アメリカ大統領選挙、共和党候補の候補者選びが世界各国に注目されることもなかったでしょう。今回の選挙戦と候補者の発言は、アメリカ社会の病巣の深さを正確に反映した結果であると言えます。1%の富裕層が、99%の国民を支配し、大半の富を所有する。その社会構造のゆがみが許容範囲を超えて、暴発する寸前まで到達していることを示しています。EU、韓国などが戸惑うのはよく理解できます。
しかし、アメリカの財政と、経済構造の疲弊は簡単に解決できるはずはありません。また、軍事力を誇示しながら、政治経済でアメリカ優先、アメリカ大手金融機関、多国籍企業の利益追求が困難となっていることも示しています。この姿こそが本来のあるべき姿に近いものであり、アメリカによる世界の一国支配こそが非現実的、幻想であったことを認識すべきです。
軍事力で政治、経済、文化を支配し、他国を従わせるような軍事同盟、国と国の関係は改善させなければなりませんし、そのような関係を止め、平等互恵を原則とし話し合いによる紛争の解決と平和を実現しなければなりません。
<朝鮮日報社説>トランプ発言が韓米同盟に及ぼす影響を注視せよ
米大統領選の共和党指名争いでトップを走る実業家トランプ氏が、先週末の遊説の際「北朝鮮が日本と戦争するのはむごたらしいことだが、やるのであれば彼らがやるべきことだ」と発言した。さらに「幸運を祈る。しっかり楽しめ」とも述べた。トランプ氏は在韓米軍撤収の可能性についても改めて言及した。トランプ氏は「北を封じるために2万8000人の米軍が休戦ライン付近に配備されている」「それによって米国が得るものは何か。米国は決して愚かな国ではないことを示すべき時だ」などと訴えた。
トランプ氏は選挙の序盤から「韓国は安全保障にただ乗りしている」などと主張してきたが、韓国政府が在韓米軍に毎年9000億ウォン(約870億円)の費用を負担している事実を指摘すると、これを「はした金」と一蹴し、在韓米軍の撤収に繰り返し言及している。先日は「韓国と日本が『自分たちは安全ではない』と考え、自ら核武装を望む時が来るだろう」「日本が核兵器を保有することは米国にとってそれほど悪いことではない」などとも発言した。
トランプ氏の言葉通りになれば、北大西洋条約機構(NATO)や核拡散防止条約(NPT)による国際秩序はいずれも崩壊し、韓米、米日同盟はいずれも終焉(しゅうえん)を迎える。そうなればおそらく10-20年内にイスラム過激派が核兵器を保有し、東北アジアは一触即発の火薬庫になるだろう。トランプ氏の言葉が実現の可能性がない単なる虚言であることは明らかで、反論する価値さえない。彼は国際社会における安全保障問題について真剣に学んだこともなく、後に公表された安全保障政策のブレーンの顔触れも、米国メディアから「がらくた」などと評されている。
しかし今後共和党執行部がトランプ氏を押さえ込むことができない場合、この異端児が共和党の正式候補となるのは時間の問題で、それだけ米国政治の病は深刻だ。もちろん現在の情勢から考えると、トランプ氏は共和党候補にはなれても大統領に当選する可能性は低い。しかし大統領候補に選出されれば、今年はずっと米国全土を回りながら、外交や安全保障、世界平和について軽々しく米国人のポピュリズムをあおり続けるだろう。トランプ氏が今後米国メディアをどこまで混乱させ、これが韓米同盟にどのような影響を及ぼすか。われわれはしっかりと見極めておかねばならない。 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版