https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA071M20X00C24A4000000/
・岸田首相「米国は独りでない」強く関わる同盟国へ変革
・国際秩序揺るがす事態で「不確実な米国」リスクに備え
・日本は5〜10年後見据え、米外交のアジア関与強化狙う
世界の自由や民主主義を守る米国の責任を日本が分かち合う――。
訪米中の岸田文雄首相が訴えたのは中国やロシアに対峙する米国を日本が支えるとの決意だった。米外交のアジア離れを防ぐため安全保障戦略の転換を進めてきた日本の役割は重くなる。
「米国は独りではない」。首相は11日、米議会の上下両院合同会議で演説した。
「控えめな同盟国」から「外の世界に目を向け、強く関わる同盟国」へ変革したと説いた。
日本の首相による米議会演説は2015年の安倍晋三氏以来だ。議場で限定的な集団的自衛権の行使を認める安保法制を約束し、国内に動揺が走った。
中国の軍事力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発を背景に日本に自立的な防衛を求める米国の意向があった。
それから9年。日本の外交・安保は大転換した。22年末、新たな安保戦略で防衛費を国内総生産(GDP)比2%相当に増やし、自衛隊に相手国への反撃能力を持たせると決定した。
自衛隊が「盾」、在日米軍が「矛」との構図は変わる。
24年には共同開発した防衛装備品の第三国への輸出解禁や、経済安全保障上の機密情報を扱うための資格制度も決めた。10日の日米首脳会談で自衛隊と在日米軍を統合運用する指揮統制の仕組みを申し合わせた。
米英豪の安保枠組み「AUKUS(オーカス)」との協力検討も共同声明に盛り込んだ。日米を軸にフィリピン、韓国、オーストラリアといった同志国のつながりが網の目として地域を覆う。
法の支配に基づく国際秩序に関わる覚悟を様々な形で示した。
首脳会談後の共同記者会見でバイデン大統領は「同盟発足以来、最も重要なアップグレードだ」と述べた。
ウクライナや中東で国際秩序を揺るがす事態が相次ぎ、米国は対中国を含めた3正面作戦を余儀なくされた。
11月には米大統領選を控える。選挙戦略や結果次第で米外交が揺れる「不確実な米国」リスクに世界が備える。
トランプ前大統領が返り咲けば、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の増額を求めたり、ウクライナ支援を縮小したりする懸念がある。
日本の備えは日米関係に既成事実を積み重ねて「トランプ耐性」を高めることだ。選挙結果にかかわらず、5〜10年後、その先を見据えて米外交のアジアへの関わりを強め、後戻りさせない効果を狙う。
米国の内向き志向は一過性のトランプ現象ではない。13年に「もはや世界の警察官ではない」と宣言したのはオバマ政権だ。
「米国民が血を流しカネを出して、他国の平和を守る必要があるのか」。米世論の底流には常にこんな疑問が横たわる。
東アジアの軍事バランスは中国が突出する。中国の人民解放軍の艦艇は720隻(232万トン)と自衛隊の138隻(52万トン)、横須賀を拠点とする米第7艦隊の30隻(44万トン)を大きく上回る。米国の揺らぎは地域の安定を危うくする。
日本の動きを米国や中国はどう受け止めてきたのか。
米国のエマニュエル駐日大使は「日本の変化は私たちがやるべきことをやる原動力となる」と評する。米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ上級副所長は「日本が中核となってアジアでの同盟システムのネットワーク化が進む」と歓迎する。
首脳会談と同じ10日。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾の最大野党、国民党の馬英九前総統と北京で会談した。米国が介在しない日中韓首脳会談の5月開催をめざす動きもくすぶる。
冷戦時代のソ連と違うのは中国を無視して世界経済が成り立たないという事実だ。
日米欧は中国依存を軽減しながら、うまく付き合う戦略をとるしかない。そのことを誰よりも熟知しているのは中国だ。
新時代に入る日米同盟を基軸に日本は抑止力を高める。それを対話につなげる努力が欠かせない。
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日経記事2024.04.12より引用