最終回文庫 ◇◇雑然と積み上げた本の山の中から面白そうなものが出てきた時に、それにまつわる話を書いていきます◇◇

※2011年9月以前の旧サイトで掲載した記事では、画像が表示されない不具合があります。ご容赦ください。

私のコレクション 塚越つや子詩画集『片言の愛のはじめに』

2025年03月18日 | 初版・限定本
前記事で紹介した塚越源七さんの奥様の詩画集『片言の愛のはじめに』(全孔版刷り)1964年4月2日発行 壺工房 限定200部。「塚越つや子孔版詩画集●片言の愛のはじめにができるまで●壺工房」と題した、この本が出来るまでを詳述した正方形の32ページの小冊子付。
本書は青園荘が改装した特製本(部数不明)で、作者 塚越つや子と夫君 塚越源七の両者の署名が入った、内藤政勝宛の献呈本。神保町の古書店で買い求めたものです。

夫婦かぶせ箱

角背、背とコーネルは白革、平の部分はビロード

ご厚誼をいただいた塚越源七さんは、2011年にお亡くなりになられたので、今となっては、特製本が何部作られたのかお尋ねすることも出来ません。



私のコレクション 塚越源七書票抄 ―華甲を記念して―

2025年03月16日 | 書票 蔵書票
塚越源七書票抄 ―華甲を記念して― 昭和57(1982)年4月2日発行
画・版・制・装/塚越源七 発刊/G・T工房 無綴じ 紙帙入り 部数表記なし
塚越さんが還暦の記念に制作した自票10葉+表題と奥付も孔版の書票集。それぞれの孔版画を、窓あきの台紙に貼り込んであります。

紙帙

紙鞘に署名


表題部分













奥付部分



私のコレクション 塚越源七さんの書票、孔版画

2025年03月15日 | 書票 蔵書票
塚越源七さんの書票、孔版画をいくつか紹介していきます。
塚越さんとは、同じ千葉県内在住ということもあり、書票の作成を依頼したこともあり、拙宅までおいでいただいたことが一度ありました。
その時は最寄り駅に到着したら電話をいただき、車でお迎えに行く段取りだったはずでした。ところが、おおよその約束の時間よりも早く、拙宅にいきなりおいでになったのには驚きました。聞けば、ところどころでうちの住所(駅北口からが近い)を尋ね、駅の南口からかなり遠回りをしておいでになったようでした。当時はまだ市制施行になる前の「郡・町」で、旧番地は線路を挟んで南北に広い範囲が同じ字名でしたから、よくたどり着けたものだと驚いたのです。その日はとても暑い日だったように思うので、初夏か夏だったのではないかと思います。

書票大会で交換した書票は、そのときどきでまとまっている(「まとまっている」と書くと聞こえはいいのですが、要は整理していないということです)ので、塚越さんの書票と孔版画を切手のストックブックにまとめてあるということは、おそらく拙宅においでいただいたときに、お土産として頂戴したものだと思います。


私の書票なので名前の部分を消しておきます。

以下は孔版の小版画

塚越さんの書票集は、次の記事で紹介します。


私のコレクション 愛書票暦

2025年03月08日 | 書票 蔵書票
「日本愛書會」は蔵書票普及のために1943(昭和18)年に創設され、最初は「日本愛書會」、1957(昭和32)年からは名称を「日本書票協会」に改められた、歴史のある組織です。会報と「書票暦」(書票とカレンダーの組み合わせ)を頒布してきました。私も一時加入していました。
その頃は、著名な作家に作成を依頼しても、そんなにべらぼうな金額ではありませんでした。版画制作の「本業」の「余技」として、比較的安価で作成していただけていたのが、書票の世界に新規参入してきた作り手が増えるにつれて、「えーっ、それはないだろう」というぐらいの作成依頼費の高額化が定着し始めました。作成依頼の頻度が落ちれば、新しい自票が増えないので、当然のように同好の士との交換熱も冷めていき、退会しました。

