新自由主義社会では個人、企業が行動することはすべて正しいとして物事を組み立てています。そして、経済行為、利益を生み出すことを肯定するところから、自由な商取引、経済行為を政府、政治が関与することを排除することが重要とする考え方にたっています。ここから小さな政府、規制緩和、国有企業の民営化などが正しい方向と結論付けられてきます。
現在は、アメリカの大手金融機関、多国籍企業は自らの経済行為、利益を上げる活動地域をアメリカから国外に無制限に拡大しようとしています。その中で重要なことが企業活動への政治の力を排除すること。国境により関税、法人税、基準などが異なることで経済活動が規制され、利益が上がらないことを極度に嫌っています。その1つの事例がアメリカ主導のTPP協定です。アメリカ多国籍企業にとっての自由、フリーハンドの要求と権利確保がこの協定交渉の本質です。このような協定が長続きすることは歴史的にはありえないことと思います。短期的に成功、成立しても必ず、歴史による批判、審判を受けて修正、変更を迫られるはずです。
今、日本ではブラック企業が話題になり、政治の舞台でも問題視され始めています。しかし、ブラック企業の特徴である、労働者の使い捨て、大量採用・中途退職、労働者の使い捨て、長時間労働の強要と残業代の未払い、これらは多くの企業が利益を上げ、巨大化する過程で行ってきたこと。行っていることです。ソニー、日本IBM、大京などは出向強要、退職強要などを企業として行っていると報道がされました。ユニクロ、ワタミなどは社員の使い捨てを大量に行っているとして批判をされています。彼ら経営者は、労働法規に触れない範囲で営業、労務管理をしており、何が悪いのか。と居直っています。ここに新自由主義経済の反社会性、大きな欠点があります。
企業が社会的に果たさなければならない、地域社会との関係を全く無視して、利益を上げることのみに奔走する企業活動を振り返る価値観が企業経営者にはないということです。職員が長時間労働により健康を害する、精神的に追い詰められ自殺をすることが社会的には異常、正常な企業活動ではないと批判されることを認めることができない。利益が出ても法人税を減らすために様々な取り組みを行う。研究開発減税、投資減税を政権党に要求する。利益を隠すために租税回避を行う。これらが企業行動として当然で、正当であると主張することが多国籍企業、大手企業で主流になっている点が異常です。
企業が営業、製造するためには工場を作り、職員、労働者を地域で雇うことが必要です。また、その地域の社会的な基盤――道路、港湾、上下水道、通信、電気などを使う必要が絶対条件です。それらの社会基盤はどこの国であっても自治体、国の税金で整備され、維持されています。これだけでも企業が利益から法人税を支払う必要性は説明できます。また、雇用すべき労働者はその地域、国の義務教育、高等教育を受けて一人前の人間、労働者に成長しています。その家族を養い、家庭を維持する経費が必要です。このようなコストは計算できないくらい大きな社会的なコストです。
アメリカ型、新自由主義経済を底辺とする政治制度がどうしようもない矛盾に直面しています。それが今日の先進工業国が直面している政治経済の問題、課題となっているのだと思います。原子力発電事故、消費税率の引き上げと法人税率の引き下げセットの税制改正、国家財政の赤字と拡大、通貨安競争、公教育経費の私学への丸投げ、年金制度の破壊、恒常的な失業、富裕層がすべての富を独占し大量の貧困層を作り出すこと、犯罪の多発と治安の悪化などは新自由主義経済、政治制度がもたらした結果、到達点です。みんなの党が「○○の前にやるべきことがあるだろう!―――」とよく言いますが、このような政治、経済のごまかしでは問題が解決できないレベルまで腐敗、堕落が進行してしまっているのではないかと感じます。特に、アメリカ、日本などはその悪弊の先頭を走っています。
これらの矛盾を解決する道は、必ずあるし、行っているのは人間であり、政治です。政治制度が基礎とする価値観、重視すべき階層を転換すべきときにさしかかっています。大手企業の利益ではなく、中小零細企業の利益を重視する。中小零細企業が生き生きと活動できる社会制度を復活させる。富裕層、大手企業経営者の所得を増やすのではなく、大半の労働者の賃金を保証、引き上げることなどなどです。そのためには最低賃金の引き上げ、派遣労働の削減、廃止、正規雇用の拡大などがどうしても必要です。私企業の自由に任せてはそのような制度、社会はきません。だからこそ、政治がそのような経済制度、法制度の立案、整備を行う必要性が出ているのだと思います。原子力発電エネルギーから再生可能エネルギーへの転換も同じです。