ってくる。
そして、私の膝に乗ってくるのが日常だった。
私はその時間が好きだった。
柔らかな背中を撫で、
耳の後ろを掻き、
肉球をプッシュ。
首元に指を這わせる。
彼女は恍惚の表情で、
「るにゃ」
喉を鳴らしながら喋るから、
そういう声が出る。
愛し合う恋人同士のように、
私たちは甘い時間を過ごした。
「君が求めるなら、
いくらでも快楽を与えてあげるよ」
たまらなく彼女が、愛おしい。
ずっとこうしていたい。
そして。私は知っていた。
猫はおしりを叩かれるのが好きなことを。
私はそっと、彼女の尻をぽんぽんと叩きはじめた。
——その瞬間。
彼女の表情が一変する。
いきなり牙を剥いて襲いくるプーちゃん。
困惑して、慰めようと、
さらに手を伸ばすと、
繰り出される強烈な猫パンチ。
全く手加減のない、
技の応酬であった。
(私はなんの危害も加えていない。
そう思っていた)
「何するの、痛かったよ!」
と訴える私を、
冷酷な眼で一瞥し、
プーちゃんは桜の木へ去っていった。
彼女はいつもそうだった。
まるで 山の天気のように 気分が変わる。
5秒先の彼女の気持ちがわからない。
家族はいつしか、プーちゃんを 「DV猫」 と呼ぶようになった。
…しかし、私たちは知らなかったのだ。
「猫はおしりを叩かれるのが好き」 というのは
全ての猫に当てはまるわけではない ということを。
去勢・避妊をした猫にとって、
おしりの叩きは ストレス以外の何物でもない らしい。
つまり、プーちゃんはこう思っていたのだろう。
「また叩いたな! 許さない!!」
今となっては、もう謝ることもできない。
プーちゃんは父と共に
信州の家へ引っ越して間もなく、
自らの意志で姿を消してしまった。
今でも時々思う。
「もし、もう一度会えたら、
おしりを叩かずに、愛を伝えられるのに」
【結論】
寿司屋の猫も、プーちゃんも、
「愛と暴力は紙一重」
ということを教えてくれたのだった。
寿司屋の猫:甘え上手なストリートファイター
また出会ってしまった。
あの猫に。
寿司屋の軒先で、
今日もヤツは甘い声で鳴く。
「るにゃん」
喉を鳴らしながら喋るから、
そういう声が出る。
うん、かわいい。
だが、知っている。
こいつが、
人の心を弄ぶ達人であることを。
こちらが無視すると、
今度は「あれ? なんで?」
みたいな顔でついてきた。
え、もしかして寂しいの?
反省した? かわいいな?
そう思って手を差し出すと——
— バシッ!!
カウンターパンチが炸裂。
やっぱり裏切られた。
いや、学べよ、私。
何故、同じミスを繰り返す?
しかしな。
なんなんだおまえ。
バイオレンスが目的なのか?
それとも愛を求めているのか?
「わからない。
おまえの気持ちがまるでわからない」
猫は涼しい顔でこっちを見ていた。
「なんで俺に触ったの?」
とでも云いたげだ。
こういう猫は、
チュールを見せれば
即座に態度を変えるに違いない。
しかし、寿司屋の猫だ。
きっと、
刺身の端っこでも食べて生きている。
チュールごときで買収されるわけがない。
と思いながらも、
私はチュールを差し出していた。
猫は鼻をひくひくさせ、
ふっ…と横を向いた。
「ホタテ味は、違う」
なんでだよ!!
その冷めた眼が全てを物語っていた。
「俺、まぐろ派だから」
好意で出されたものは、黙って食え!!!
プーちゃん:伝説のDV猫
ふと思い出した。
我が家の伝説の猫、
プーちゃんのことを。
ちなみに、
プーちゃんの名前の由来は
「プーチン」ではなく
「プータロー」である。
まあ、そこはどうでもいい。
プーちゃんは、
いつも桜の木に登っていた。
ベランダから名前を呼ぶと、
「にぁああああ!」と叫びながら猛ダッシュで帰ってくる。
そして、私の膝に乗ってくるのが日常だった。
私はその時間が好きだった。
柔らかな背中を撫で、
耳の後ろを掻き、
肉球をプッシュ。
首元に指を這わせる。
彼女は恍惚の表情で、
「るにゃ」
喉を鳴らしながら喋るから、
そういう声が出る。
愛し合う恋人同士のように、
私たちは甘い時間を過ごした。
「君が求めるなら、
いくらでも快楽を与えてあげるよ」
たまらなく彼女が、愛おしい。
ずっとこうしていたい。
そして。私は知っていた。
猫はおしりを叩かれるのが好きなことを。
私はそっと、彼女の尻をぽんぽんと叩きはじめた。
——その瞬間。
彼女の表情が一変する。
いきなり牙を剥いて襲いくるプーちゃん。
困惑して、慰めようと、
さらに手を伸ばすと、
繰り出される強烈な猫パンチ。
全く手加減のない、
技の応酬であった。
(私はなんの危害も加えていない。
そう思っていた)
「何するの、痛かったよ!」
と訴える私を、
冷酷な眼で一瞥し、
プーちゃんは桜の木へ去っていった。
彼女はいつもそうだった。
まるで 山の天気のように 気分が変わる。
5秒先の彼女の気持ちがわからない。
家族はいつしか、プーちゃんを 「DV猫」 と呼ぶようになった。
…しかし、私たちは知らなかったのだ。
「猫はおしりを叩かれるのが好き」 というのは
全ての猫に当てはまるわけではない ということを。
去勢・避妊をした猫にとって、
おしりの叩きは ストレス以外の何物でもない らしい。
つまり、プーちゃんはこう思っていたのだろう。
「また叩いたな! 許さない!!」
今となっては、もう謝ることもできない。
プーちゃんは父と共に
信州の家へ引っ越して間もなく、
自らの意志で姿を消してしまった。
今でも時々思う。
「もし、もう一度会えたら、
おしりを叩かずに、愛を伝えられるのに」
【結論】
寿司屋の猫も、プーちゃんも、
「愛と暴力は紙一重」
ということを教えてくれたのだった。