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再び「1987A」

2017年01月28日 | Weblog
地球から16万光年彼方で一つの星が壮烈な死を遂げた。1987年2月24日南米チリのラスカンパナス天文台のイアン・シェルトンは、遥々地球に届いた爆発の光を捉えた。
世界中の天文学者を驚かせる超新星の発見である。その日シェルトンがデュポン社製の小さな望遠鏡を向けたのは大マゼラン群であった。地球からの距離およそ16万光年、我々の銀河系から一番近い大マゼラン、その基礎データを集めるための観測であった。2月24日何気なく撮影した一枚の写真、そこには実に383年振りの大事件が記録されていたという。小さな光の点を観測者は見逃さなかったのである。その年初めて発見されたということで「1987A」と名付けられた。爆発後最も明るくなった時は、太陽の2億倍もの明るさで輝いたといわれる。
壮絶な星の死である。全ての物質はこれらの星の死から生まれたものだ。宇宙には平均的な恒星といわれる、太陽質量の60倍のリゲルや大熊座の近接隣星など幾種類もの星が存在している。銀河系だけでも2000億個と云われ全宇宙では数知れない。人に一生があるように星にも「生と死」がある。星が誕生しつつある領域にオリオン星雲があげられる。「1987A」を最初に捉えたのは、実はチリの反対側の日本の地底1000米にある東大宇宙研究所、神岡地下観測所であった。この観測所の主役は望遠鏡ではなく大量の水である。直径及び深さ16米の円筒形の水槽に3000トンの水が貯えられている。その内側に埋め込まれた1000個の巨大な眼、かすかな光を捉える超高感度の光センサー。超新星の爆発はニュートリノ(素粒子)を大量に宇宙空間にまき散らす、ニュートリノは物質と殆ど反応しない爲地球を貫通して水槽に達する筈である。しかしこれだけ大量の水があるとニュートリノは水の粒子と反応する可能性がある。その時発生するかすかな光を直径50cmのセンサーが捉えるのだ。地下1000米の水槽の1000個の光センサーがニュートリノを待ち構えていた。1987Aから発せられたニュートリノは16万年もの間、宇宙空間を飛び続けて地球に到達し、地球を貫通して再び宇宙へ飛び去っていった。水槽の水の粒子にニュートリノが衝突した、かすかな光をセンサーが検出した。2月23日午後4時35分、10秒間にニュートリノが次々にキャッチされた。観測されたニュートリノの数は僅か11個、しかしそれは超新星の爆発のすざましさを充分に物語ってくれた。これは太陽が45億年かかって放出してきたエネルギーの1000倍の量を10秒間に放出したことになる算である。想像を超える、とてつもない爆発である。10秒間で燃え尽きる1000個の太陽、これが観測されたエネルギーだ。3000トンの水槽の水が想像を絶する素顔を捉えたことになる。仮に4.3光年彼方にあるアルファ・ケンタウルスで同じ爆発が起こったとしたら爆発から4年4ヶ月後、南半球の夜空は突然昼間のような明るさになり、やがて有害な宇宙線が降りそそぎ地球を保護していたオゾン層や磁気圏が破壊され地球は強い放射線に曝される。数十年後に衝撃波が押し寄せ大気そのものが剥ぎとられてしまう結果となる。もはや地球は生命の住める惑星たりえなくなるであろう。900年前、超新星の出現を記録した民族がいる、米ニュー・メキシコ州チヤコ・キャ二オンに住むインデイアンだ。その超新星が現れたのは、1054年の旧暦7月5日朝」、月は三日月でそのすぐ側に一際明るく輝いた筈である。インデイアン達が見た超新星の後には星雲があり、超新星爆発で飛び去った星の残骸があり、カニの甲羅に似ているため、カニ星雲と呼ばれている。爆発で飛び散ったガスは今でも秒速1000キロという速さで膨張し続けている。900年前のすざましい爆発の名残りである。この様に超新星爆発は」まさに星の死であり、星がそれまでに造りあげた物質を宇宙空間に蒔き散らしている。
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