まだ盛んに活動していた頃に、入会する前の古い「書票暦」を集めようとした時期がありました。紹介するのは、そのときに古書店から入手したものです。当時の納品書が挟まっていたので、購入時期は1994年だということが分かります。
1948(昭和23)年から1952(昭和27)年までの5年分を、会員が各年ごとに手作り製本して12か月分の暦を貼り込んであります。但し、最後の1952年は前半の1月~6月までの暦で終わっているのは、当時は年2回の発行だったからでしょう。さらに同じ装幀のその5冊は、紙帙に収めてあります。手作りされた方の几帳面さが現れています。
書票は1年に12枚あるので、全部紹介すると54枚にもなるので、1年分3~4枚をピックアップして紹介します。

1948(昭和23)年 の私製アルバム(以下、同じ装幀なので省略します)

2月 恩地孝四郎 作


3月 武井武雄 作


4月 前川千帆 作


1949(昭和24)年 1月 川上澄生 作


2月 畦地梅太郎 作


5月 関野凖一郎 作


6月 初山 滋 作


1950(昭和25)年 1月 恩地孝四郎 作


3月 武井武雄 作


4月 前川千帆 作


1951(昭和26)年 1月 川上澄生 作

4月 武井武雄 作


6月 畦地梅太郎 作



9月 芹沢銈介 作


1952(昭和27)年 1月 初山 滋 作


2月 逸見良之助 作


3月 武井武雄 作


【画像追加 2025-03-16】

日本書票協会発行『書票暦図録 1943-2014 附録・日本書票のあゆみ』2016年3月10日発行


1993年までの書票暦の紹介はモノクロですが、1994年~2014年までのものはカラーで紹介されています。

私のコレクション 種村季弘『晴浴雨浴日記』(私刊本)

2025年02月28日 | 井上洋介
前に市販された単行本を取り上げたことがありました。
今回は、封筒に入った、新書版ほどの大きさの並製本で限定195部。1988年12月10日の発行。タイトルは井上洋介さんの筆跡です。
グラシン紙がかけられ、封筒に入っています。

封筒の素材は、本の表紙と同一。

オモテの見返しに、種村さんの署名があります。

表題紙の前に、井上洋介さんの自刻自刷手彩の木版画「浴泉図」が貼られています。




私のコレクション アルビン・ブルノフスキーの仕事

2025年02月23日 | 書票 蔵書票
「探しもの」がようやく見つかったので、記事にします。

『金のりんご』アルビン・ブルノフスキー著/内田莉莎子/訳 
1982年10月1日発行 福音館書店
※本書は現在、古本でしか入手できないようです。

この本が出版される前から、アルビン・ブルノフスキー(1935-1997)氏は切手や紙幣のデザインを手掛けていました。

1985年~1989年チェコスロヴァキアの紙幣。10、20、50、100コルナ。
1000コルナ紙幣のデザインもしているようですが、額面が高いだけに流通価格もそれなりにするので、手を出しかねています。

10コルナ紙幣の表裏。

アルビン・ブルノフスキー氏の名前が表示されている部分の拡大



20,50,100コルナ紙幣(表)

その裏

下に紹介する切手と同様に、デザイン担当者と、版の作成者は分担しているのだと思われますが、詳細は良く分かりません。

手元にある切手は、スロヴァキア共和国が2010年4月5日に発行した【EUROPA 2010、児童書】の初日カバー。別に切手だけもあります。
ブルノフスキー氏の没後ですから、切手のモチーフをブルノフスキー氏が、デザインをご子息のダニエル・ブルノフスキー氏が、マルチン・チノフスキー氏が版の作成を担当するという分担が行われているようです。



なかなか見つけられなかった「探しもの」というのは、アルビン・ブルノフスキー作の書票です。ブルノフスキー氏が生涯に作成した書票(蔵書票)は、すべて枚数と画像が記録されていると、どこかで読んだことがあります。
書票というのは、同好の士の間で交換されるのですが、ここに紹介する1枚だけは所蔵している人がおらず、「Who is Matsui ?」と言われ、世界中のコレクターが血眼で探しているのだそうです。

