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「モア・イズ・モア」 マキシマリズムでインテリアデザインに遊び心が復活

2023-08-28 21:54:02 | 高級ブランド(LVMH、エルメス、グッチ、他)、ファッション


 バーレスク界の女王ディタ・フォンティーズ氏の図書室/Trevor Tondro/Otto Archive/Living to the Max/Gestalten 2023

 

(CNN) 100年以上前にモダニズムが誕生して以来、ドイツの建築家ルートビヒ・ミース・ファン・デル・ローエが唱えた有名な言葉「レス・イズ・モア(少ない方が豊か)」の精神は洗練の代名詞とされてきた。

こうした精神が最もはっきり表れていたのが自宅だ。北欧系やジャポネスクなインテリアは(新型コロナウイルスの世界的な流行のさ中に整理整頓術を浸透させた「片付けコンサルタント」近藤麻理恵氏のにわかブームは言うまでもなく)、過剰さやデカダンスよりも、簡素さや抑制、目的を重視する価値観を反映していた。

だがここ数年、鮮やかな色合いや柄、質感のコントラストに走るデザイナーや自宅所有者が増えている。ミニマリズムに逆行し、大胆で表現豊かで華美なマキシマリズムはいろいろな意味で、現代インテリアの主流であるまっすぐな線と落ち着いた色調へのアンチテーゼと言える。

その根底にあるのは真逆の考え方、すなわち「モア・イズ・モア(過剰こそ豊か)」だ。

マキシマリズムという用語は近代ミニマリズムの反語として生まれたが、ルーツをたどれば17~18世紀の装飾様式にさかのぼる。ちょうど欧州でバロック様式やロココ様式が花開いていた時代だ。過剰を良しとする美意識はしばしば膨大な富と結びつく。ルイ14世の豪勢なベルサイユ宮殿がいい例だ。マキシマリズムはビクトリア朝時代に盛り返し、その後はアールヌーボーやポストモダニズムといった流行とも絡みあい、流行り廃りを繰り返してきた。

 

おそらくはソーシャルメディアの台頭と、景気後退期の倹約ムードへの反動が引き金となって、マキシマリズムが再び盛り上がっているようだ。

マキシマリズムをたたえた新刊「Living to the Max: Opulent Homes & Maximalist Interiors」は、個人宅を中心に(一部ブティックホテルもあり)約30の事例を取り上げ、その背後にある物語や影響、制作行程を紹介している。著名ファッションデザイナーのロジータ・ミッソーニ氏がミラノに所有する豪華マンションから、バーレスク界の女王ディタ・フォンティーズ氏のゴージャスでドラマチックなハリウッドの自宅にいたるまで、マキシマリズムはしばしば既存のルールに縛られない。華々しい本のタイトルも示すように、住人の際立った個性や折衷主義がマキシマリズムを形成していると言える。

自己表現としてのインテリアデザイン

インテリアデザイナーのマシュー・ウィリアムソン氏がマヨルカ島に所有する邸宅がいい例だ。パステルカラーと花柄プリントがあふれ、シャンデリア、金縁の鏡、ムーア式のモザイクの壁に囲まれた家からは、住人がデザインを思いっきり楽しんでいることがうかがえる。

 

マシュー・ウィリアムソン氏がマヨルカ島に所有する邸宅/Matthew Williamson/Living to the Max/Gestalten 2023
マシュー・ウィリアムソン氏がマヨルカ島に所有する邸宅/Matthew Williamson/Living to the Max/Gestalten 2023

「基本的に、自分はずっとマキシマリストだった」とウィリアムソン氏はメールでの取材で答えた。「以前から柄ものや緑青、変わった質感や色、物語性のあるものにひかれていた。結局のところ、家は自分の個性や好みを反映するもの、あるいは反映しうるものだ」

本にはジュエリーデザイナーのソランジュ・アザグリーパートリッジ氏が英国のサマーセットに所有するコテージも登場する。同氏にとってマキシマリズムとは、ミニマリズムでは成し得ない自己表現の手段だ。

「ミニマリズムの場合、型にはまったものの見方や生き方に従わなくてはならない」とアザグリーパートリッジ氏。「視点としては力強くて芯が通っているが、カオスや逸脱は許されない。自分自身を一番自由に表現できる場所が自宅なのでは。だからこそ、マキシマリズムはうまく機能し、この先も重要視されるだろう」

ジュエリーデザイナーのソランジュ・アザグリーパートリッジ氏が所有するコテージ/Nick Rochowski/Living to the Max/Gestalten 2023
 ジュエリーデザイナーのソランジュ・アザグリーパートリッジ氏が所有するコテージ/
 Nick Rochowski/Living to the Max/Gestalten 2023

