17日、モスクワを訪問したイランのペゼシュキアン大統領(中央)=AP
【ドバイ=福冨隼太郎】
イランのペゼシュキアン大統領は17日、ロシアを訪問し同国のプーチン大統領と会談した。
両者は包括的戦略パートナーシップ条約に署名する予定。イランに強硬的なトランプ次期米大統領の就任を見据え、ウクライナ侵略で国際社会からの孤立を深めるロシアとの連携を強める。
ロシア大統領府によると、プーチン氏とペゼシュキアン氏は首脳会談で2国間の貿易や投資、物流や外交関係の拡大などについて議論する。パートナーシップ条約に署名後、声明を発表する予定だ。
ロシアのペスコフ大統領報道官は条約の内容について「ロシアとイランの多面的な関係に対応する」と説明した。
イランはトランプ米新政権に対して警戒を強めている。
トランプ氏は第1次政権でイランへの「最大限の圧力」を掲げ、イラン核合意からの一方的な離脱と対イラン制裁の再発動を実施。イランは原油輸出などを封じられ、経済的な困窮を深めている。
20日のトランプ氏の就任を前にロシアとの強固な関係を示し、米国や欧州などを揺さぶる狙いがありそうだ。
米欧からの制裁が続くなか、ロシアからの資源や物資などの供給拡大に対する期待もあるとみられる。
2022年2月のウクライナ侵略の開始から来月で丸3年を迎えるロシアは、国際的な孤立の回避に向けて対ロ制裁に加わっていない中国、インドや中東諸国などと関係を強めようとしている。
イランとの関係強化もこの一環だ。
今回両国が締結する条約では安全保障面での連携も強める可能性がある。ラブロフ外相は24年10月、条約は「防衛分野でより緊密に協力することを確認する内容となる」との見通しを示した。
欧米は両国が軍事連携を深めることに警戒感を示す。イランはロシアに対してドローン(無人機)などを供給しており、ウクライナへの侵略でもこうした兵器を使っている。
24年秋には米英などがイランがロシアに短距離弾道ミサイルを供与したと指摘。イランに対する追加制裁を決めた。イランとロシアの軍事協力が深まれば、欧米と両国との対立は一層激化する可能性がある。
いずれも欧米からの制裁を受けているイランとロシアは近年、連携を深めてきた。24年からはロシアや中国など有力新興国で構成するBRICSにイランが加盟。同年10月のロシア西部カザンでの首脳会議にペゼシュキアン氏が出席した。
合わせて実施された首脳会談でプーチン氏は「グローバルな課題に対するロシアとイランのアプローチは近い。公正な多極的世界秩序を確立する考えで一致している」と強調していた。
日経記事2025.1.17より引用