今回の芥川は≪切支丹物≫。ということでキリスト教云々といった話を集めたものであるが、別にそれを崇拝するわけでもなく、また小難しい教えを説いているわけでもなく、キリスト教に関わった諸話を芥川独自の抜群のストーリーテイリングで描いた物語の数々。
中には嫌がらせとしか思えない、文禄・慶長ごろの口語文体で綴られたものもあったが、内容的には非常に感慨深い。如何せん、まだ読みが浅いので真の意味は捉えていないが、例によってカル~く一読の感想などをしたためてみる。
【煙草と悪魔】
毒気を伴ったファンタジーとでも言おうか、転んでもタダでは起きない悪魔のエスプリの効いたオチがキマっている。この話を本の冒頭にもってこられたので、以降の作品にもわくわくしてきた。
【さまよえる猶太人】
そもそも聖書の言葉や話からして胡散臭い、というと語弊が生じるので「ファンタジック」とでもいっておこうか。ここに登場する「ユダヤ人」も相当ファンタジックだ。そもそもイエス・キリストの呪いって……。まあこれは、キリストのセリフを間違って解釈した一人のユダヤ人の話なのだと思う。
【奉教人の死】
これが所謂、文禄・慶長ごろの口語文体で書かれたものなのだが、正直読むのに苦労した。それでもストーリー的には素晴らしく、かなりのお涙頂戴ものであった。作者の意図はよく判らないが、苦労して読んだ甲斐はある。
【るしへる】
これも前述と同じく口語文体である。これに至っては「これ日本語じゃねーだろ」と感じてきた。試しに声に出して妻に読み聞かせたところ「なに言ってるのかさっぱりワカラン」と吐き棄てられた。うん、だって読んでるオレもなに言ってるかさっぱりだもの。
【きりしとほろ上人伝】
これがまた、桃山時代の談話調で書かれておりまして、初っ端から「遠い昔のことでおじゃる。」てなもんで、またいちいちに引っ掛かりながらもなんとか読破すれば、昔話の典型みたいなものであった。
【黒衣聖母】
ようやく現代文に戻ってきてホッとした。しかも少しミステリアスなタッチなので非常に興味深い。こういう話も芥川は本当に巧いのだ。
【神神の微笑】
かなり勢いづいて書かれているように思えた。それはなにかと「!」マークが多かったので。読んでて思わず微笑していた。
【報恩記】
三人の一人称からなる話。恩義と復讐を同時に果たす、その機知に敬服する。これは名作。
【おぎん】
短い話ながらその根底はものすごく深い。宗教における教えの矛盾を露呈している傑作。
【おしの】
一読、軽いキリスト批判とも読めるが、そういった俗気のあるものではなく、人それぞれ信ずるものの意地がある、といったところか。
【糸女覚え書】
タイトル通り、覚え書。ことここに至ってはもうなにがなにやらよく解からぬ故、特に記述せられる事柄なきに候。これにて御免。
総じて、かなり読みづらい一冊ではあったがストーリーはやはり秀逸で、昔からある切支丹の文献を完全に自分色に染めてしまう芥川の才覚を充分に愉しめる。ただ、芥川に興味が湧いている今だからこそ読めたのであって、昔だったら放り投げていただろうことは否めない。
中には嫌がらせとしか思えない、文禄・慶長ごろの口語文体で綴られたものもあったが、内容的には非常に感慨深い。如何せん、まだ読みが浅いので真の意味は捉えていないが、例によってカル~く一読の感想などをしたためてみる。
【煙草と悪魔】
毒気を伴ったファンタジーとでも言おうか、転んでもタダでは起きない悪魔のエスプリの効いたオチがキマっている。この話を本の冒頭にもってこられたので、以降の作品にもわくわくしてきた。
【さまよえる猶太人】
そもそも聖書の言葉や話からして胡散臭い、というと語弊が生じるので「ファンタジック」とでもいっておこうか。ここに登場する「ユダヤ人」も相当ファンタジックだ。そもそもイエス・キリストの呪いって……。まあこれは、キリストのセリフを間違って解釈した一人のユダヤ人の話なのだと思う。
【奉教人の死】
これが所謂、文禄・慶長ごろの口語文体で書かれたものなのだが、正直読むのに苦労した。それでもストーリー的には素晴らしく、かなりのお涙頂戴ものであった。作者の意図はよく判らないが、苦労して読んだ甲斐はある。
【るしへる】
これも前述と同じく口語文体である。これに至っては「これ日本語じゃねーだろ」と感じてきた。試しに声に出して妻に読み聞かせたところ「なに言ってるのかさっぱりワカラン」と吐き棄てられた。うん、だって読んでるオレもなに言ってるかさっぱりだもの。
【きりしとほろ上人伝】
これがまた、桃山時代の談話調で書かれておりまして、初っ端から「遠い昔のことでおじゃる。」てなもんで、またいちいちに引っ掛かりながらもなんとか読破すれば、昔話の典型みたいなものであった。
【黒衣聖母】
ようやく現代文に戻ってきてホッとした。しかも少しミステリアスなタッチなので非常に興味深い。こういう話も芥川は本当に巧いのだ。
【神神の微笑】
かなり勢いづいて書かれているように思えた。それはなにかと「!」マークが多かったので。読んでて思わず微笑していた。
【報恩記】
三人の一人称からなる話。恩義と復讐を同時に果たす、その機知に敬服する。これは名作。
【おぎん】
短い話ながらその根底はものすごく深い。宗教における教えの矛盾を露呈している傑作。
【おしの】
一読、軽いキリスト批判とも読めるが、そういった俗気のあるものではなく、人それぞれ信ずるものの意地がある、といったところか。
【糸女覚え書】
タイトル通り、覚え書。ことここに至ってはもうなにがなにやらよく解からぬ故、特に記述せられる事柄なきに候。これにて御免。
総じて、かなり読みづらい一冊ではあったがストーリーはやはり秀逸で、昔からある切支丹の文献を完全に自分色に染めてしまう芥川の才覚を充分に愉しめる。ただ、芥川に興味が湧いている今だからこそ読めたのであって、昔だったら放り投げていただろうことは否めない。