なぜ私が持っているかというと、冒頭で紹介した絵本『金のりんご』が出版され、ブルノフスキー氏が来日した時に、出版元の福音館書店の当時社長だった松居直氏に書票をプレゼントしたのだそうです。
おふたりとも鬼籍に入られているので細かな点は確認出来ませんが、ある時、松居さんと昼食を共にしたときに、どんな話の流れでそうなったのか記憶していませんが、「『金のりんご』を出版した時にブルノフスキー氏から自分の名前が入った版画をたくさんいただいたけれど、それが何だかわからない」とおっしゃられたのです。
多少なりとも書票の知識はあったので、それは外国ではエクス・リブリスと呼ばれる、日本の蔵書印に代わる小版画で、本の見返しに貼って「自分の蔵書」だということを示すものだということをお話ししたのです。
後日、「これがブルノフスキーさんからいただいたものです。あなたに1枚差し上げます」とくださったのです。

本邦初公開です。

35枚刷られているので、あと34枚あるはずです。



私のコレクション 『年を歴た鰐の話』その2(再版)

2025年02月15日 | コレクション
レオポール・ショヴオ/山本夏彦/訳 昭和18(1943)年7月10日再版 櫻井書店
この本の初版(昭和16(1941)年6月25日発行)は、前に紹介しました。
⇒こちら(内容を追記し、入手可能な本は現在の定価に修正しました)
その本の再版本です。初版本と並べて撮影しようと思ったのですが、いつものように、どこに埋もれてしまったのか……。

今回紹介する再版本も、ジャケットがありません。(表紙にはシミ、キズが多いので修正してあります)

初版に比べて、判型がひと回り小さくなっているようです。

発行時期は、太平洋戦争末期ですから、そのころの窮状が奥付に現れていました。
奥付ページに貼り付けてあるのは、上部の「検印」紙だけではなく、発行日の部分にも、別の紙が貼り付けてあります。
その部分を拡大します。

「定價」の表示部分が3行にわたって表示されています。
「定價」の頭に「停」の字が丸で囲われているものがついています。
2行目の「特別行爲税相當額 十錢」というのは?? なんでしょう。

調べてみると、国税庁のHPで、戦時下の「特別行為税」について以下のように解説されていました。
特別行為税は、アジア・太平洋戦争末期の昭和18(1943)年から同21(1946)年にかけて、写真の撮影現像、調髪と理容美容などの整容、被服類の仕立てや染色・刺繍、書画の表装及び印刷製本といったものを「特別行為」として課税対象にしていた国税です。
日中戦争の泥沼化、日米開戦による世界大戦化を背景に、1930年代後半から大蔵省は、「巨額の戦費を調達すると同時に国民の奢侈的な消費生活を抑制させるために、間接税を中心とする大増税を断続的に決行していました。こうした一連の政策の中で創設された特別行為税について、当時の新聞は、奢侈とみなされた商品や行為に対し罰金並みの「禁止的高率」を課すものであると報じています。税率は、印刷製本が20%、その他は全て30%に設定されて (以下略)」
1行目の「定價」の頭に「停」の字が丸で囲われているものは、推測すると、一応決めた定価ですが、それが戦時下の特別税が設定されたことで「停止」されていて、通常の定価に「特別行為税」の20%が加算される分が10銭で、店頭での販売価格は2円40銭ということなのでしょうか。
初版の奥付を改めて見てみると、定価2円30銭の下に「停」の字を丸く囲んだ印がありました。私の推測は的外れだったのかもしれません。

いずれにしても、「贅沢は敵だ」という矛先が書籍にも向けられていたということだと思います。
しかし、「特別行為税」が20%だとすると、2円30銭の20%は46銭ですから、合計定価は2円76銭になるはずで計算が合いません。税率が20%になるまでに段階的に変化したのかもしれません。(その経緯を確かめようと、国会図書館所蔵の漢字カタカナで記された資料を見てみました。廃止になるまでの間に何度か改正された文面を解読しようと試みましたが、読めたとしてもその内容を理解するのは無理だということがすぐにわかったので、諦めました)

表題紙(入手した本には蔵書印があるので、修正してあります)


