スターマー氏㊨はゼレンスキー氏に「英国中が支援している」と伝えた(1日、ロンドンの首相官邸)=AP
【ロンドン=江渕智弘】
欧州首脳は2日、ウクライナ支援についてゼレンスキー大統領を交えロンドンで協議する。同氏とトランプ米大統領の会談の決裂で、ウクライナは最大の後ろ盾である米国を失う危機に立たされた。
欧州として米国とウクライナの関係修復を探る。欧州の防衛力の増強も議論する。
スターマー英首相は同日、首脳会議に先立って英BBCに出演し、英仏などがウクライナと協力して停戦計画を立て、そのうえで米国と協議することになったと述べた。
ゼレンスキー氏とトランプ氏、マクロン氏と話して合意したという。
スターマー氏は1日、訪英したゼレンスキー氏と会談した。
「英国中が全面的に支援している」と伝えた。ウクライナの防衛能力の強化に向けて22億6000万ポンド(約4280億円)を融資する協定も締結した。ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)で「温かく有意義な会談だった」と述べ謝意を示した。
ロンドンで開く首脳会議には10カ国以上の首脳が参加する。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長や北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長も出席する。
対ロシア制裁の強化やウクライナ停戦後のロシアによる再侵略の抑止策、欧州の安全保障などが議題となる。
ゼレンスキー氏は2月28日、米ホワイトハウスで会談したトランプ氏やバンス副大統領と激しい口論になり、資源権益に関する協定への署名を見送った。
激怒したトランプ氏はウクライナが求める停戦後の安全の保証はおろか、軍事支援の打ち切りも示唆した。
欧州は停戦後のウクライナに英仏中心の平和維持部隊を派遣することを検討している。ロシアの再侵略を防ぐためにトランプ米政権の支援を求めていたが、目算が狂った。
「私たちは分岐点にいる」(スターマー氏)との危機感が強まっており、首脳会議では米国のつなぎ留めを急ぐ。
スターマー氏は1日のゼレンスキー氏との会談後、トランプ氏、フランスのマクロン大統領とそれぞれ電話で話した。マクロン氏もトランプ、ゼレンスキー両氏とそれぞれ電話協議するなど事態の打開に動いた。
ロイター通信によると、マクロン氏はトランプ氏に対し、ゼレンスキー氏には資源権益を巡る協定を含めて「対話に戻る意思」があると伝えたという。トランプ氏の反応は明かさなかった。
首脳らの一連の動きは米国抜きではロシアの軍事的脅威に対応できない欧州の現実を物語る。冷戦終結後、欧州は国防費を削った。ロシアが2008年にジョージアに侵攻し、14年にウクライナ領クリミアを一方的に併合しても軍備の強化にかじを切らなかった。
危機感が高まったのは22年のウクライナ全面侵略からだ。対中国に軸足を置くトランプ政権はウクライナを含む欧州安保への関与に消極的で、欧州は対応を迫られる。
スターマー氏は2月、英国の国内総生産(GDP)に占める国防費の割合を現在の2.3%から27年度に2.5%、将来は3%に高めると表明した。2日の首脳会議でも各国に増額を促す。
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