ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

樹をみつめて

2009-04-07 21:14:59 | Weblog
中井久夫著、みすず書房刊。

冒頭に収録されている「植物について」のエッセイ、
「戦争と平和についての観察」「神谷美恵子さんの「人と読書」をめぐって」、
どの文章も、とても面白かった。

年齢を重ねるごとに、家の周囲にある樹々に、心の中で話しかけることが多くなった。
そして、樹の表情から季節のうつりかわりを感じたり、自分の体調を知ることも多くなった。
これはきっと、日本人が古くから育んで来た「感覚」のひとつ。
中井さんのように、幼い頃から樹々と会話をしてきた人を羨ましく思う。

私は「生け花」が好きではない。
植物は、大地に根付いているのがいい。
自分で家の中に飾るときは、なるべく鉢植えがいいと思っている。
これは余談。

戦争についての文章は、私がとやかく言えることではないけど、
ちょうど北朝鮮が何かを飛ばしたときに読んでいたので、
普段よりも冷静な眼を保つことができたと思う。
戦争を知らない私にとっては、戦争について考え続けることが重要、と思っている。

神谷美恵子さんについての文章を読んで、
恥ずかしながら、はじめて神谷さんがシモーヌ・ヴェーユについての文章を書いていること、
そしてシモーヌが愛読していたマルクス・アウレーリウスの『自省録』を
邦訳されていることを知った。

なぜか、頭から『自省録』は日本語では読めない、と決めつけていたから、
フランス語を自身の第一言語としている神谷さんが翻訳していると知って
本当に嬉しかった。というか、私は本当にうかつだ。

この本は、次の読書につながる、たくさんのきっかけをくれた。
感謝。