松山ハワイを制す
最終日を首位で迎えたのはヘンリーで、松山は2打差の2位でティオフ。そして、一気にチャージをかけたのはヘンリーだった。
6番から3連続バーディ、9番ではイーグルを奪ったヘンリーは、通算24アンダーとスコアを伸ばし、一方の松山は通算19アンダーで後半へ折り返した。ハーフターンで5打差が付いていた展開を見たとき、松山の優勝を想像した人は多くはなかったかもしれない。しかし、本当の勝負は、むしろ、そこから先だった。
10番のバーディーで差を4打に縮めると、11番は松山バーディー、ヘンリーがボギーで一気に2打差へ縮まった。松山の15番のバーディーで2人は1打差へ。
そして72ホール目。松山は左サイドに立ち並ぶ背の高いパームツリーをぎりぎり交わすアグレッシブなドライバーショットでフェアウエイを捉えた。あのショットには勝利への勢いが漲っていた。
しかし、まだ追いかける身でありながら、そのとき松山は明るい笑みを覗かせた。そこに彼の心の余裕が感じられ、その笑顔は彼の勝利を予感させた。
技術で攻めながら、自分のゴルフを失わないよう心で態勢を固めていた松山。そんな「攻」と「守」の絶妙なコンビネーションは、あまりにも見事だった。
一方、ヘンリーのドライバーショットは右サイドのフェアウエイバンカーにつかまった。2オンした松山がバーディーパットを沈めると、3打目でピン2メートルを捉えたヘンリーはバーディーパットを沈められず、サドンデス・プレーオフへ突入。
ヘンリーの心の乱れが彼のゴルフを乱したことは誰の目にも明らかで、逆に言えば、ヘンリーを揺さぶりながら堂々バーディーを奪い、最後の最後に追いついた松山の追撃は誰の目から見ても素晴らしかった。
プレーオフ1ホール目の18番は、そんな72ホール目の再現のごとく、ヘンリーは再びドライバーでフェアウエイバンカーにつかまり、それを見た松山はドライバーを3番ウッドに持ち替え、フェアウエイからピン85センチに付け、大観衆を沸かせた。
もはや勝負あったという状況。フェアウエイに出した後の第3打をグリーンオーバーさせたヘンリーは、ボギーを喫して破れた。松山は難なくイーグルパットを沈め、勝利した。