経済のグローバル化で、他国の金融不安が全世界を駆け巡り、不況、失業の増大、国債の価値下落と金利上昇、インフレなどを誘発します。現実にブラジルでは資金流出でハイパーインフレとなり、サッカーワールドカップ前哨戦も抗議行動で治安の悪化が報道されたばかりでした。資金、投資家、金融機関は少しでも有利な条件で資金を運用しようとしています。また、資金をリスクの低い投資にまわそうとして、金利、政治不安、財政状況などをみて常に大量の資金を運用しています。そして、利ざやを稼ぎ世界で行っています。このことがアメリカ、イギリス、日本、スイスなどの金融機関の常識であり、正当であるとされています。本当に正当なのかどうかを考えてみる必要がありますが、現在は、各国政府(アメリカ、イギリス、日本、スイスなどの先進国)のお墨付きを得た行為です。
むき出しの強欲資本主義といわれる由縁は、お金には色も国家もないためにブラジルが、中国が財政的に破綻しようが、政治的不安定化を引き起こそうが知ったことではありません。投資集団と、投資家が利益を上げさえすれば、その他のことは一切関係ない。これが新自由主義経済の本質です。まともな政府であっても、このような枠内で投資を受け入れる、経済関係を構築している国家は常にこのような金融不安、インフレ、政治不安に巻き込まれる状況におかれています。これが本当に常識なのでしょうか。
<金融不安>
外需低迷などから減速する新興国経済が、世界経済の新たな火種として浮上している。
国際通貨基金(IMF)は先ごろ、成長の減速傾向が長期化する懸念が強いと警告した。その要因として挙げたのが、米国が年内にも始める可能性がある量的金融緩和の縮小である。縮小されれば、低金利の緩和マネーを得られなくなる投資家が、割の良い投資に回すため新興国から余剰資金を引き揚げる。その事態は既に現実化しており、資金流出の加速は成長減速に追い打ちをかけかねない。
加えて世界の市場関係者が不安視するのが新興国の雄、中国が抱える「影の銀行(シャドーバンキング)」問題だ。
通常の銀行融資と別のルートで資金をやりとりする取引で、ここ数年急拡大した。だが、もともと銀行ルートでは融資を受けられない信用力の低い資金提供先だけに、経済の減速から焦げ付きの恐れが広がる。不良債権が膨大になれば金融危機につながる可能性も言われ始めた。
緩和の縮小も影の銀行も金融に関わり、世界経済を下振れさせるリスクをはらむ。むろん、米国、中国の対応が鍵を握る。その金融リスクをどう回避するか、世界経済の安定成長を図る上で国際社会も協調して対応する必要がある。
IMFが9日公表した今年の成長見通しで中国、ブラジルなど主要新興国の成長率は4月時点から軒並み引き下げられた。その中で日本は2%とアベノミクスへの期待から0.5ポイント上方修正された。だが、それも世界経済の安定があればこそだ。
米国の金融緩和をめぐっては連邦準備制度理事会のバーナンキ議長が縮小に言及した6月半ば、東京市場で株価が一気に840円も急落し、新興各国では自国通貨が軒並み下落。影響は世界の金融市場に及んだ。
その衝撃度を踏まえ、米当局には市場との対話を慎重に進めながら、各国とも連携し、政策変更に踏み切った際の混乱を最小限に食い止める努力が要る。
影の銀行は、その代表商品である「理財商品」が5年前の米リーマン・ショックの元凶、サブプライムローンを思わせる。複数の債権を集めて小口化し、この高利回り商品で投資家らから資金を募り、不動産企業や地方政府系投資会社に提供する。
それで乱開発や地方の無駄な公共事業が行われている。だが、ここにきて地方政府の財政難もあり多くの資金が回収困難視される。130兆円超とされる理財商品も影の銀行も実態が不透明なことが不安をあおる。
中国政府は金融引き締めなどで対応するものの、かえって貸し渋りを誘発しかねず、難しいかじ取りを迫られている。
バブル崩壊を含め先進国が苦い経験から得た政策運営の教訓を、生かすことはできないか。
新興国経済減速への対応は、20日に声明の採択を見込むモスクワでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の主要議題である。実りある協調の成果を期待したい。