宮崎駿監督、スタジオジプリ熱風7月号で、自民党の憲法改正への意見が公開されています。当初は、冊子だけで発行予定だったそうですが。書店でも品切れが続出しているので急遽、PDFでの公開に踏み切ったのだそうです。詳しくはそちらを参照してください。
経済対策を評価して自民党支持が優勢とのことですが、今日、明日、食べるために職につくことも重要です。しかし、この失業率の高さ、非正規労働の拡大、5人に2人が非正規労働者であること。低賃金、不安定雇用、長時間労働は一体の問題であることを理解することが必要です。しかも、その労働分野における規制緩和、労働条件の改悪を進めるのが安倍、自民党内閣、竹中平蔵を代表とする新自由主義論者です。彼らは富裕層、大手企業、多国籍企業の要求を丸呑みしようとしています。彼らの要求は、自由に解雇ができること、最低賃金制度の撤廃、非正規労働の無条件条件緩和、派遣労働の無制限緩和、年金などの企業負担を0化することなどです。その政策を先頭に立って進める自民党への支持率が一番高くなっている。これこそが皮肉です。
しかも、安倍、自民党、靖国神社参拝を進める勢力は現行憲法の改悪を進めようとしています。安倍は、9条を改定すると発言しています。自民党幹事長の石破幹事長は、憲法を改定し、国防軍にする。その際に、国防軍に軍法会議を設置したい。なぜならば、自衛隊には軍法会議がなく、自衛隊員が「戦争に行きたくない」といっても強制ができない。軍法会議を設置できれば、軍法会議で最高刑死刑、懲役○○年などを軍事法廷で裁くことができると公然と意見表明しました。彼らが狙う憲法改悪とは天皇主権、徴兵制度、自衛隊の国軍化、軍事法廷の設置、義務教育制度の改悪(かつての教育勅語などの現代版導入)です。日本の政治、国のあり方を根本から変えてしまうような抜本的な改悪を狙っています。その意図を見抜かれないように参議院選挙では争点をぼかし、隠す戦術を取り続けて、最終日になっていしました。彼らは自らの本音を隠し、自民党への支持をかすめ取ろうと。ほぼその作戦は成功しました。(短期的には)
自民党の改憲、9条攻撃への激しい抵抗、批判がおき始めています。戦争を知る高齢者は戦争へ突き進んだ時代を感じ取り、反対の声を上げ始めています。また、多くの識者も党派を超えて、安倍自民党、維新の会、みんなの党、民主党などの改憲賛成派への批判を強めています。あのときにこうすればよかったではすまない問題です。
<宮崎監督の憲法改正への批判>
「多数であれば正しいなんてことは全然思っていないけれど、変えるためにはちゃんとした論議をしなければいけない。それなのに今は、ちょっと本音を漏らして大騒ぎを起こすと、うやむやに誤魔化して「いや、そういう意味じゃないんだ」みたいなことを言っている。それを見るにつけ、政府のトップや政党のトップたちの歴史感覚のなさや定見のなさには、呆れるばかりです。考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい。本当に勉強しないで、ちょこちょこっと考えて思いついたことや、耳に心地よいことしか言わない奴の話だけを聞いて方針を決めているんですから。それで国際的な舞台に出してみたら、総スカンを食って慌てて「村山談話を基本的には尊重する」みたいなことを言う、まったく。「基本的に」って何でしょうか。「おまえはそれを全否定してたんじゃないのか?」と思います。
きっとアベノミクスも早晩ダメになりますから。」
「もちろん、憲法9条と照らし合わせると、自衛隊はいかにもおかしい。おかしいけれど、そのほうがいい。国防軍にしないほうがいい。職業軍人なんて役人の大軍で本当にくだらなくなるんだから。
今、自衛隊があちこちの災害に出動しているのを見ると、やっぱりこれはいいものだと思います。隊員たちはよくやっていて、礼儀正しい。イラクに行かざるを得なくなっても、一発も撃たず、ひとりも殺しもせず帰って来ました。僕は立派だったと思います。湾岸戦争後にペルシャ湾に掃海艇を出さざるを得なかったけど、機雷のなさそうな海域を黙々と掃海して、小さな船です、大変だったと思いますが、静かに帰って来ました。僕はだまっていましたが、感動していました。
もし本当に戦火が起こるようなことがあったら、ちゃんとその時に考えて、憲法条項を変えるか変えないかはわからないけれど、とにかく自衛のために活動しようということにすればいいんです。立ち上がりは絶対遅れるけれど、自分からは手を出さない、過剰に守らない。そうしないと、本当にこの国の人たちは国際政治に慣れてないからすぐ手玉に取られてしまいます。もし戦争になるとしても、そのほうがまだましだと考えます。」
「とにかく、今までこれだけ嘘ついてきたんだから、つき続けたほうがいいと思ってます。整合性を求める人たちはそうすることで「戦前の日本は悪くなかった」と言いたいのかもしれないけれど、悪かったんですよ。それは認めなきゃダメです。慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。領土問題は、半分に分けるか、あるいは「両方で管理しましょう」という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがありません。
かつて日本が膨張したように、膨張する国もあります。でも、その度に戦争をするわけにはいかない。そんなことよりも、今は、日本の産業構造を変えていこうというまじめな取り組みをすべきだと本当に思いますよ。こんな原発だらけの国で戦争なんかできっこないじゃないですか。中国が膨張しているのは中国の内発的な問題です。そして、中国内の矛盾は今や世界の矛盾ですから、ただ軍備を増強したり、国防軍にすればけりがつくなんていう問題じゃないと僕は思います。」