トランプ氏は選挙戦と並行して複数の刑事裁判を抱える=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
米連邦地裁は2日、2020年大統領選で敗れた結果を覆そうと支持者を扇動した罪で起訴されたトランプ前大統領の初公判について、予定していた3月4日から延期すると決めた。米主要メディアが2日に報じた。新たな期日は未定だ。
背景には前大統領が主張する大統領任期中の免責特権を巡る司法判断が出ていないことがある。
前大統領の陣営は、起訴の対象となった行為は選挙不正を防ぐ公務の範囲内だったとして免責が適用されると異議を申し立てた。初公判の先送りを狙っていた。
当初、初公判翌日の3月5日には共和党の大統領候補指名争いで各州予備選が集中する「スーパーチューズデー」が控えていた。
再選を狙う前大統領は選挙戦への影響を懸念し、4つの事件で起訴された自身の裁判について「選挙後に実施すべきだ。選挙妨害だ」と主張していた。
連邦地裁は免責特権を巡る訴えを退けたのに対し、前大統領側は上訴した。1月9日に口頭弁論があった連邦控訴裁はまだ判断しておらず、最終的には連邦最高裁に持ち込まれる公算が大きい。
検察当局は前大統領が選挙結果の確定手続きを妨害する目的で支持者を扇動し、議会占拠事件につながったと断定する。捜査を指揮するジャック・スミス特別検察官は「米国の民主主義への前代未聞の攻撃だった」と指弾した。
米憲法には大統領の免責特権に関する明確な記述はない。最高裁は過去に大統領の在任中の公務に関連する行為に限り、民事訴訟については免責を認める判断を下している。
司法省は内部指針で現職大統領は原則として起訴しないとしている。
刑事訴追を受けた大統領経験者はトランプ前大統領が初めてで、今回の判断が前例になる可能性がある。控訴裁が判断を出す時期は不明だが、前大統領側か司法省側のいずれかが最高裁に上訴するとの見方が出ている。