雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

カシオペアの丘で

2007-06-26 | 小説
 重松清著『カシオペアの丘で ㊤・㊦』を読みました。そして、泣きました。

 これは、もぅ、重松清の集大成みたいなもんです。

「寂れてゆく故郷」「幼なじみ」「理不尽な犯罪」「家族の絆」そして、「末期ガン」・・・今までの重松作品を凝縮した、実に濃厚な作品です。(これで「十四歳の少年」とかも入ってたらビンゴだったわ)

 ゆるされたかったひとたち、そして、ゆるしたくて、ゆるせなくて、ずっと自分を責めつづけてきたひとたちが、カシオペアの丘に集まり、そして、去ってゆく。

『命』の儚さ、尊さ、哀れさ、愛おしさ、そして限界・・・罪を背負って生きてゆくことの苦しみ、その罪を憎みながら生きてゆくことの寂しさ、人を愛すること、そして家族を築き、守ることの重さ、切なさ、喜び。

 生きてゆくうえで抗い難い想いを、いつもの重松節によって、じっくりと浮き彫りださせていきます。

 過去も未来も現在も、とにかく全ての人生を、精一杯見つめ生きてゆかなければ、という想いを、己の薄っぺらな胸に刻み込みました。

 作中、こんなセリフがある。

「神さまって、人生を一度しかやらせてくれないかわりに、誰のどんな人生にも意味があるようにしてくれたのかもね」

 生きてゆくということは、そういうことなのであろう。
コメント
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