この作者の小説を読むのは初めて。家族に薦められて読んでみた。
『犯人に告ぐ』
作者:雫井脩介

神奈川県警の警視・巻島史彦管理官は県内で発生した児童誘拐事件の捜査に関わった。しかし身代金の受け渡し現場で犯人を逮捕する作戦は失敗、翌日児童は遺体で発見されるという最悪の結果に終わった。
失敗の責任をかぶせられた巻島は記者会見で、記者たちと暴言の応酬を繰り広げてしまい、左遷させられた。
6年後、かつての巻島の上司・曾根が神奈川県警本部長として赴任してきた。不祥事続きの神奈川県警のイメージ回復のため、1年前に発生し未解決のままになっている川崎の男児連続殺人事件の解決を最優先事案として掲げた。これまでの捜査が行き詰っているのを感じた曾根は足柄署の特別捜査官として県内トップの検挙率を挙げている巻島に捜査の全権を委ねる決定を下した。
これまでにない新しい捜査方法をとることにした曾根はニュース番組「ニュースナイトアイズ」に巻島自身が出演して捜査状況を公開するという前代未聞の劇場型捜査を行うよう巻島に命じた。この番組を選んだのは、ニュースナイトアイズのメインキャスター・早津名奈が犯人こと自称”バッドマン”から脅迫まがいの手紙を送られた経緯があったからだった。
かつてマスコミの前で大失態を犯した巻島だったがそれからというもの心の中に荒んだものを抱え、周囲にもうちとけようとせずにいた。巻島自身は上の思惑がなんであれ、命令として唯々諾々とその命令を受ける。
この作戦の主眼は視聴者に情報提供を呼びかけるように見せておいて、実は犯人がそれに乗せられてボロを出すのを待つ、というものであった。が、ニュースナイトアイズの裏番組「ニュースライブ」は視聴率をナイトアイズに持っていかれて面白くない。ニュースライブのメインキャスター・杉村未央子に想いを寄せる神奈川県警の植草総務課長は巻島の上司であり、曾根の甥という立場を利用して、捜査情報を杉村にリークして歓心を買おうとしていた。その目論見は半ば成功し、杉村の信頼を得る植草。
ナイトアイズへの出演が数回に及んだ時、犯人である”バッドマン”から捜査本部に手紙が届いた。が、すぐに本物を名乗る別の”バッドマン”からも手紙が届く。以降、数回にわたり本物のバッドマンから手紙が届き、そのたびに巻島はテレビから、犯人に呼びかけを行った。
ある程度目論見どおりに進んでいるかに見えたナイトアイズへの出演だったが、植草のリークもあり、徐々に捜査は行き詰まりを見せる。また、犯人に同情的な発言を繰り返す巻島に世論は批判的になっていく。ついには曾根から解任まで示唆される。
が、ある日犯人が投函前に落としたと思われる手紙から捜査は一気にクライマックスを迎えた・・・。
感想:
警察小説というには警察内部はそれほど描かれているとはいえないが、純粋な刑事小説でもない。まぁ中間くらいか。
面白さは抜群で、電車の中などでむさぼるように読んでしまった。番組でキャスターと丁々発止のやり取りをする巻島が頼もしく、周囲の雑音を一切意に介しないところも超然としている。捜査の進行状況もスリリング。クライマックスで、巻島が番組上から犯人に呼びかけたセリフ「今夜は震えて眠れ」がこの作品の白眉か。
結果からいうと犯人の正体はおまけみたいなもので、それよりも犯人のニセ手紙を出した人物の意外な正体に驚いた。
捜査情報をリークし続けた植草の末路がきちんと描かれていなかったので、それが残念。もっと面白い展開を期待していたのだが。
結局6年前の誘拐事件の犯人はわからず仕舞いだったのは心残り。
『犯人に告ぐ』
作者:雫井脩介

神奈川県警の警視・巻島史彦管理官は県内で発生した児童誘拐事件の捜査に関わった。しかし身代金の受け渡し現場で犯人を逮捕する作戦は失敗、翌日児童は遺体で発見されるという最悪の結果に終わった。
失敗の責任をかぶせられた巻島は記者会見で、記者たちと暴言の応酬を繰り広げてしまい、左遷させられた。
6年後、かつての巻島の上司・曾根が神奈川県警本部長として赴任してきた。不祥事続きの神奈川県警のイメージ回復のため、1年前に発生し未解決のままになっている川崎の男児連続殺人事件の解決を最優先事案として掲げた。これまでの捜査が行き詰っているのを感じた曾根は足柄署の特別捜査官として県内トップの検挙率を挙げている巻島に捜査の全権を委ねる決定を下した。
これまでにない新しい捜査方法をとることにした曾根はニュース番組「ニュースナイトアイズ」に巻島自身が出演して捜査状況を公開するという前代未聞の劇場型捜査を行うよう巻島に命じた。この番組を選んだのは、ニュースナイトアイズのメインキャスター・早津名奈が犯人こと自称”バッドマン”から脅迫まがいの手紙を送られた経緯があったからだった。
かつてマスコミの前で大失態を犯した巻島だったがそれからというもの心の中に荒んだものを抱え、周囲にもうちとけようとせずにいた。巻島自身は上の思惑がなんであれ、命令として唯々諾々とその命令を受ける。
この作戦の主眼は視聴者に情報提供を呼びかけるように見せておいて、実は犯人がそれに乗せられてボロを出すのを待つ、というものであった。が、ニュースナイトアイズの裏番組「ニュースライブ」は視聴率をナイトアイズに持っていかれて面白くない。ニュースライブのメインキャスター・杉村未央子に想いを寄せる神奈川県警の植草総務課長は巻島の上司であり、曾根の甥という立場を利用して、捜査情報を杉村にリークして歓心を買おうとしていた。その目論見は半ば成功し、杉村の信頼を得る植草。
ナイトアイズへの出演が数回に及んだ時、犯人である”バッドマン”から捜査本部に手紙が届いた。が、すぐに本物を名乗る別の”バッドマン”からも手紙が届く。以降、数回にわたり本物のバッドマンから手紙が届き、そのたびに巻島はテレビから、犯人に呼びかけを行った。
ある程度目論見どおりに進んでいるかに見えたナイトアイズへの出演だったが、植草のリークもあり、徐々に捜査は行き詰まりを見せる。また、犯人に同情的な発言を繰り返す巻島に世論は批判的になっていく。ついには曾根から解任まで示唆される。
が、ある日犯人が投函前に落としたと思われる手紙から捜査は一気にクライマックスを迎えた・・・。
感想:
警察小説というには警察内部はそれほど描かれているとはいえないが、純粋な刑事小説でもない。まぁ中間くらいか。
面白さは抜群で、電車の中などでむさぼるように読んでしまった。番組でキャスターと丁々発止のやり取りをする巻島が頼もしく、周囲の雑音を一切意に介しないところも超然としている。捜査の進行状況もスリリング。クライマックスで、巻島が番組上から犯人に呼びかけたセリフ「今夜は震えて眠れ」がこの作品の白眉か。
結果からいうと犯人の正体はおまけみたいなもので、それよりも犯人のニセ手紙を出した人物の意外な正体に驚いた。
捜査情報をリークし続けた植草の末路がきちんと描かれていなかったので、それが残念。もっと面白い展開を期待していたのだが。
結局6年前の誘拐事件の犯人はわからず仕舞いだったのは心残り。