本に登場するデザイナーの多くは、喜んでマキシマリズムの流れに乗り、自らの作品を呼応させている。

だが中にはエジンバラを拠点に活動するデザイナーのサム・バックリー氏のように、その精神は受け入れながらも、マキシマリズムというレッテルを嫌う人もいる。

「自分がデザインした作品の中には、マキシマリズムと結びつく感性と通じるものもあるかもしれないが、自分では今まで意識したことはなかった」とバックリー氏はCNNに語った。

「多種多様なものから着想を得ているので、ラディカリズムを除けば、自分の作品をどれかひとつのスタイルでひとくくりにするのは難しいだろう」

面白さと遊び心にあふれ、洗練されたバックリー氏のエジンバラの自宅は、様々な時代の家具と奇妙なオブジェが、膨大なアートコレクションと混在している。それとは対照的に、同氏が手がけたゲームデザイナーのミス・キャリー氏のマンション(同じく本の中で紹介されている)は、1960年代の米国の「スーパーグラフィックス」に着想を得ている。

スタイルは異なるが、どちらもバックリー氏の大胆な色使いが特徴的だ。

「個人的にはミニマリズムの配慮されたシンプルさの方が好き。ただ残念なのは色使いであることが多い」とバックリー氏。

「ミニマリズムを縛り付けている、ありきたりの退屈なグレー系やベージュ系に対する強力な解毒剤がマキシマリズムだと思う」

「色を上手く使ったミニマリズムがあってもいいのではないか。自分が推し進めているのもまさにそこだ」 (バックリー氏)

 

 

CNN記事  2023.08.28より引用

 

 

 

米巨艦ブランドの船出、不安隠せぬ市場(NY特急便)

2023-08-11 13:27:16 | 高級ブランド(LVMH、エルメス、グッチ、他)、ファッション


カプリ傘下の「マイケル・コース」は米国で親しみ深いブランドだ=ロイター

 

10日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比52ドル79セント高の3万5176ドル15セントで終えた。7月の米消費者物価が上昇率が市場予想を下回ったことで米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げへの警戒が和らいだ。

個別株では、「COACH(コーチ)」などを傘下に持つブランド大手のタペストリーが、「ジミー・チュウ」「マイケル・コース」などで知られる同業のカプリの買収発表が話題になった。

高級ブランドは米企業が存在感を示せていない分野の1つだ。世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンはブルガリなど著名ブランドを次々に傘下に収めてきた。ポートフォリオの安定性を高め、思い切った投資による成長を続けている。

スイスのリシュモンや仏ケリングもLVMHにならって買収合戦に参入。著名ブランドの多くは欧州勢傘下に入った。最も象徴的な米ブランド、ティファニーも21年にLVMHに買収された。

タペストリーとカプリは米国内のショッピングモールなどに多数出店している。米国人に親しみ深いブランドだけに、待望の米国連合が誕生するとの期待が広がった。

ジョアン・クレヴォイセラ最高経営責任者(CEO)は10日朝の買収説明会で「世界的なラグジュアリーブランドを作り上げる」と抱負を語ると、アナリストから「Congrats(おめでとう)」との言葉が相次いだ。

だが場が開けると一転、市場の反応は冷たかった。カプリ株は高値での買収期待から前日比56%上昇したが、タペストリー株は売られ続け16%安で引けた。

理由の1つは、85億ドル(約1兆2000億円)という買収コストへの懸念だ。「統合メリットは本社部門の費用削減などが主だ」(BMOキャピタル・マーケッツ)と、大きな買収効果を期待できるという見方は少ない。両社を合わせても売上高は120億ドル程度と小粒で、800億ドルを超えるLVMHに太刀打ちが難しい。

それ以上に懸念されているのが、長く続いたインフレの影響で米国の高級品の販売動向が明らかに悪化している現実だ。LVMHは4〜6月期に世界の売上高が17%増加したものの、米国は1%減。リシュモンやイタリアのプラダの直近の決算でも、米国だけが販売減となっている。

売上高の米州の構成比はタペストリーが65%、カプリが56%。LVMHの24%(米国のみ)、リシュモンの21%と比べてはるかに大きく、足元の環境では統合効果よりも両者の事業環境にどうしても目が行く。

バンク・オブ・アメリカの7月のクレジットカード利用データは、年収が12万5000ドル以下の低中所得層は前年比2〜3%が伸びているが、高所得層ではほとんど増えていない。

