プーチン氏は核の脅しを繰り返している(19日、モスクワ)=スプートニク・AP
ウクライナ軍は19日、米国製の長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃に踏み切った。
ウクライナ東部で劣勢にある戦局を挽回し、1月に発足する米国のトランプ次期政権下で想定される停戦交渉に優位な立場で臨む狙いがある。ロシアは核兵器を使った脅しを強める構えで、ウクライナを巡る米欧との神経戦がさらに激しくなる見通しだ。
今回の攻撃に使われたのは、米国製の地対地ミサイル「ATACMS」で、長距離型の最大射程は約300キロメートルとされる。バイデン米政権が使用の容認に踏み切ったことを受け、ロシアの侵略開始1000日の節目に当たる19日にロシア領内への攻撃に初めて投入された。
ロイター通信が報じた米当局者の話によると、ウクライナがロシア西部ブリャンスク州の小都市カラチェフ近郊の軍事施設に向けて発射した8発のミサイルのうち、ロシアが迎撃できたのは2発にとどまった。標的となった兵器庫などが破壊されたもようだ。
今回の攻撃について、軍事専門家の間では「短期的には戦況に大きな影響をもたらす」(オーストリア陸軍のマルクス・ライスナー士官訓練研究所長)との見方が多い。
ロシア軍は今後、攻撃を避けるためにATACMSの射程内には弾薬や兵器、爆撃機を置きづらくなる。弾薬や兵員などの補給ラインが大きく延びることになり、ウクライナ東部などの前線での戦力低下は避けられない。
ウクライナが一部を支配下に置くロシア西部クルスク州の防衛にも追い風になる。ゼレンスキー政権は将来の停戦交渉のカードになるとみて、8月からの越境侵攻で得た同州の支配地域の保持を目指している。
ロシア軍は1万人規模の北朝鮮兵を含む約5万人の兵員を同州に集結させ、月内にも領土奪回作戦を始める構えをみせている。ただ、ATACMSで攻撃されれば北朝鮮兵らも補給線が断たれ、弾薬不足に陥るリスクが高まる。
一方で中長期的には、ATACMSの投入には戦局を一変させる効果が乏しいとの見方もある。ウクライナの現時点の保有数は明らかになっていないが、米国が追加供与できるミサイル数にも限界がある。
ウクライナは、英国とフランスが共同開発した長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」「スカルプ」のロシア領への使用解禁にも期待をかける。英仏の政府内では容認論もあるが、ロシアとの対立の激化を懸念する声もある。使用には技術提供している米国の同意も必要になる。
ロシアのプーチン大統領は19日、「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)を改定し、核攻撃に踏み切る軍事的脅威の条件を緩和した。ラブロフ外相も19日、訪問先のリオデジャネイロで今回の攻撃について「ロシアに対する西側諸国の戦争の質的な新しい局面とみなし、それに応じて対応する」と強調した。
核の脅しを繰り返し、米国によるウクライナへのATACMSの追加供与や英仏の長射程兵器の使用容認の動きを封じようとしているようだ。
プーチン氏はかねて米国がATACMSのロシア領への使用を容認すればロシアと直接戦うことにつながると警告してきた。今回、バイデン政権の容認の決断を阻めなかったことに危機感を強めているとみられ、さらに核の脅しのレベルを高める可能性がある。
ロシアがソ連崩壊後、初めてとなる核実験に踏みきる可能性も否定できない。核関連の国際機関に勤務していたロシアの元外交官は「核実験は抑止力を上げるカードになるうえ、核兵器の技術を維持するために必要性が高まっている事情もある」と語る。
(ウィーン支局長 田中孝幸)
別の視点
ロシアは、脅しをかけているにも関わらずNATO諸国の行動を阻止できていないことに、苛立ちを感じているのだろう。
ただ、核兵器使用が懸念されるのは、これまでは、2022年秋など、ロシア軍が劣勢になり、占領した領土をウクライナに奪還される局面だった。
今回、戦況としてはロシアが優勢で、東部・南部ではウクライナが後退を繰り返している。
そうした局面で核兵器使用の懸念が高まるのは新しい状況だが、それだけロシア領内への攻撃を阻止できないことへの反発が強いのだろう。
ただし、まずは核兵器使用の前に、ロシアが従来以上のどのような攻撃をしてくるかが懸念される。それにはNATO諸国内での破壊工作の強化も含まれる。
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2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2024.11.20より引用
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度胸のない、ミジンコ・プーチンの脅しには、誰も乗りません。