蝋燭は燃えているか(桃野雑派/講談社)
2023年3月に紹介した『星くずの殺人』の作者の新作。
前作の続編。というか、前作の型破りな登場人物「真田周(さなだ あまね)を主人公とする、新たな事件、というべきか。
主人公は、前作の事件後、脱出ポッドから音楽の生配信を行う。それは多くの注目を集めるが、殺人事件が明らかになると、不謹慎だとして大炎上する。
そのような設定から、京都を舞台に物語が始まる。
過酷な物語である(そういう意味では、おススメできない)。あえて紹介する理由は2つ。
近未来という設定だが、「現代」が孕む危うさを、鋭く描き出している。SNSの炎上をはじめ、さまざまな差別や誹謗中傷などなど。それらを背景に繰り広げられる事件のHOWとWHYのスケールが、前作と同様、非常に大きい。(この作品に責められていると感じる人にとっては、読みたくない本だろう。)
もうひとつ。主人公の話すテンポのよい京都弁がおもしろい。「知らんけど」のニュアンスを説明している部分があるが、ネタバレにはならないので引用させてほしい。
「私はこう思っていますけど根拠があって言ってるわけではありませんのであくまで一意見として聞いていただきエビデンスが必要な場合はご自身でお調べください」
ネイティブな話者ではないので正解かどうかは知らないが、納得はできる。
そして、前作に引き続き、本作でも、印象的な末尾を引用したい。
二人の声が静かにハモる。
「「知らんけど」」