説明会では「北米よりも、アジアや欧州での成長戦略を説明してほしい」(ゴールドマンサックス)との質問も出た。他の市場で収益を補完できる欧州勢と異なり、米市場に依存する米国連合の先行きに投資家は不安を隠せないでいる。

来週からはウォルマートなど大手小売企業の決算が本格化する。米経済の屋台骨となる消費動向に市場関係者の視線が集まっている。

(ニューヨーク=朝田賢治)

 

日経記事 2023.08.11より引用

 


COACH親会社、ジミー・チュウ買収 高級ブランド再編

2023-08-11 10:17:45 | 高級ブランド(LVMH、エルメス、グッチ、他)、ファッション


タペストリーとカプリ・ホールディングスは約85億ドルの買収で合意した=AP

 

【ニューヨーク=弓真名】高級ブランド「COACH(コーチ)」や「ケイト・スペード」を傘下にもつ米タペストリーは10日、英高級ブランド「ジミー・チュウ」などを展開する米カプリ・ホールディングスを買収すると発表した。買収額は約85億ドル(約1兆2300億円)。経営資源や顧客基盤を集約し、再編が進む高級ブランド市場の競争激化に備える。

タペストリーとカプリが合意した。タペストリーはカプリのすべての発行済み株式を現金で買い取る。規制当局とカプリの株主の承認を経て、2024年に手続きを完了する予定だという。

統合後の売上高は年間120億ドルにおよぶ見通し。タペストリー傘下のコーチやケイト・スペードなどの高級バッグに加え、カプリのジミー・チュウや「ヴェルサーチェ」「マイケル・コース」といった服飾から靴、雑貨まで扱うブランドが加わる。互いの顧客ネットワークを生かし、全体の販売底上げを狙う。

タペストリーのジョアン・クレボイセラ最高経営責任者(CEO)は10日、米CNBCに対し、多様な顧客層を抱えるカプリの買収は相乗効果が大きいと強調した。マイケル・コースは若年層に人気がある一方、ヴェルサーチェやジミー・チュウは富裕層向けの販売が多い。

グッチやイヴ・サンローランなどの高級ブランドを持つ仏ケリングも7月末、イタリアの高級服メーカー、ヴァレンティノの株式30%を現金17億ユーロで購入すると発表したばかりだ。

世界のラグジュアリー産業をめぐっては、ガリバーであるフランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを筆頭に、M&A(合併・買収)をテコに幅広いブランドを傘下に収めて業容を広げるケースが相次ぐ。タペストリーのカプリ買収もこうした業界内の変化に対応する動きといえる。

 

 

日経記事 2023.08.11より引用

 


ラグジュアリー、巨大企業が席巻 歴史・文化を武器に LVMH、ケリングなど

2023-07-31 01:48:18 | 高級ブランド(LVMH、エルメス、グッチ、他)、ファッション

 

6月20日夜、セーヌ川にかかるパリ最古の橋ポン・ヌフが黄金のダミエ・パターン(市松模様)に彩られた。

今年からルイ・ヴィトンのメンズ・クリエーティブ・ディレクターに米国の音楽シーンを代表するファレル・ウィリアムス氏が就任した。初舞台となったこの日のショーでは、ダミエと迷彩柄を融合した「ダモフラージュ」など伝統とポップさを融合した斬新なコレクションを披露した。

「人生の特別な瞬間を彩り夢を与える。それがラグジュアリー産業だ」。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン社長のノルベール・ルレ氏は、成長を続ける理由をそう説明する。

ラグジュアリー産業のガリバー企業、フランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは2023年に時価総額が一時5000億ドルを突破した。直近もトヨタ自動車の約2倍で、欧州企業では首位、先進各国でも10位前後に位置する。

同産業が台頭したのは1990年代だ。もともと家族経営的な性格が強い企業が合併し1987年にLVMHが誕生。現在も会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるベルナール・アルノー氏が89年にLVMHの経営権を握ると、M&A(合併・買収)を駆使し幅広いブランドを傘下に収めた。

同社のブランド数はクリスチャン・ディオールやフェンディ、ケンゾー、ブルガリなど75に上り、世界81カ国に進出する。ファッションや宝飾、化粧品、酒、ホテルなど幅広い。21年には米宝飾品大手ティファニーを買収した。


黄金のダミエ・パターンに彩られた会場でのフィナーレ

同じくフランスが本拠地のケリングはグッチやサンローランなどを傘下に持つ。スイスのリシュモンはカルティエやヴァンクリーフ&アーペルなど宝飾、時計に強い。コングロマリットは素材調達や製造ノウハウ、流通網などをブランド間で共有できる利点がある。

