16日の東京株式市場で日経平均株価は5日続伸し、終値は3万8062円と前日比1336円(3.6%)の上昇だった。上げ幅は今年2番目の大きさだった。
前日の米国株相場の上昇に加え、外国為替市場で円相場が一時1ドル=149円台に下落したことが追い風となった。7月の過去最高値から8月5日の直近安値までの下げ幅からは「半値戻し」となり、相場の底入れ感が強まっている。株価チャート上では、急落局面で開いた「窓」も埋まり始めた。
前日比1336円上げ、終値で3万8062円をつけた日経平均株価(16日、東京都港区の外為どっとコム)
1日以来およそ2週間ぶりに3万8000円台を回復した。東京エレクトロンやアドバンテストといった値がさの半導体関連株が5〜7%の上昇となり指数をけん引したほか、円安を背景にトヨタ自動車やホンダなど輸出関連株への買いも目立った。
チャート上では底入れ感が見えてきた。日経平均は7月11日に史上最高値となる4万2224円を付け、その後の急落で8月5日に直近安値の3万1458円となった。最高値と直近安値の中間は3万6841円。16日はその水準を上回り、「半値戻し」になった。
「半値戻しは全値戻し」。下げ幅に対して半分程度まで戻るほどの反発力があれば、再び高値(全値)まで回復するという意味の相場格言だ。
全値は史上最高値であるだけに、その水準まで戻るほどの力強さがあるかは不透明だが、市場関係者の間では楽観的な見方が増えているのは確かなようだ。
「相場急落前のストーリーが戻ってきた」。農林中金全共連アセットマネジメントの中尾真也ファンドマネージャーは直近安値から足元までに2割上げた相場をこう評する。
米国景気の過度な減速不安の後退と日銀のタカ派の修正が背景だ。15日発表の7月の米小売売上高が市場予想を上回る堅調な内容だったことから、米経済の軟着陸(ソフトランディング)実現への期待が再び高まった。国内では前週に日銀の内田真一副総裁のハト派発言を受け、拙速な追加利上げが遠のいたとの見方も広がった。
チャートではもうひとつ、「窓埋め」も進んできた。7月11日の最高値から8月5日にかけての急落局面では、日足チャート上で5つの「窓」が開いていた。「窓」は、株価の急激な値動きにより前日のローソク足と当日のローソク足との間に生じる「すきま」だ。
16日の段階では、5つのうち下から2つ(8月1〜2日、2〜5日)の「窓」を埋めた。相場の反転による「窓埋め」はチャート分析上で下げ基調の一巡サインと受け取られることが多い。
この日の相場では、長期トレンドを示す200日移動平均線を1日以来およそ半月ぶりに上回ったことも話題となった。移動平均線は、過去の一定期間の株価を平均化したもので、相場の方向感を探る手掛かりとなる。
東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは「長期トレンドの指標となる200日線の水準を短期間で回復したことで、下落トレンドの開始が否定された」と指摘する。
もっとも、市場が楽観一辺倒の雰囲気に包まれたとは言い難い。ボラティリティー(相場変動率)の高い不安定な値動きを警戒する投資家は多く、株価回復の途上では損失を抱えた投資家による戻り売りも出やすいためだ。
みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは「年初からの累積売買代金でみると、3万8000〜4万2000円の価格帯での取引は3万8000円未満の取引の2倍以上に積み上がっている」と指摘し「3万8000円を超えると戻り待ちの売りが出やすく『往来相場』となりやすい」とみていた。
(河井優香)