参議院選挙は中盤に差しかかっています。マスコミの世論調査、投票率の予測などが発表されています。その内容は、自民党と公明党が70議席(改選議席122)で約6割の議席を確保する勢いであること。投票率は前回総選挙をさらに下回る可能性があると報じています。安倍政権への支持率は高い状態が続いており、その高支持率が自民党支持、議席獲得に結びつく可能性を生む根拠となっています。
参議院選挙は、衆議院選挙と異なり、政権選択が問われる選挙でないことは明白です。しかし、現在の政治、政権運営に関する評価も反映する点で安倍、自民党政権の高支持率が続いていることには驚きと問題を感じます。
自民党支持率が結果的に高くなっている背景には、民主党政権が公約をことごとく破り、消費税率引き上げ、原発再稼動、TPP交渉参加など自民党政権、自民党野田派といわれるまで堕落、公約違反を繰り返した結果でした。自民党政治、政策に愛想が尽きて、政治を変えようとした前々回衆議院で政権選択、政権の転換が実現しました。ところが、その選挙民の期待、要求をことごとく裏切った結果が現在の自民党への支持回帰につながっています。どうせ、政権が変わっても自民党の政治、政策が継続するのであれば、自民党、安倍政権を支持しても同じではないか。前回のにわか民主党支持者は期待を裏切られたので、政治不信があり、投票には行かない。どの政党も同じではないか。との反応になっています。そのことが投票率を引き下げ、結果として安倍、自民党政権の議席獲得という皮肉な原動力になっています。
歴史の流れは、1回の選挙結果で変わるようなものでないことは確かです。しかし、今回の参議院選挙の争点である憲法改正、消費税率引き上げの賛否、原子力発電所再稼動の是非、TPP交渉参加判断などはどれひとつをとっても、日本の将来を大きく変更する政治テーマ、課題です。この選挙結果で安倍、自民党政権が暴走する政治権力を手にすることを許してはならないと思います。投票率が下がることは前回衆議院選挙と同じ政治不信、選挙民の意識が引き続いていることを示しています。民主党に対する批判、期待はずれは当然ですが、だからといって自民党が漁夫の利を得ることを許すことにはならないと思います。
<北海道新聞社説>自民党の改憲論
安倍晋三首相が自民党憲法改正草案の修正へかじを切り始めた。NHK番組で「『自民党の案では駄目だが、ここを修正すればいい』というなら、当然政治は現実だから考えていきたい」と述べた。
ちょっと待ってほしい。自民党はそんな軽い気持ちで改憲を主張していたのか。憲法の議論は政党の基本理念や国家観が問われる。首相の言葉には確たる理念が感じられない。自民党は参院選公約にこの改憲草案を載せ「憲法を国民の手に取り戻す」と主張する。方向が定まらなければ、投票の判断材料にならない。政権与党として無責任だ。あいまいな態度で支持を集めても改憲に賛同を得たと認めることはできない。
自民党公約をよく見ると、何が何でも改憲草案を実現するとは書いてない。「広く国民の理解を得つつ、『憲法改正原案』の国会提出を目指す」という。 だが草案の内容は詳しく説明している。96条に定められた憲法改正の発議要件は「衆参それぞれの過半数」に緩和し、9条変更による国防軍設置も訴えた。天皇は元首とし、家族の尊重を国民の義務としている。
自民党が参院選後にこれらの改憲を目指そうと考えて公約をつくったことは誰の目にも明らかだ。国民の権利に制限を加えるなど、もともと問題の多い草案である。不備を認めて撤回するでもなく、選挙後に他党から異論があれば見直すというのであれば姑息(こそく)な態度だ。
首相はどの条文の修正に応じるかも明らかにしてない。憲法改正の発議要件緩和や9条変更など骨格となる主張も、場合によっては取り下げるのか。何にでも応じるのなら「まず改憲ありき」の議論でしかない。参院選はすでに公示され、期日前投票も始まっている。自民党の公約を参考にして投票した人もいるだろう。改憲についての首相のぶれは、そんな有権者を欺くことにもなる。
実際、自民党の改憲に関する主張はほころびが目立っている。首相が掲げてきた「96条先行論」は連立を組む公明党からも反発が吹き出し、再考を余儀なくされている。形勢不利と見て、主張をぼかすのであれば「争点隠し」の批判を免れない。少なくとも、自民党として譲れないものは何か示す必要がある。
首相は改憲について「時間はかかる」とも語った。だが参院選後に民主党も含めて改憲に必要な勢力結集を目指す考えを示している。急ぐ考えがないように見せかけて、警戒心を解こうとしていると疑わざるを得ない。隠された真意を見抜く目が有権者にも求められる。