民主主義が機能せずに、危機に瀕している政治状況は韓国だけではありません。日本の安倍、自民党の憲法違反と独裁政治、アメリカにおける大統領選挙、候補の主張などはそのひどさを物語っているように感じます。
封建主義時代を経て、憲法制定において、基本的人権擁護、国民主権、三権分立などを基本的理念として、民主主義国家が主流となりました。しかし、資本の集中が巨大になるにつれて、巨大金融資本、巨大多国籍企業による市場至上主義、利益至上主義が極端になり、貧富の格差拡大と治安の悪化、地球環境の破壊は、強要できない範囲に拡大しました。
民主主義が安倍、自民党極右による破壊と危機に瀕しているとしても、その理念の価値は厳然として存在しているものと感じます。民意を反映した政治、政権を作り出す努力が国民自身に求められているのだと思います。今回の韓国における国政選挙もそのことを示しているのだと思います。
[中央日報]朴槿恵政治と国民選挙革命
第20代総選挙は韓国で執権保守党が初めて2つの点を同時に達成したという点で革命的だ。過半議席の崩壊と第1党地位の喪失だ。民主化以降、韓国で圧倒的な地域利点を持つ保守派政党でなく、改革派政党が正常な選挙で第1党になったのは史上初めてとなる。2004年の総選挙で改革派政党が第1党になったのは大統領弾劾訴追という非正常的な事態のためだったら、今回は正常な選挙だったという点で大統領と政府に対する事実上の政治的弾劾に近かった。
与党は過半を大きく割り、民主化以降、執権保守党の最少議席となった。今回の保守派執権党の議席は1988年の総選挙の4党体制下の民主正義党(125議席)よりも少ない。122議席は弾劾訴追時点の保守政党の121議席とほぼ同じだ。すなわち正常の選挙では歴代最少だ。どうしてこのような選挙結果になったのだろうか。要諦は朴槿恵(パク・クネ)大統領政権の業績と政治方式にある。
1つ目は無能だ。2016年の我々の生活の主要指標は統計調査以降、「歴代」最悪・最低だ。2015年の家計負債は歴代最も多い。国内総生産(GDP)比でも歴代最高だ。家計負債増加率も歴代最も高い。今年1月の結婚件数は歴代最少だ。出産件数も同じだ。2月の青年失業率も歴代最も高い。
2つ目は一貫した責任転嫁だ。すなわち、責任倫理の不在だ。大統領は国政の最高責任者として憲法が与えた最終責任を回避してきた。初期の国家情報院の大統領選挙介入問題から深刻な家計経済および国家経済にいたるまで、大統領の中心処理方式は責任回避と国会、野党への責任転嫁だった。一方、国民は国家現実が大統領、政府・与党のためだと報復投票をした。
3つ目は過度な議会介入だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の国会に対する過度な介入は事実上、三権分立の破壊であり、憲法違反行為だった。さらに議員総会で選出された院内代表が強制的に追い出される独裁時代の現象も民主化以降に初めて見られた。このため議会はまひ、立法膠着、政争を繰り返すことになった。国会の政争が深刻になった理由は憲法が保障する自律性の不在のためだった。
さらに大統領と政府・与党は野党の湖南(ホナム、全羅道)離脱と首都圏分裂という環境で選挙を行った。選挙構図に関する限り、過半を超えて改憲ラインにも意欲を持てるほどだった。そのような条件で最悪の敗北を露呈、逆説的に大統領の失政と野党の分裂が重なり、慢性的な地域主義の著しい緩和につながった。大統領は父の時代に生じた湖南排除という不道徳な政治的地域主義を、自分の失政を通じて嶺南(ヨンナム、慶尚道)民主勢力を復活させることで、かなり解消した格好だ。
特に首都圏での圧勝と嶺南改革勢力の幅広い復元を通じて湖南の外の改革派政党が湖南の離脱にもかかわらず第1党になったという点は、今後の地域主義および民主主義の行方に示唆する点が多い。湖南の道徳的優越感と選択権は今後、湖南の外の改革勢力と現実的な拮抗関係に入るだろう。特に光州(クァンジュ)民主化運動で強く連帯してきた湖南の外の民主改革勢力を党内の競争過程で覇権勢力だと攻撃して決別する代わりに、中道勢力と連帯して湖南政治を復元したのは、民主派政治連合の一つの分岐点になるとみられる。湖南の外の民主派が湖南勢力の支持なくむしろ彼らと葛藤しながらも第1党になる拡張性を見せることで、87年の金大中(キム・デジュン)-金泳三(キム・ヨンサム)一本化論争以来続いてきた改革性・進歩性と拡張性・当選可能性の対立軸は混在する可能性があるからだ。
ギリシャ七賢人のビアスは「支配者の地位に立てば人柄が表れる」という。一人が指導者を裏切ればその人は背信者だが、多数が裏切り続ければ指導者が背信者となる。大統領は自分側の多数が在任中にそばを離れたり野党に移ったりし、自分と対立するというこれまでになかった経験をしている。今回の選挙は背信の政治で報復された人たちが国民によって再起するという逆報復の過程だった。
より大きな背反は近づく自己否定だ。国会先進化法と仕事をしない国会を恨んだ政府と大統領として、過半を超えた巨大野党が国家情報院の大統領選挙介入調査、セウォル号事態真相究明、国史教科書国定化中断と検定還元、テロ防止法改正を推進すれば、その時は与党がフィリバスターをしたり、野党に国会先進化法を守れと要求するのだろうか。説得と妥協が必須だった理由だ。
現行の憲法は任期後半の大統領を植物大統領にする。任期前半の帝王的大統領時期にも残せなかった業績を植物大統領の時期に、特に巨大野党を相手に達成するというのは難しいだろう。したがって大統領の危機は野党には機会だ。しかし巨大野党が保守派政党とは違う改革能力を見せることができなければ、2004年の総選挙と2007年の大統領選挙のねじれで見られたように、国民は彼らに与えた機会をさらに残忍に剥奪するかもしれない。
パク・ミョンリム延世大教授・政治学