ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

リヴァイアサン

2009-04-17 21:16:35 | Weblog
ポール・オースター著、柴田元幸訳。

これまで読んで来たポール・オースターの作品の中で、一番気に入った。

読後、調べてみたところ、
リヴァイアサンは、旧約聖書に出てくる海の怪物であるほか、
キリスト教の七つの大罪のうち、嫉妬に対応している悪魔。

なぜ、書名を『リヴァイアサン』にしたのだろう。

話は少し飛ぶけれども、
仏教関連の本を読むと、いつも私がいちばん乗り越えたいものは
「嫉妬」という感情だなあ、と思う。

あまりにも大きな劣等感と、根深い自己嫌悪。
そして、ふとしたときに襲ってくる自己顕示欲。
仏教で言う「執着」は、理解するのが少し難しいけれども、
「嫉妬」という言葉であれば、「うん」と、うなづける。

そう。私がいつも相対してるのは、様々なお面をつけて
巧妙に私を操ろうとする嫉妬の感情。

いや、この本の場合は違うか。
海の怪物のほう。時代や社会や、自分がつくりだした幻影に翻弄される人生。
まるで大海原の小舟のような存在。

ある作家が、才能豊かで魅力的なもう一人の作家に会った。
そして始まるストーリー。

人の内面を描きつつも、これまでよりも少し広い視野で繰り広げられるストーリーだと思った。
自分の内側に落ち込んでいくというよりも、他者との関わりにおいて、自分を問い直す作業。
とても面白かった。