おはようおかえり(近藤史恵/PHP研究所)
この人の作品を紹介するのは、2022年3月の『たまごの旅人』以来。
タイトルは、挨拶をふたつ重ねたものではなく、早く帰ってね、の意を含んだ「いってらっしゃい」。物語の最初と最後に、この言葉がある。
舞台は北大阪の和菓子屋。主人公はその店の二人の姉妹だが、もう一人、重要な役割を果たすのが、創業者である曾祖母。つまりは家族の物語。(この作者でなければ、私が読まない種類の作品。)
この人は、本当にいろいろな作品を発表している。(近著では、江戸時代の心霊ものもあった。)多くの作品に共通する要素が「謎の解明」。この作品では、曾祖母が特異な形で現代に現れて心残りを果たそうとしている、その真相追及が、物語の軸になっている。しかし、謎の解明が目的ではない。物語全体から感じるのは、生きていくための「決意」のようなもの。
老舗ではなく有名店でもない和菓子屋の経営事情。新しい和菓子の着想。近時、北大阪を襲った災害や、この世界の理不尽な偏見。それほど分量のない文章の中に、多くのものが織り込まれている。一見、雑多に配置された小道具ともみえるが、作者が描きたかったものにとって、すべて必要な要素なのだろう。
読後感は、悪くない。
この人の作品を紹介するのは、2022年3月の『たまごの旅人』以来。
タイトルは、挨拶をふたつ重ねたものではなく、早く帰ってね、の意を含んだ「いってらっしゃい」。物語の最初と最後に、この言葉がある。
舞台は北大阪の和菓子屋。主人公はその店の二人の姉妹だが、もう一人、重要な役割を果たすのが、創業者である曾祖母。つまりは家族の物語。(この作者でなければ、私が読まない種類の作品。)
この人は、本当にいろいろな作品を発表している。(近著では、江戸時代の心霊ものもあった。)多くの作品に共通する要素が「謎の解明」。この作品では、曾祖母が特異な形で現代に現れて心残りを果たそうとしている、その真相追及が、物語の軸になっている。しかし、謎の解明が目的ではない。物語全体から感じるのは、生きていくための「決意」のようなもの。
老舗ではなく有名店でもない和菓子屋の経営事情。新しい和菓子の着想。近時、北大阪を襲った災害や、この世界の理不尽な偏見。それほど分量のない文章の中に、多くのものが織り込まれている。一見、雑多に配置された小道具ともみえるが、作者が描きたかったものにとって、すべて必要な要素なのだろう。
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