この本にはオモテの見返し紙に某医科大学生〇〇という氏名ゴム印が押してあり、その名前で検索すると、その医科大学卒業後、母校で名のある地位にあった方だということが分かりました。 また、昭和19年10月19日にこの本を読了されたことも巻末の書き込みによって分かります。ご存命だと100歳を超えている計算になります。1冊の本の来歴は、じつに奥が深いです。

※ 再版本が入手できたので、初版本を取り上げた記事に一部加筆しました。


ドゥシャン・カーライさんの仕事

2025年02月02日 | 気になる作家/画家
日本では絵本の作者として知られるドゥシャン・カーライさんは、1948年生まれ、スロヴァキア在住です。

『どきどきおんがくかい』1997年9月1日発行 福音館書店「年少版・こどものとも」通巻246号

『カエルのおんがくたい』2001年3月1日発行 福音館書店「年少版・こどものとも」通巻288号

イラストを担当した本は、これ以外にも何冊かあります。
◇『12月くんの友だちめぐり』1988年 西村書店
◇『不思議の国のアリス』1990年 新潮社
◇『魔法のなべと魔法のおたま』1990年 ほるぷ出版
◇『アンデルセン童話全集 Ⅰ~Ⅲ』2011年 西村書店

【受賞歴】
◆1973年と1975年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)で「金のりんご賞」を受賞。
◆1983年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを受賞。
◆1987年 シルバーヒューゴ賞を受賞。
◆1988年 国際アンデルセン賞にて画家賞を受賞。

スロヴァキアでは出身校のブラチスラヴァ美術大学で教鞭を取り、切手や蔵書票のデザインも手掛けています。

ドゥシャン・カーライさんがデザインした記念切手で、手元にあるものをいくつか紹介します。切手の端には、ルーペで拡大しなければ判読できないほど小さな文字で、ドゥシャン・カーライさんと別な人の名前が併記されているものがあり、ドゥシャン・カーライさんはデザインだけで、原版の製作をしたのは別の人のようです。

2010年 ジリナ教会会議 400周年 

2013年 聖者たちの大モラヴィアへの到着 1150周年 

2017年 宗教改革(1517年)500周年
作者としてカーライとマルチン・チノフスキーの名が記してあります。

2019年 チェコスロヴァキア軍団とミランラスティスラフ・シュテファーニク

2019年 郵便切手の日 初日カバー

 
2022年 コシツェ⇔ボフーミーン鉄道運航開始 150周年

2020年 聖メソッドがパノニアとモラヴィアの大司教に叙階 1150周年

切手蒐集の趣味はないのですが、気になる画家だと、つい手を出してしまいます。
「探し物」が見つかったら、次に紙幣を紹介しようと思います。



古澤岩見氏のデッサン

2025年01月28日 | 気になる作家/画家
探し物をしていた時に、こんなものが出てきました。
日本書票協会主催の第1回全国大会で参加者に頒布された記念書票集(無綴じ)の表題紙と目次ページの白紙部分2枚に、大会に参加していた古澤岩見氏が、サインをという求めに応じてボールペンで、脇にいた女性をさらさらと描いてくださったものです。


色紙など適切な白紙がなかったので、頒布されたばかりの書票集の白紙部分に描いてくださったのです。サインと日付の下には、モデルになった女性のお名前も書き添えてあり、その時撮影した写真も一緒に挟んであるのですが、今さら掲載の許可もいただけないので、デッサンの部分だけを載せます。

「電車風景1991」井上洋介

2025年01月25日 | 井上洋介
探し物をしていた時にこの本が出てきました。
事務用の茶封筒には墨で「木版 電車風景②」とタイトルが手書きしてあります。

ジャケット代わりに、木版を貼ったトンネル筒に入っています。
下が蛇腹折りの本で、7葉の木版画貼り込んであります。

奥付

すべて洋介さんの手作りですが、私の手元にある経緯がまったく思い出せないのです。
当時の手帳は保管してあり、1991年は洋介さんと浅草で何度かお会いしているのですが、この本をいただいたという記載が見当たりません。いただいたのは作成した年ではないのかもしれませんが、手帳のページをめくって、いただいた日を特定するのはちょっと無理そうです。