躍進の背景にはグローバル化の進展もある。もともとの顧客は欧州の上流階級だった。1970〜90年代には経済成長や円高で日本人が積極的に購入。2000年代以降はその購買層が香港や中国本土に広がった。

ラグジュアリー産業で日本の存在感は薄い。デロイトのランキングでは資生堂が世界15位と唯一トップ20圏内に入る。同社は15年以降、高価格帯の「プレステージ」ブランドに注力し、売り上げ構成比は22年に60%と16年の40%から伸びた。

大阪大のピエールイヴ・ドンゼ教授は「日本企業はものづくりは得意だが夢づくりが苦手だ」と分析する。最新の技術や数字で表現することは得意だが、ストーリーやコンセプトづくりに弱みがある。

それでも海外は日本企業に熱い視線を送る。グッチは昨年から、元禄元年(1688年)に創業した西陣織の老舗、細尾(京都市)の素材を生かしたハンドバッグの販売を始めた。

西陣織は金箔や銀箔を生地に織り込み、独特の光沢を出す唯一無二の技術がある。同社は10年にディオールの店舗の内装材へ採用されたことを契機に、各国のラグジュアリー企業と協業する。

今年2月にはミラノにショールームを開設した。「日本の工芸を世界に広めたい」と細尾真孝社長は意欲を燃やす。LVMHのグループ会社も今春、デニム製造の地場企業、クロキ(岡山県井原市)と提携した。

「日本酒のラグジュアリーブランドをつくる」と意気込むのがスタートアップClearを設立した生駒龍史社長だ。高品質の日本酒造りを全国の酒蔵に委託し、「SAKE HUNDRED」ブランドで販売する。

今年4月にロンドンで開いた「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2023」でゴールドメダルに輝くなど高い評価を受ける。

エルメスのパリ本社で副社長などを歴任した斎藤峰明氏も社外取締役を務める。「いま世界が求めているものはサスティナビリティーや健康、精神性など、日本の伝統産業が大切にしてきたものだ」と期待を込める。

日本は世界一の老舗企業大国でもある。歴史と文化を世界に売り込む伸びしろは大きい。

<Review 記者から>富裕層の象徴、問われる社会調和

「お金は富裕層から取るべきだ」。今年4月、フランスの年金改革に反対するデモ隊の一部がパリのLVMH本社に入り込んだ。高級ブランドを数多く展開することから金持ちの象徴として標的になった。

 

実際に米誌フォーブスの2023年版の世界長者番付では、米起業家のイーロン・マスク氏が首位から陥落し、LVMH会長のベルナール・アルノー氏が世界一の富豪になった。

「我々はフランスで最も人を雇う民間企業になった」「全世界で50億ユーロの法人税を納め、その半分はフランスである」。22年の年次報告書で、アルノー氏は事業報告に先んじてLVMHの社会貢献を強調した。社会的なあつれきの回避に腐心する。

欧州経済にとってラグジュアリー産業は成長のけん引役だ。例えば、ハンドバッグ類の輸出額をみると、フランスは30年間で15倍、イタリアは11倍に増えた。輸出額全体がそれぞれ3倍、4倍にとどまる中、高い付加価値を生み出している。

経済産業省の報告書はラグジュアリー産業の未来について、地域の伝統や個人の創造性とともに社会貢献的な利他性が重要だと指摘した。

利他性とは人や自然と調和した事業展開を意味する。対話を重ねて社会とのバランスをどう描くかは、ラグジュアリー産業の持続可能性を高めるために欠かせない。

(マクロ経済エディター 松尾洋平、パリ=吉田知弘)

ラグジュアリー産業

 高級な衣服や服飾小物、宝飾品、時計、香水、化粧品を手掛ける企業群。ベイン・アンド・カンパニーの市場推計は高級車や旅行、プライベートジェット、ヨットなども対象とする。大阪大のドンゼ教授は「市場セグメントが最高位であることにより定義される」とし、あらゆる産業にラグジュアリーな製品やサービスが存在すると指摘する。マーケティング手法も他の商品とは異なる。パリHECビジネススクールのカプフェレ名誉教授らがまとめた『ラグジュアリー戦略』によると「顧客の要望を取り持つな」「なかなか買えないようにしろ」「需要を増やすために価格を上げろ」といった発想による差別化が付加価値の増大につながるという。
 
 
日系記事 2023.07.30より引用