本書は626ページ、表紙の厚さまで入れると42㎜もある厚冊です。
紙版の「最終回文庫」の古くからの会員、かわじ もとたか氏が「最後」と言いながら本当にこれが最後になるかもしれない『続装丁家で探す本 追補・訂正』を上梓され、ご恵送いただきました。
「最終回文庫」では装丁(装幀)に関して書いた記事がけっこうありますが、自分自身が興味がある作家の出版物とその装幀という、ごく限られた中での取り上げ方しかしてきていないのに対して、本書では430人、9100冊という膨大な装丁本を収録しています。古書目録から抜き出しているので、相場も参考になります。
かわじ氏の「はじめに」の冒頭部分です。
この本の文字組の特殊性も併せてご覧ください。
通常、本の背を上にして開くことはしませんが、リスト部分は、見開きで縦書きという特殊な組み方をしています。
―ということは、通読する本ではなく、調べたい装丁家を巻頭の「あいうえお索引」で引き、そこに載っていれば、その該当ページに当たるというやり方で、装丁家別に、上梓された本の作者、出版社、発行年、データ収集当時の相場などが分かるようになっています。
ただし元データは古書目録から採録しているわけですから、装丁者の名前まで載っていなければ採録されません。
例えば、私が好きな星新一は真鍋博装丁の本が多いにもかかわらず、本書では採録された中には1冊も載っていませんし、和田誠との組み合わせの本も多いのですが、本書では和田誠自体、装丁家として取り上げられていません。
取り上げ方に偏りがあるとはいえ、これだけのデータを採録、分類することは非常な困難が伴ったことは想像に難くなく、たいへん貴重な労作と言えます。
この先、本書を端緒として充実した資料が作成されていくと、すばらしい資料が出来上がっていくものと期待できます。
恵送いただいたお礼を申し上げたところ、かわじ氏から、活躍中の装丁家には遠慮し、故人となった装丁家を主眼にしていること、真鍋博は2004年に東京ステーションギャラリーで『真鍋博展』が開催されたことに配慮し、和田誠は前著『装丁家で探す本』で取り上げていることをお知らせいただきました。(おふたりとも装丁した本をリストにしたら1冊になるぐらいあるでしょうから、それはもっともなことです)
本書のあまりの厚さに圧倒されて、「改訂増補版」だと思い込んでしまいましたが、「追補・訂正」なのですね。(2018年9月12日 追記)
巻末には横組みで「装丁挿話」が100篇+番外編6話が掲載され、ほかに「装丁展ほか開催一覧」は、かなり丁寧に拾ってあるという印象で、古書店はもっと装丁家に注目すべし!という著者の考え方に大いに賛同するものです。
※かわじ氏からは2014年に『序文検索 2箇目 序文跋文あれこれ』の恵送を賜り、ここで紹介しました。