記者会見するカナダのトルドー首相=ロイター
【ニューヨーク=三島大地】
カナダのトルドー首相は1日、記者会見し米国からの輸入品に25%の報復関税を上乗せする方針を明らかにした。同日、トランプ米大統領がカナダに最大25%の追加関税を課す大統領令に署名したことに対応する。
トルドー氏は記者会見で「我々はカナダのために強く立ち向かう」と訴えた。第1弾として米東部時間4日から、300億カナダドル(約3兆円)に相当する米国からの輸入品に25%の関税をかける。
その21日後に1250億ドル相当の米国製品を25%関税の対象に加える。トルドー氏は「これによりカナダ企業やサプライチェーン(供給網)が代替品を探すことができる」と強調した。
カナダと米国は1988年に自由貿易協定(FTA)を結び、その後も北米自由貿易協定(NAFTA)などを通じて米国と貿易関係を深めてきた。NAFTAの発展版である米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は事実上凍結される。
カナダにとって米国は最大の貿易相手国で、23年のカナダの輸出額の8割、輸入額の5割を米国が占める。
輸出額の多くをエネルギー関連が占める。2023年には1319億ドル(約20兆円)に相当する石油や天然ガスを米国に輸出した。米国から自動車や機械類を輸入している。
カナダ銀行(中央銀行)は両国が25%の関税をかけ合った場合、初年度にカナダの国内総生産(GDP)を2.5%押し下げると試算する。
カナダ商工会議所のキャンディス・レイン最高経営責任者(CEO)は声明で「この(米国の)決定は国境の両側で企業と労働者に悪影響を及ぼす点で、まったく理にかなっていない」と述べた。
米国は、カナダとの国境から不法移民や合成麻薬フェンタニルが流入していることを関税の理由に挙げた。
トルドー氏は「米国へ流入するフェンタニルや不法入国者のうち、カナダが占めるのは1%未満だ」と反論した。カナダ政府はトランプ氏の懸念に対応する形で国境の監視強化に13億カナダドルを投じる計画を公表している。
カナダ国内では米国の関税に強い態度で臨むべきだとの声が強まっている。
ブリティッシュコロンビア州のイービー州首相は1日、米国による関税について「友人である国に対する貿易戦争の宣戦布告だ」と断じた。
州内の酒類販売業者に対して、共和党地盤の州からの酒類の輸入を停止するよう指示したと明らかにした。
辞意を表明したトルドー首相の後継候補として有力視されるマーク・カーニー元イングランド銀行(中央銀行)総裁は声明で「米国による関税は貿易協定の明確な違反であり、我々の歴史上、最も厳しい貿易・経済的対応が必要になる」と強調した。
同じく次期首相の有力候補とされるフリーランド前副首相も、トランプ氏の側近のイーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラの電気自動車(EV)に100%の報復関税を課す考えを明らかにしている。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
カナダからの報復も既定路線。アメリカからのビールやワイン、オレンジジュース、家電、木材などが対象になるとのことですが、これがどれだけ拡大するか、NAFTA以降、USMCAとなった今も米加墨の経済は一体化しているので、貿易戦争が米加の物価をどれだけ押し上げることになるのか。
メキシコも報復が既定路線。ただ、シェインバウム大統領にとってメキシコのドラックカルテルの撲滅は自分にとっても喫緊の課題なので、「対立は望んでいない」という発言に。
このあたりはアメリカとの協力体制づくりとなるのかと思います。
日経記事2025.2.2より引用
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー