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読書感想文【隠蔽捜査】

2006年07月10日 18時48分03秒 | 読書感想文
なかなか読ませる警察小説。

隠蔽捜査

ストーリー:
警察庁総務課の竜崎は自他ともに認めるエリート警察官僚。自分の職務の遂行に妥協を許さず日々の激務をこなしている。出世して自分の権限を広げるため、そして国と国民に奉仕するために上を目指している。
ある日綾瀬署管内で殺人事件が発生した。被害者は暴力団組員で、かつて残酷な犯罪を犯した経歴があったが少年犯罪であったため軽い刑罰で済んだ過去を持っている男だった。竜崎の小学校時代の同級生で警視庁刑事部長の伊丹は、この事件が凶器が銃であることを理由に、暴力団同士の抗争だと判断した。
しかし数日後に埼玉県内で発生した殺人事件の被害者が、最初の事件の被害者と同じく、過去に一緒に犯罪を犯した者であったため、2つの事件の関連性が濃厚となった。しかも2つの事件で使われた銃は同じとの鑑識結果まででた。
そんな折、竜崎の長男・邦彦が自宅で麻薬を使っているところを発見してしまった。警察官僚の身内が麻薬を使っているのが知れたら竜崎の考課に思い切りひびく。悩む竜崎は仕事も手につかなくなってしまう。
事件はさらに第3の殺人事件まで起きた。大田区の平和島公園で会社員が殺された。実は被害者はかつてホームレスを殺した前科をもっていた。3つの事件の被害者は全員少年時代に犯罪を犯し、しかも短期間で刑期を終えた者たちだった。
竜崎はこの3つの事件の犯人像を見破り、伊丹に告げると、伊丹たち現場の人間も同じ犯人像を想定していることがわかった。犯人は現職警察官――。かつてない警察のスキャンダルになることは明白だった。悩む伊丹に竜崎は真実を公開するよう忠告。が、邦彦の件を相談すると、伊丹は即座にもみ消すようアドバイスをした。
そして警察庁上層部は事件を迷宮入りにし、警察組織を守ろうとする。それに対し真っ向から反対する竜崎。だが、息子の邦彦の件をもみ消しにすれば自分のやっていることは矛盾する。悩む竜崎の決断は…。

感想:
警察小説というとどうしても横山秀夫と比べてしまうのだが、この作品は十分期待に応えるおもしろさだった。竜崎の一途なまでの奉公精神は新宿鮫に通じるものがあるのだが、読んでいてこの男の正論は痛快。またクライマックスでの、部下の谷岡との会話も感動したし、竜崎の決断に対する妻の反応もナイス。爽やかな読後感は横山秀夫の小説にはなかなかない。